米アナリストが「エコノミック神風」と称した日銀によるマイナス金利の導入から3カ月。4月28日の金融政策決定会合後に開かれた記者会見が放送されるやいなや、追加緩和への予想が高まっていた海外株式市場はパニック状態となった。

「政策効果の見極め段階」であることが見送りの理由だが、海外メディアやアナリストの目には日銀が進むべき方向を見失ったと映っているようだ。日銀がマイナス金利を導入した当初から効果のほどに疑問を唱える声が多かっただけに、驚きと同時にある意味予想通りの展開と受け止められている印象が強い。

日銀の「新たなサプライズ」に戸惑う海外株式市場

追加緩和見送り決定後、日経225先物は17533.81円から16764.27円まで一気に急落し、最終的には16666.05円(3.6%減)で終了。追加緩和への期待の高さを反映する幕引きとなった。

一方マイナス金利導入以来、円高株安が着実に進行中で円は2%近く上昇している。米エコノミスト、フレイア・ビーミッシュ氏は「日銀の強引なマイナス金利政策導入は、国際市場の不安を不必要に煽り自国の通貨を押し上げたにすぎない」と痛烈に批判。予期せぬ小さな問題からマネー・マーケット・ファンド(MMF)の解約殺到といった深刻な問題まで、「様々な副作用を引き起こしかねない」との懸念を示している。

専門家の間では「既に副作用の兆しが十分に見えている」との意見もあり、今回の現状維持の決定について「新たな政策を打ち出さなかった日銀に驚きを隠せない」との反応がいたるところで見られる。

「G20のサポートなしでは政策の成功は困難」

予想外の攻めから反転。急激に守りの態勢に入ったかのような印象を与える日銀の動きを、「次なる過激な政策」の前兆ととらえる見方もでている。しかし概ね「強行手段をとるには、勝算があるとの確証を伴う必要がある」という意見で、日銀が期待から大きくはずれた現状に戸惑いながら、後戻りすることも先に進むこともできずに模索中であるという見方が強い。

記者会見で黒田東彦総裁は、観察期間を経て今後進むべき方向性を決定するとの見解を示したが、それと同時にいずれ追加緩和の必要性がでてくるとほのめかした。UBSは、日銀が「もう1度だけ追加緩和を行う」「増減を繰りしながら調節を行う」「まったく追加緩和を行わない」という3つの選択肢のいずれかに進むと予想。

2月27日に中国で開催されたG20財務相、中央銀行総裁会議に挑んだ黒田東彦総裁は、「他国からの理解を十分に得た」と確かな手ごたえを表明していたが、海外のアナリストは「G20のサポートなしでは日本のマイナス金利政策の成功は困難を極めるだろう」と、必ずしも同意していないようだ。

タイミングの悪いヤケっぱちの強行手段?

青天の霹靂であった日本のマイナス金利政策は、海外では導入開始直後から懐疑的に受け止められていた。ゼロ金利からの脱出に7年を要した米国、導入4年目にしても一向に成果の見えない欧州のマイナス金利などを例に挙げ、「日本も欧米の金利クラブに加入した」といった嘲笑的ともとれる見出しがメディアを飾っていた。

英国放送協会(BBC)は「日本は絶望の淵に立たされている」と、従来の経済政策では長引く低迷から抜け出せず、マイナス金利で復興を狙うというヤケっぱちな強硬手段にでたと報じ、同じ政策でありながらも欧州と日本の経済規模の差を指摘した。

「昨年12月に金利を本来あるべきの形状に引き戻した米国を追う余裕が、欧州や日本にはない」との指摘もあるが、日銀が政策を導入した時期が悪過ぎたとの意見も聞かれる。金利引き上げが思い通りの効果を見せていない米国、銀行の信用リスクが急騰している欧州など、社会の「金利政策」に対する不安が裏目にでた結果ということだ。

しかしシティグループなどでアジア投資の経験を積んだリチャード・ハリス氏(現ポート・シェルター・インベストメント・マネージメントCEO)のように、「国債で首が回らなくなった日本にとって、他の手段は考えられない」と、支持とも諦めともとれる声もあがっている。

いずれにせよ「各中央銀行が降参状態にあるように見える」現状を、日銀を始め各国の中央銀行がどのように切り抜けるのかという一点を世界中が息を詰めて見守りながら、新たな金融危機の足音に耳をすませているのは間違いない。(ZUU online 編集部)

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