モノやサービスを「共有」する動きが勢いを増しつつある。自動車を所有せずに乗りたい時にだけ誰かの自動車を活用する「ライドシェア」や、いわゆる「民泊」のマッチングをするためのプラットフォームの活用が拡大するなどの「シェアリングエコノミー」の取り組みだ。

「共有」をキーワードに拡大するさまざまなプラットフォームやアプリも登場してきており、もちろん新興国に浸透していく動きも見せてきている。それに伴い、シェアリングエコノミーを支えるアプリを提供するビジネスもグローバル化しており、さまざまな手法を駆使する動きだ。

世界で広がる「共有」のプラットフォーム

そもそもシェアリングエコノミーとは、何なのだろうか。端的に言えば、個人や組織が現物資産を共有して、あまり使用されていない活用度の低い資産から収入を得られる仕組みや、それらで構築されるビジネスの生態系を指している。

たとえば、自動車の所有者がその車を使わない時に他の誰かに貸し出すのが「ウーバー(Uber)」で、マンションの所有者が不在時にその部屋を旅行者に貸し出す、いわゆる「民泊」の共有プラットフォームが「エアビーアンドビー(Airbnb)」というわけだ。

PwCの調査によると、エアビーアンドビーの宿泊客数は、一晩平均42万5000人で、2014年のヒルトンの世界全体の宿泊客数を22%近く上回るという。2015年2月現在の事業価値は412億ドルで、米国の主要航空会社の時価総額を上回る規模の評価を獲得しているのだ。

さらに、シェアリングエコノミー企業は、既存業界のビジネスモデルや収益構造を根底から覆す「ゲームチェンジャー」としての役割を担っており、投資家層の間でも急激に関心が高まっている。

「雨後のタケノコ」のように生まれる共有アプリ

シェアリングエコノミーのコンセプトそのものや、同プラットフォームに着目したアプリは国内、海外を問わずに、続々と生まれている様子だ。しかも、共有を図ろうとする中身は、わかりやすい自動車や、使っていないマンションなどの空き部屋には限られない。

その一つが「人手」のシェアで、その一つが「エニタイムズ(ANYTIMES)」だ。同プラットフォームでは、日常の家事、旅行の間のペットの世話、家具の組み立て、語学レッスンなど「手伝って欲しいこと」「得意なこと」を個人同士が気軽に提供し合える。アプリを通じて、人手の需要と供給のマッチングを図っているともいえるだろう。

エニタイムズは当初、「生活密着型クラウドソーシングサービス」「生活密着型シェアリングエコノミーサービス」と銘打ってサービスを推進してきたが、現在は「サービス ECのマーケットプレイス」という形で取り組みを進めている。

さらに、エニタイムズに加えて、シェアリングエコノミーを推進する組織が2015年末に、シェアリングエコノミー協会を設立。spice life、クラウドリアルティ、インベスターズクラウド <1435>、ウーバージャパン、ランサーズ、DogHuggy、サイバーエージェント <4751> 、ココナラ、クラウドワークス <3900> 、スペースマーケット <9622> 、ガイアックス <3775> が会員に名を連ねるなど、まさに「雨後のタケノコ」のごとくさまざまなシェアリングエコノミー企業が同協会の会員となって、国内でもシェアリングエコノミーの拡大を図っている。

ウーバーの国境を超える「シェア」のビジネス基盤

「シェアリングエコノミー」を支えるプラットフォームの代表例を見てみよう。ウーバーであれば、あくまでもユーザーと輸送業者間の仲介業者の役割を果たしており、自身では輸送サービスそのものを提供しない。ただし、ユーザーが利用したい輸送サービスに情報や、具体的な手段を、アプリを使って、ウーバーが提供していると言えるだろう。

同社の売上はすでに、2015年で15億ドルから、20億ドルに上るとみられており、サービス基盤の拡充にも余念がない。例えば、マイクロソフトやデルのデータセンターを買収して、米国内の情報インフラを強化する一方で、同時に海外展開も積極的に推進している。アプリケーションが国境を越えて利用されるケースが日常的になっている。

さらに、ウーバーはビジネス基盤を複数の国に着々と展開。優位を築こうと取り組みを進めてきている。その一環として、同社は2013年5月に、オランダに中間持株会社のウーバーインターナショナル社を設立して、米国本社から米国外の知的財産権の使用権を譲渡し、今後の知財開発コストをウーバーとウーバーインターナショナルで分担する構造を作り出している。

加えて、中間持株会社の下にサービス運営会社のウーバーB.V.を設立。乗客が各国で払う乗車料金を、ウーバーB.V.がいったん集約し、1%を差益として留保し、残りをウーバーインターナショナルにロイヤリティーとして支払う構造になった。その結果、ロイヤリティー分はオランダ・米国の双方で、税制面のメリットを享受しているのだ。

シェアリングエコノミーからの税金は誰のものか?

他方で、エアビーアンドビーも国境を変える情報基盤を構築。同社は、自社データセンターではなく、アマゾンのクラウドサービスである「AWS」を利用。世界中で宿泊施設のマッチングサービスを提供しているだけでなく、ビッグデータを分析するシステムも、多国籍なものになっている。

また、米国で起業された後、さまざまな国の領域にまたがるクラウドの情報基盤上で、システムを運用するようになった。宿泊先を提供するホストと宿泊するゲストとの金銭のやり取りは、P2Pのトランザクションが原則で、所得税、付加価値税の扱いは、国によってまちまちである。

ウーバーもエアビーアンドビーも、米国で創設された企業だが、アプリケーションサービスを提供する場所についても、情報基盤についても国境の壁は存在しない。その時に問題となるのが、両社のように国の領域に関係なくサービスを提供する際に、どの国の政府が課税するのかということだ。

他方で、単に企業の国籍に基づいて、その国に税金を支払うというモデルを、シェアリングエコノミー企業に当てはめようとしても無理があるのも事実。制度的仕組みも何らかの改革や新たな仕組みが必要だと言えるのかもしれない。(ZUU online 編集部)

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