中国,起業
(写真=PIXTA)

中国経済は世界経済の牽引力となり30年以上の高度成長を遂げていま成長鈍化の転換期を迎えている。中国経済を活性化させるために、「伝統産業のバージョンアップ」とともに「ダブルエンジン」の一つとされている「起業・イノベーションの促進」については、相次いで具現策が打ち出されている。

特に李克強首相が提唱された「大衆創業・万衆創新」政策が追い風になり、「インターネットプラス」の国家戦略も掲げられ、インターネットと既存産業との融合で新しいビジネスを創出するよう、若者の間で活発に議論され、次々とそのための事業が創られている。このような背景のなかで、中国のシリコンバレーと呼ばれている北京中関村の創業聖地である「中関村創業大街」の現状はどのようなものだろうか。

中関村創業大街とは

中関村創業大街は、英語で「Z-Inno Way」と表記される。北京大学、清華大学、中国科学院の近くにあり、中関村エリア全長約200メートルの一本の街である。

この街の位置付けとしては、「科学技術創業の発祥地」であり、「創業投資融資」と「創業展示」の2大目的が挙げられ、「創業交流」、「創業接待室」、「創業メディア」、「創業育成」、「インキュベーション」の5大機能が提供される。街には投資家・起業家向けの喫茶店、本屋、オフィス、公共機関の創業支援事務所などが立ち並んでいて、「3W珈琲」、「車庫珈琲」、「Binggo珈琲」、「飛馬旅」、「創業家」など中国トップクラスのベンチャーキャピタルやインキュベーターなど45社以上入居している。

いま現在の風景は

中関村創業大街は、あちこち創業の雰囲気が満ちあふれ、創業の聖地とも呼ばれている。喫茶店などの壁には成功した起業家の写真、会社のロゴ、創業優遇政策、イベント予定などの情報が展示され、席のスペースでは20代30代の若者がパソコンを操作したりグループでしゃべったりする風景がよく目に入る。

イベントスペースでは、様々なプレゼン会、勉強会、検討会が開催される模様。コーヒー1杯買えば、一日中席もWIFIも利用できるようになる。この街では、他の人に声をかけて聞いたり、興味のあるテーマについて検討会を主催したり、起業メンバーの募集情報を出したり、ベンチャー・キャピタルに起業プランを相談したりすることは気軽にできるので、草創期の起業家にとってまさに「起業の天国」と言っても過言ではない。

2014年6月に誕生後、平均1日で1.6社の企業が生まれ、1日1社が融資を獲得し、平均500万人民元の融資額になると言われている。

中国国内の創業チームだけではなく、海外から100以上の創業チームも入居している。2015年7月に韓国のSounDUXチームは、中国語も分からないままこの街に入居した。アメリカ、フランス、韓国などの起業支援機構との協力も盛んに行われている。中関村創業大街のモデル効果は中国他の都市にも影響を与えている。天津、青島、成都は中関村創業大街と連携し、同じ機能の創業大街も企画中と報道されている。

街の人の感想は

実際に街のサービスを利用する際、どういう感想を持たれているのだろうか。

「3W珈琲」の創業者許氏は、「創業者のためのサービスを提供する創業者」であり、「3W珈琲」という創業スペースサービスのほか、「3W基金」というインキュベーションサービス、「Logou」というインターネット業界に特化した人材マッチングサービスも提供している。

「私は、北京大学の院生時代から創業の経験を積み重ねた結果、この3W集団を創り上げた。時代は英雄を作るのだ。これから創業者がますます増えるだろう。創業者のためにより良いサービスを提供するのは、我々のミッションだから、そのために全力を作りたい」と今後の抱負を語る。

いまほぼ毎日この街で仕事をしている創業者の張氏は、海外の仕事経験を生かして音声関連のサービスを展開している。毎日この街に入る理由を尋ねると、「この街は、やっぱり雰囲気だね。これは何よりだ。この街に入ると、ワクワクするね。リアルタイムの情報量もすごい。昼食の時、テーブルの向こうに座る人は、もしかして今後のパートナーになるかもしれない。みんな、お互い様だと考えているから、気軽に声をかけていい」と答えてくれる。

入居している投資家の李氏は、IT系業務に携わってきていま40歳を超えている。李氏は、週に3日以上この街を「徘徊」している。街のいろんなイベント—に参加したりすることで興味を持っている分野なら、気になる人と即時話し合う。

「この街にいる時間は、家より圧倒的に多い。ここに足を運んでくる若者の中には、アイディアもチームも持っていて、資金がボトルネックになっている創業者がよくいるね。早いタイミングでの資本参加は、成功すればそのリターンもすごいよ。この街では、色んなことが自分の目で確認できる。特に創業者はよくここに来るから、最初は創業者の理念、性格、能力がよく分からないが、時間をかけて創業者のことを見極めることができる。そうなったら投資するかしないかの判断はやりやすい」と話している。(ZUU online 編集部)

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