グローバルマネー
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2000年代以降は特に、ITやデジタルの浸透が著しい。インターネットの登場で通信の基盤が刷新されただけではなく、さまざまな分野にITが浸透し、産業技術も急速に発展していくことで、大きな変革が起こりつつあり、それは特定の領域に留まらない。

実際に、経済の核心的な要素の一つでもある「おカネ」についても、ITの活用促進により、その姿が大きく変わろうとしている。ただ、実際には、IT革命の洗礼を受け包括的な変革を経験したのは、マネーの世界の方が先だったというべきかもしれない。例えば、銀行振り込みがコンピューターで処理されるようになったのは1970年代に遡れるからだ。

ただ、現状はさらに変化しつつあり、電子マネーの決済金額は5兆円を超えるまで拡大するなど、資本主義のあり方を左右するマネーもITで大きくその姿を変えようとしている。その一端が「FinTech」だ。今回は、「資本主義の未来を読む」の締めくくりとして、マネーがITでどのように変わりつつあるのか、洞察しておこう。

FinTechで揺らぐ「マネーの世界」のパワーバランス

FinTechはもはやおなじみの、「ファイナンス」と「テクノロジー」を組み合わせて作った言葉だが今や金融セクターを脅かしかねない存在として注目を集めている。

特に、最近よく議論されるFinTechでは、「金融機関オンライン化」と異なり、個人向けローンやモバイルペイメントといった、従来の金融機関が担ってきた分野にも影響するとみられている。そのため、金融分野に大きな変化をもたらすのではないかと期待されているのだ。

具体例を挙げれば、個人や中小企業の個別のニーズに合わせた、カスタマイズド・サービスを作り出そうとする動きがまずある。従来の大手金融機関のような大組織ではなく、スタートアップのような小さな組織が推進力となっていることも社会からの注目を集める理由の一つだろう。

米国のコンサルティング会社マッキンゼーが昨年9月に発表したレポートでは今後10年間で、FinTechによって銀行の売り上げが40%、利益は60%減少すると予測されている。金融界にも、「ウーバライゼーション(Uberization)」の波が押し寄せており、経済全体の趨勢も左右しかねない金融の構造を変えてしまいかねないとみられている。

FinTechのAPI連携で新・経済秩序は生まれるか?

おカネの流れを変えてしまうかもしれないとみられるのが、「FinTech」の連携だ。最近では、API(Application Programming Interface)と呼ばれる、ITシステムやウェブサービス同士が連携する仕組みが、新しい仕組みの「FinTech」を作っていくのではないかとみられているのだ。

ちなみに、APIについて分かりやすく説明すれば、グルメ・旅行サイトがGoogle Map と連携して、お店の場所を表示させるといった仕組みのことだ。ウェブ上でのさまざまななサービスをお互いに接続する役割を果たす。

すでに多くの金融機関が取り組みを進めており、「API開放」に向けた動きを広げている。APIの「開放」とは自社のシステムに、外部からネットワークを介してアクセスし利用できるようにすることで、相互に接続したシステムの技術資産が連結された「APIエコノミー」が生じるとみる向きもある。小さな影響力とピンポイントでの機能しか提供しないFinTechも組み合わせることでより大きな価値を創造していくという未来像だ。

ITベンチャーが金融でも成長するのか、それとも銀行の支配が変わらないのか、その帰趨は今のところ未知数だが、金融業が大きな変革を強いられることだけは間違いない。API導入はユーザに多様なサービスを素早く提供するメリットをもたらす一方で、事業者には新たな競争を強いてもおり、FinTechの影響を受ける未来の姿はまだ定かではない。

新たな時代、市民・地域・国家・世界はどう変わる?

格差の拡大、マネー経済の肥大化、新規需要の枯渇化といった慢性的病弊によって大きな軋みの現れている現代資本主義。新たな経済社会パラダイムを生み出すのはIT中心の先端テクノロジーか。そんな「希望の灯」を求める旅の見取り図を吟味してきた。

限界費用ゼロの「スマート経済」は、たとえるなら、豊富なオイルマネーのおかげでゼロ負担・高福祉国家を達成しているカタールのような存在だろう。同国は自国民人口を上回る外国人の労働力に依存しているが、その役割はAIロボットがそっくり引き受ける形だ。
もちろん、そうしたユートピア的な現実へのパラダイムシフトが一夜にして生まれるはずはない。道のりは遠く、古い「時代」とのせめぎあいの中で、困難な「移行過程」を模索することは避けられないだろう。「スマート経済」自体が行き過ぎた管理社会の形成、AIの暴走といったデジタル・ディストピアに取って代わられる危険性もはらまずにはいない。にもかかわらず、経済の実体・金融両面で現在進行形の様々な変化から読み取れる大きな方向性はかなり明確だ。

第1に、シェアリグンエコノミーなどの登場による、経済行動の動機付けの変化だ。「資本や報酬」の最大化から、「価値や満足」の最大化へとシフトしてゆくこと。物質主義は廃れ、「所有よりアクセス」、「他者との親交や共感」に幸福を求める新しい価値観が社会の主流となる。

第2に、社会の組織原理の変化だ。国家政府や大資本・大規模企業などを頂点に戴くピラミッド的社会は次第にその影を薄める。代わりには、社会で主役となるのは、地域や文化を軸に個別化・個性化する市民、国境にとらわれることなく柔軟に連携し、協働する小規模企業やNPOが存在感をさらに増していくのではなかろうか。

第3に、国家の役割縮小と質的な変化だ。IoTで世界的に統合され、利潤や資産の最大化を促すモチベーションが存在しない「スマート経済」ではもはや、「市場の競争」も「政府の管理」も機能を低下させるからだ。経済システムを動かすのはもはや国家政府ではなく、地域共同体などすなわち「コモンズ」の仕事となる。

一方で、最新の技術革命が世界のほぼ全地域に浸透する時代が来るまでの間、「テクノロジー」だけで克服しきれないグローバル・イシュー(気候変動、地球人口の総数と地域分布、地域間経済格差といった地球規模の課題)に対応するための組織 が求められるともいえるかもしれない。(岡本流萬)

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