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Written by 下田屋 毅 7記事

BOPビジネスについて考える

企業は新興国とどのようにビジネスすべきか

新興国,環境問題,人権問題
(写真=Thinkstock/Getty Images)

企業は、新興国や発展途上国において、サプライチェーンを含めて生産活動を行い、また自社のサービスや製品を販売するなど、幅広く活動している。今日の状況下で企業はこのような国々においてどのような配慮が必要となるのだろうか?

約40億人の巨大マーケット

近年、企業が自社に貢献するとともに、新興国・発展途上国に対してもプラスの影響を及ぼすビジネスとして、世界人口の72%(約40億人)を占めるBOPと呼ばれる層を5兆ドル規模の巨大マーケットと捉え、社会課題の解決を行う取り組みが2000年代から活発化している。

このBOP(Base of Pyramid)とは、新興国を含む発展途上国において、1日の収入が2ドル未満という低所得者層を対象としたもので、これらの国々のコミュニティの特定の社会課題(水・生活必需品・サービスの提供、貧困削減等)の解決を行うことを目指すビジネスのことをBOPビジネス/インクルーシブ・ビジネスという。

たとえば、英国とオランダに本拠を置く生活用品・食品メーカーであるユニリーバは、サステナビリティを企業の中核に置き利益をあげるビジネスを実践している企業で、BOP/インクルーシブ・ビジネスについて積極的である。ユニリーバのWebサイトによると、これらBOPの市場でのビジネスの売上は全体の58%を占めている。

ユニリーバの商品ブランドの中に「ライフボーイ」という石鹸があり、現在はアフリカやインドの国々を中心に販売されている。途上国では手洗いをしないために下痢や肺炎などの病気になり、毎年200万人の子供たちが亡くなっていることが背景としてあり、それらの病気の発生率を下げるため、子供達に「ライフボーイ」石鹸での手洗いの励行を小学校に働きかけた。これによりインドでは、下痢の発生率を1年間で36%から5%へ減らすことができたという。また、さらに最近では子供達が石鹸を使用する量が少なく殺菌が十分でない場合があり、石鹸を使用すると手が緑色になるように改良し、子供達が遊び心を持ちながら手を緑にして洗うことにより、しっかりと殺菌できるようにしている。

またアフリカやインドでは、女性が水を運び洗濯をすることに非常に時間を取られていることがあった。そこでユニリーバは、国際NGOオックスファムと協働し、「サンライト」という洗剤をアフリカやインドで働く女性向けに販売した。ナイジェリアでは、「サンライト」を使用することにより、油汚れが早く落ち、水の使用量を最大 20%減らすことができたという。またこれにより女性は水を運ぶために長い距離を歩かなくてすむようになったという。

消費拡大がもたらす環境破壊と人権侵害

このようなBOP層への新たなビジネスを実施する一方、ここでやはり忘れてはならないのは、これら国々に与えるマイナスの影響の部分である。近年、これら国々での環境影響や人権侵害など多く発生している状況があり報告がなされている。

BOP/インクルーシブ・ビジネスの中では、BOP層が、現金がある時に1回使い切りの小分けパックを購入するという傾向に目をつけ、多く販売してきたが、今度はそれら小分けパックの使用後に廃棄物として環境に悪影響を与えているということがあり、これら国々でビジネスを行う上では、環境影響を含めたバリューチェーン全体で考える必要があることが指摘されている。

また、企業のサプライチェーン上での影響としては、企業による熱帯雨林の違法伐採による森林破壊、生態系、そして気候変動への影響があり、先住民族への人権侵害がある。現地企業は政府から伐採のライセンスを取得し、同意なしに勝手に先住民族の土地で森林を切り崩し、先住民族は、強制立退きや避難を余儀なくさせられている状況がある。これらは、我々が普段使用しているコピー用紙や、食品や生活用品に含まれるパーム油の需要に伴い引き起こされたものである。

欧米企業が、新興国・発展途上国での安価な労働力を探し、欧米企業のみ恩恵を被り、労働者の犠牲により成立してきたビジネスの悪影響の事例として、2014年4月バングラデシュ首都ダッカ近郊で発生した「ラナプラザ・ビル倒壊事故」がある。事故発生当時、欧米のアパレルメーカーから発注を受けたサプライヤーの工場が多数入っており、納期を確保する為に労働者は半ば強制的に働かされ、倒壊事故に巻き込まれ1134人が犠牲となった。

配慮の行き届いたビジネス展開が求められる

このように企業は、新興国・発展途上国に関連するビジネスを行う上で、ビジネス上のメリットだけでなく、それらの国々の人々へ与えるマイナスの影響について考慮することが求められる。最近では、特に企業の人権侵害を食い止めようとする動きとして、国際的な基準の制定や国連の条約による規制、各国での法規制の動きも出てきている。新興国、発展途上国に関連したビジネスを実施する上で重要なのは、コミュニティの特定の社会課題を解決するというプラスの影響を及ぼす部分だけでなく、環境や人権などマイナスの影響への配慮も欠かせない。

下田屋 毅(しもたや たけし) Sustainavision Ltd. 代表取締役
英国在住CSRコンサルタント。日本と欧州のサステナビリティ/CSRの懸け橋となるべくSustainavision Ltd.を2010年英国に設立。ロンドンに拠点を置き、サステナビリティ/CSRに関するコンサルティング、リサーチ、研修を行う。ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当:CSR)

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