LINE,上場,IPO
(画像=Webサイトより)

運営するスマートフォン用ゲーム「LINE POP」(ライン・ポップ)の有料アイテム「宝箱の鍵」が資金決済法で規制されるゲーム上の「通貨」に当たる可能性があるなどとして、関東財務局の立ち入り検査を受けたと報道されたLINE。

同社側は立入り検査は定期的なものであり、関東財務局と協議中などとしているが、今回の件でLINEのゲーム課金による収益の大きさが明らかになった。

社会的インフラからプラットフォームへ

いまやビジネスでも利用されることのあるLINE。まずはその規模を確認しておこう。

LINEのユーザー数は2016年3月末で、グローバル約2億1840万人(前年同期比7%増)、主要4カ国(日本、タイ、台湾、インドネシア)約1億5160万人(同23%増)となっている。

日本国内ユーザー数は、少し前の2014年7月発表だが5200万人で、そのうち毎日利用しているアクティブユーザー率は66%。月のアクティブユーザー数は4711万人、90%ものユーザーが月に一度はLINEを利用していることになる。

他のSNSの月間アクティブユーザー率は、Google+が24%、Facebookが53%、Twitterが61%と言われているので、これらと比較してもLINEは生活に深く浸透している。

LINE利用者は若年層が多いイメージがあるが、それは数字でも裏付けられている。29歳以下のアクティブ率が非常に高く、18歳から24歳までのユーザーでは40%、25歳から29歳では34%のユーザーが、ほぼ毎日LINEを利用している。

東日本大震災をきっかけに誕生したとされるLINEは、当初は家族や友人の無事を確かめる手段、つまり社会的なインフラとしての性格が強かったが、今やユーザーの日常に欠かせないコミュニケーション・プラットフォームに進化した。

収益構造の分散化

無料メッセージングサービス、SNSアプリでは日本で圧倒的な利用者数と存在感を持つLINEは、以下のようなサービス=収益源を持っている。

一般消費者向け

LINEメッセンジャー
INE Store(LINEスタンプ販売売上げ)
LINE Creators Market(LINEスタンプ販売の仲介手数料)
LINE Game
LINE Music(定額制音楽ストリーミング)
LINE占い
LINE Out(携帯電話、固定電話との通話)

企業向け

LINE公式アカウント
LINEビジネスコネクト(1to1メッセージング)
プロモーションスタンプ
LINE@(店舗・施設向け)

この他にも様々なサービスメニューがあるが、それらの特徴は一般消費者、企業の2つのビジネスソースを持っていることだ。

やや数字が古いが、例えばFacebookの2011年年次報告書によると、売り上げの85%が広告収入だった(広告収入の比率が高い傾向はその後も続いていると思われる)。

さらに言えば、それらの広告は企業によるものだ。Facebookの収益の中で広告の占める割合は90%に及んでいる。一方LINEの収益構造は、広告が20%、LINEスタンプが20%、ゲーム課金が60%と言われている。

企業が公式アカウントを契約するには、12週で1000万円(通年で4000万円)、月間メッセージング費用が250万円から1700万円、スタンプ配信費が2500万円といったメニューが設定されている(詳細はプランによって異なる)。

公式アカウントを開設・維持するには意外と巨額のコストがかかるため、それが可能なのは実質的には大手企業、いわゆるナショナル・クライアントに限られる。

ますます広告の費用対効果が求められている昨今、効果が目に見えて測れるLINEは企業にとって非常に魅力的なサービスといえる。このように効果測定と費用対効果の点で、LINEはクライアントのニーズに応えることができている。

公式アカウントが大手企業から効率的に得られる大きな収益源であるのに対し、店舗・施設のニーズを汲み上げるLINE@はロングテールとしての収益源だ。

この構造はGoogleと似ており、生活の中に浸透したプラットフォームとしての強みを最大限に利用している。

ゲーム課金に頼らないマネタイズの方向性

LINEに限らず、いかにマネタイズ(収益化)するかはSNSの永遠の課題だ。

GREEやmixiなどSNSで先行してい企業もマネタイズ(収益化)に苦労し、結局は本来のSNSサービスよりもゲームが主要な収益源となった(あえて言えばゲームのプラットフォームに変容してしまった)。

個人と企業の両方で広告以外の収益源を持っていることがLINEの収益構造の特徴であり強みであるが、逆に見ると本業での収益化は当面難しく、現在売上の多くの部分をゲーム課金に頼っている。

上述したGREEやmixiはゲームのヒット如何で売上と収益が大きく変動するのが弱みだが、このような弱みを持たないためには、ゲーム課金以外でLINEならではの収益源を確立する必要がある。

では今後考えられるマネタイズ(収益化)の方向性は何だろうか?

まず無料サービスでまずユーザーを獲得し、有料サービスを利用させることで収益を上げる仕組み(フリーミアム)の可能性が考えられる。

この方向では魅力的な有料サービスを開発・提供することはもちろん重要だが、無料でのメッセージングサービスの魅了がすでにユーザー心理の中で確立されているため、無料サービスに慣れたユーザーの心理的な障壁を下げることがカギとなるだろう。

または広告サービスをさらに充実させることだ。数年後には日本でもスマートフォンの浸透とともにネット広告はテレビ広告を抜く勢いで成長し続けている環境の中、効果測定が可能で費用対効果が見えるネット広告の将来性は高まるばかりだ。

Googleの事例を見れば、今後長期的にはロングテールを掘り起こす余地があるのではないだろうか。LINEが生活の中に浸透するほど、小規模店舗や施設のニーズが高い日常的な広告・プロモーションの効果が期待できる。

特に若年層をとらえるための広告ビジネスで、彼らの生活に深く浸透しているLINEは、現時点では大きなアドバンテージを持っている。

このアドバンテージを最大限に活かすサービスメニューを開発し続けることが持続的な成長につながるだろう。またこれによってゲーム課金への依存度も下げられる。(ZUU online 編集部)

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