ゲーム・スポーツ観戦から医療まで かつてない用途での活用広がる

今まさに、VR(バーチャルリアリティ)による情報革命が始まろうとしています。特に今年に入ってからは、これまでにあったものと比較してみても、よりハイエンドなVR体験が可能となるVRヘッドマウントディスプレイの発売計画が、数々の企業から発表されており、360度の撮影が可能となる全天球カメラの発売、さらには、複数の企業がVRへの参入を表明して、いよいよ本格的なVRの普及が始まろうとしています。

従来、ラジオは「音」、テレビは「映像」による体験が主流でしたが、このVRが提供するものは、「空間」です。VRによってプレイヤー自身がゲームの中に入り込んでいく感覚は、今までの想像を遥かに超えたものであり、今までにない新しいメディアの誕生と言えるでしょう。

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現在、最も注目を集めているVRの用途は、ゲームになります。例えば、シューティングゲームにおいては、プレイヤーが実際にコックピットに座っている感覚で戦闘機やロボットに乗り込み、プレイヤー自身の目で敵を探して撃墜することが可能になりました。

また、RPGでは、プレイヤー自身の身長を圧倒するレベルのモンスターと対峙して、周囲に展開する仲間と一体となって戦うという表現方法が実現され、サッカーゲームでは、プレイヤー自身がピッチに立って憧れのスター選手と一緒にプレーをする体験ができます。まさに本物と同等の体感ができるのです。

スポーツ観戦においてもVRにより観戦の仕方が大きく変わる可能性があります。一例を挙げると、サッカーやバスケットボールなどで試合中のフィールドの中に飛び込んでゲームを楽しめるVRシステムが開発中です。

プロバスケットボールのNBAでは、設置された6台のカメラから送られる映像データを解析し、そのデータを基に選手の3Dイメージが投影された実際の試合会場に入り込み、コート内においても自由自在に動き回りながら観戦することができるようになります。

不動産の物件探しでもVRは活用されつつあり、仮想現実の世界に作られた物件に「ワープ」することで、その物件の内覧をすることができます。

また、医療分野においてVRは親和性が非常に高く、既に手術シミュレーションや遠隔手術にも活用され始めています。特に、遠隔医療の分野においては、VRが切り札的な存在として注目されています。

これまで述べてきたもの以外にも、音楽や映像関連といったエンターテインメント業界や教育・旅行、さらには、広告業界などの様々な分野でVRの活用が見込まれています。

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先だっての3月16日には、ソニー・コンピュータエンタテインメントが「プレイステーションVR」を10月に発売することを発表しました。ここで注目すべき点は、399ドルという低価格な希望小売価格です。なにしろ参画するソフトウェアメーカー数も230社以上という規模ですので、一気にVR市場での土台を築きあげてしまう構想です。

他方、ライバルと目される米フェイスブック傘下であるオキュラスVRの「オキュラスリフト」は599ドルであり、台湾のスマホメーカーであるHTCの「ヴァイブ」は799ドルとなっています。

ゲーム業界では、遊ぶ方法、すなわち、デバイスが変化する度に勝者が入れ替わるという歴史を繰り返してきており、早い者勝ちという傾向が端緒に見受けられます。要するに一発逆転というチャンスが転がっている訳です。

今年は「VR元年」開発競争は激化

こうした状況下で各社も積極的に行動し始めており、VR開発競争は激しさを増しています。例えば、ガラケーで一世を風靡しながらもスマホで乗り遅れたグリーは、HTCと提携してVRで挽回に挑もうと動いています。

一方で、コロプラは、これまで2本のスマホゲームをオキュラスリフト対応のPCゲームに焼き直して配信中で、さらに「360度動画のテレビ局」を目論んだ「360Channel」を設立し、今後はVRのあらゆる端末に向けた配信を行う予定です。

米フェイスブックは、遠方にいる友人と同じ場所にいるかのような交流体験ができる「ソーシャルVR」の普及に向けた研究開発チームを発足させました。

VRの関連銘柄は、ソニー、カプコン、コーエーテクモホールディングス、バンダイナムコホールディングス、コナミホールディングス、スクエア・エニックスホールディングス、コロプラ、グリー、カヤック。

米ゴールドマンサックスによると、VR及びAR(拡張現実)の市場規模が2025年には最大1100億ドルに達すると推計しており、株式市場においても新たな成長産業の出現に高い期待が集まっています。2016年は「VR元年」と言われており、まさに今、バーチャルリアリティーの大航海時代が始まったところです。VR産業の動向を注視し、第二のガンホー、ミクシーの出現に期待したいと思います。

IFA原田茂行氏
【プロフィール】
大和証券、SMBC日興証券、野村証券を経て株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルに所属し、IFAとして独立。日本証券アナリスト協会検定会員、囲碁三段。(記事提供: 株主手帳 5月号)

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