REIT,不動産
(写真=Thinkstock/Getty Images)

日銀は2016年2月16日から民間銀行が保有する当座預金にマイナス金利を適用する政策を発動した。所要準備額等を超過する預金残高にマイナス金利を付与することにより、民間銀行が必要以上に資金を溜め込むことなく企業融資等を積極化させることを促すものだ。こうした政策により不動産市場、さらにはREIT市場への流入資金が加速することが大いに考えられる。

金利と不動産市場の関係

金利と不動産市場は密接な関係にある。一般的に不動産は高額なため外部資金を調達して買うことが多い。個人であればマイホームを自己資金だけで購入する人は少数派で多くの人は住宅ローンを組む。法人でも大型物件に投資するときは、銀行借入、社債発行、増資などを行う場合が一般的だ。このため金利水準が高ければ不動産市場の参入者が減り投資対象となり得る物件の範囲も狭まる。逆に金利が低くなれば市場参加者が増え投資対象の範囲も広まる。

発展途上国の場合、一般的に経済成長率が高く、高金利(インフレ期)局面では不動産需要が強く価格も大幅に上昇する。一方、先進国は経済成長率が低く政策的に投資を促進する必要があるため、金利が低くなるほど不動産市場に流入する資金が増えることが想定される。

従って、足下の経済状況を踏まえれば、不動産業界にとってマイナス金利への突入は歓迎すべきことだろう。

マイナス金利政策のREIT市場への影響

日銀のマイナス金利政策の発動により市場金利も銀行間資金取引の無担保コールオーバーナイト物から10年利付国債までマイナス金利が定着している。

みずほ銀行の統合報告書をみると、既に2015年3月期の段階で国内業務部門の総資金利鞘(資金運用利回-資金調達原価率)はマイナス0.07%になっている。国際業務部門の総資金利鞘が0.43%だったため、合計では0.08%とかろうじて逆ざやを回避した状況だ。マイナス金利状態が長期化すれば、2017年3月期には全体の総資金利ざやが逆ざやに転落する恐れがある。

総資金利ざやの水準自体は銀行ごとに異なるものの、日銀の金融緩和政策が積極化される過程で利ざやの縮小が進んでいることは全ての銀行に共通している。

2015年3月期のみずほ銀行の経常収益に占める資金運用収益の割合は56.2%だ。これに対し秋田銀行は73.2%、秋田信用金庫は87.2%だ。みずほ銀行を始めとする大手銀行は、グループ他社も含め国際業務、証券業務、信託業務、為替取引、M&A仲介など様々な収益源を有している。このためマイナス金利の影響はそれほど深刻ではないかもしれないが、地元企業への融資と債券投資が主な収益源となる地域金融機関に与える打撃はかなり大きいはずだ。

今後一段と利ざやが薄くなる中で、こうした地域金融機関などが国債や系統金融機関(信金中金、全信組連、農林中金、労金連)預金の運用額を減らし、代わりにREIT投資額を積み増すことが十分に考えられる。

賃貸用不動産を収益源とするREITの収支が大きく変動する可能性は低いため、投資家は毎期安定的に分配金を得ることを見込める。3月21日時点の分配金利回りは、東証上場REIT全銘柄の中で最低2.33%、最高5.45%、平均3.22%だった。REIT市場の創設以来、全銘柄合計の予想分配金利回が国債利回(10年)を下回ったことは一度もなく、安定収益を確保できる商品と言えるだろう。

銀行の本業である住宅ローンは一層の金利低下により増加するはずだ。そうした動きが鮮明になれば、銀行の不動産・建設業者向け融資やREIT投資がさらに増えると見込まれる。

マイナス金利になったからと言って、銀行が簡単に設備投資や研究開発資金などの前向きな融資案件を発掘できるものではない。こうした実体経済の成長につながる資金需要が顕在化するまでには相応の時間を要するため、短期的には不動産市場や株式、商品、デリバティブなどの金融資本市場への資金流入が進むだろう。

マクロ情勢の変化には注意が必要

このように日銀のマイナス金利政策は、REIT市場への資金流入を促進する可能性が高いと考えられる。銀行は投資証券の保有だけでなく投資法人債の購入や短期・長期資金融資など様々な方法によりREITへ資金供給できるため、一気にREIT市場へ資金が流入する可能性もある。

もっとも世界的な株価低迷が続く中で、実体経済も日本、米国、欧州の停滞が続き中国の減速傾向も鮮明化するなどマクロ経済面の不安要素もみられる。米国の大統領選挙、北朝鮮の核開発、イスラム国(ISIL)等によるテロ活動などの政治情勢が世界経済に大きな影を落とすリスクもある。その場合、REIT市場からも資金が流出する恐れもある。

一方で2020年の東京オリンピックに向け関連施設の建設や訪日観光客の誘致強化とそれに伴う宿泊・観光施設の整備が着実に進められるなど前向きな材料もある。こうした様々な要素を総合的に勘案し投資判断を固めることが重要だ。(ZUU online 編集部)

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