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17日にドバイで予定されている産油国会合で原油の増産凍結が合意されるとの見通しから、原油価格の上昇が続いている。11日に約3週間ぶりに1バレル=40ドルの節目を回復すると、翌12日には一時42ドル台まで続伸し、年初来高値を更新した。2月11日には26ドル台まで下落していたが、2月16日にサウジアラビアとロシアが増産凍結で合意したとの報道をきっかけに、ここまではおおむね順調に持ち直してきたといえる。しかし、ウォール街では、さらなる上値追いに慎重な見方が広がっている。

増産凍結では供給過剰は解消しない

上昇基調を維持するのは難しいと考える理由として、ウォール街の市場関係者からは「増産凍結では供給過剰が解消しない」、「シェールオイルの採算ラインを超えてきた」、「米追加利上げの可能性」の3つの理由が指摘されている。まず、需給バランスをみると、現状は既に「供給過剰」な状態にあり、増産を凍結したところで供給は過剰なままとなる。需給が均衡するためには需要が供給に追いつく必要があり、それにはまだ時間がかかる。また、イランは経済制裁前の水準に戻るまでは増産凍結には参加しないとしており、増産を維持する構えだ。増産凍結との報道が安値を拾うきっかけにはなったことは確かだが、既に材料としては織り込まれた観があり、17日に増産凍結で合意したとしても、それを材料としてさらなる上値を追うとは考えづらい。

シェールオイルの採算ラインを意識、リグ数増加を警戒へ

40ドルを超えるとシェールオイルの採算ラインが意識されてくる。2014年に原油価格がまだ100ドルを超えていた当時には採算ラインは80ドル程度と言われていたが、現在では40ドル程度にまで低下している。原油価格は昨年、3月の40ドル台前半から6月には60ドル台を回復したが、当時はシェールオイルの採算ラインが60ドル程度とされていたことから、この水準で頭打ちとなった。昨年の経緯を振り返ると、今年は40ドル台前半が天井となる可能性が高いといえるだろう。

採算ラインは価格に遅行する傾向にあり、採算ラインが必ずしも支持線や抵抗線を意味するわけではない。シェール革命はIT革命にもなぞられているように、急速な技術革新を伴っている。結果論ではあるが、価格競争を挑んだとされるサウジアラビアの誤算は技術進歩のスピードの速さにあったといえる。採算ラインはまだ下がるとみられており、中長期的な底入れの判断を難しくしている。

採算ラインと同様に価格のあとを追っているのがリグの稼動数だ。リグとは石油を生産するための掘削設備のことを指す。リグ稼動数は2014年10月に1609基でピークアウトし、4月8日現在は354基しか稼動していない。約8割が稼動を停止したが、この間、米原油の生産量はピーク時に比べわずか6%の減少にとどまっている。従って、リグの稼動数が減っても生産量の減少は限定的といえる。技術進歩による生産性の上昇でリグ当たりの生産量が増えているからだ。

3月以降は原油価格の上昇に伴ってリグ稼動数の減少スピードも鈍化しており、生産が減少するとしても多くは期待できないだろう。米原油生産量は昨年9月に日量910万バレルまで低下したが、その後はほぼ横ばいで推移しており、4月1日現在は日量901万バレルとなっている。結局のところ、この半年間で米原油生産量は日量10万バレルしか減っていない。

原油価格は昨年3月から6月にかけて40%ほど上昇し、当時の採算ラインとされた60ドルに達した。これを受けてリグ稼動数も7月から一時増加に転じている。昨年の例からすると、採算ラインに到達してから、約1カ月後にリグの稼動数が増えている。今週、原油価格は現在の採算ラインとみられる40ドル台に再浮上したことから、この水準を維持した場合、5月中旬からリグ稼動数が増える可能性があり、今後の数字に注目したい。

利上げの先送りにも限界が近づいている

ここ数年の原油安にはドル高の影響もある。FRB(米連邦準備理事会)が金融の正常化(利上げ)を目指して、2014年10月にQE3(量的緩和第3弾)を終了した後、ドルは急速に上昇し始めた。原油相場の下落もほぼ同時期から始まっているが、これは偶然ではない。QE3の終了により、金融緩和で原油市場に流入していた投機的な資金が流出に転じたことも下落に拍車をかけた。

原油安の影響で企業業績が予想外に下振れたこともあり、FRBは3月の経済見通しで2016年中の利上げ回数をそれまでの4回から2回へと引き下げた。しかし、利上げを見送っている間にインフレ率がジワジワと上昇しており、いつまでも利上げを見送り続けることは困難になりつつある。2月の米消費者物価指数は、食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比2.3%上昇と、目標となる2.0%を3カ月連続で上回った。医療費や家賃の上昇が家計を圧迫しており、個人消費の鈍化が懸念されている。このまま、利上げをせずに物価の伸びを放置した場合、個人消費が失速しかねない。追加利上げの先送りも限界に近づいている模様で、4月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では据え置きが有力視されているものの、6月には追加利上げが実施される可能性がある。追加利上げの実施は原油市場にとって弱材料に作用しそうだ。

米国は「業績リセッション」を継続、原油安が重し

最後に、原油価格の上昇が40ドル近辺で止まってしまうと何が起こるのかを考えてみよう。11日から1〜3月期の米企業決算がスタートしたが、ファクトセットによると、同期のS&P500採用企業の業績は前年同期比9.1%の減益が予想されている。昨年末時点は0.7%の増益が予想されていたが、大きく下振れた主因はもちろんエネルギーセクターにある。同セクターは、昨年末時点で既に43.8%の大幅な減益が見込まれていたが、現在では103.8%まで減益予想が拡大している。

1〜3月期の米企業決算が減益に終わった場合、四半期ベースで4期連続となる。これは、前回のリセッション以来のことで、企業業績だけをみれば、米国は既にリセッション入りしている。原油価格が頭打ちとなり、低迷が長期化すると「業績リセッション」がさらに長引くことが懸念される。(在NYジャーナリスト スーザン・グリーン)

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