「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるが、金融商品販売の現場では常識や経済学の理論では説明出来ない奇妙なことがしばしば起こる。
「分配金が多いファンドは基準価額が下落するばかりでダメだ」と言い放つ一方で、分配金の多い新興国関連のファンドを持ち続けている人がいる。一生使い切れない金融資産を持ちながら「老後が心配だから運用しなければならない」と語る高齢者がいる。
「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと「投資が必要のない人」まで訳のわからない金融商品に手を出してしまっている。普段は冷静で、賢明なあなたが投資に関しては非合理的で誤った判断を下してしまうのはなぜか?
陥りやすい「情報の迷路」のワナ
物事を正確に判断するには情報が必要だ。「情報が多ければ多いほど正確な判断を下すことができる」そう思っている人も少なくないはずだ。しかし、皮肉なことに情報の多さが判断を狂わせている。
あなたが投資信託を購入する時の状況を思い浮かべて欲しい。たまたまあるマネー雑誌で推奨されていたファンドがあったとしよう。勉強熱心なあなたは、きっとそのファンドをネットで検索し、膨大な情報に直面することになる。運用会社のサイト、口コミ情報、FPのサイト、個人のブログ……そのファンドに関する情報はネット上に無限に溢れている。そして最後には銀行員のセールストークを聞かされるハメになる。
今や情報を発信するためのコストは限りなくゼロに近い。誰もが好き勝手にネット上に書き込みが出来る。それらの情報の中には本当に役に立つものもあるだろうが、とんでもないクズも紛れ込んでいる。しかし、それは容易に見分けることが出来ない。どれだけ多くの情報を集めても、金融商品を選ぶための正確な情報が得られるとは限らない。
あなたは情報の迷路にはまり込み、最終的には目の前の銀行員の不合理なセールストークを信じてしまうことになるのだ。きっと、経験したことがあるはずだ。たくさんの情報を集めれば集めるほど、結局のところ面倒になってしまうものなのだ。
意図的に「操作された情報」も多い
あなたがせっかく集めた情報だが、実はその多くが「何らかの意図によって」操作されたものである可能性もある。にもかかわらず、あなたはそれが正しいと信じ込んでいる。
以前有名タレントがお金をもらって、まるで自分がその商品を使ったかのような感想をネットの掲示板に書き込んだことが問題視されたことがある。投資の世界も同様で、世の中にはお金をもらって、販売者に都合の良い情報を発信する人が存在することをあなたは知っておかなければならない。
さらに厄介なのは、なまじ知識がある人達だ。彼らはネット上の怪しげな情報には近づかない。日本を代表する経済誌、情報誌を購読している。そこで得られる情報はずっと洗練されている。いや、洗練されていると感じさせるように計算されている。
たとえば相続増税の実施により税制に対する関心が高まるなかで、住宅ローン減税や住宅資金贈与の特例など消費者にとっては有利な税制の紹介を行っている記事が掲載される。よくよく読めば住宅業者の「今こそ住宅を建てましょう」という広告である。
NISAや教育資金贈与といった関心の高いトピックスに絡めて同様の手口がしばしば使われた。広告臭さが徹底的に排除されているが、巧妙に商品の宣伝が行われる。
たどり着いた「真実」は巧妙に操作された「広告」である可能性は排除できない。
マクロ経済学を学ぶと「物事の本質」が見えるようになる
では、誤った判断をしないためにはどうすれば良いのか。あなた自身が金融リテラシーを高める必要があるのは今さら言うまでもない。
著名なエコノミストやFPが投資についてたくさんの本を出している。なかには全く経済や相場に対する知識をもたない素人がたまたま儲けた体験談(真偽のほどはわからない)を自慢げに披露しているものもある。こうした本を読みましょう。新聞を読みましょう、と言うつもりは全くない。ノウハウ本はテクニックについて書かれているに過ぎないことを認識すべきだ。
本当に投資で勝ちたいと考える人、投資を学びたいと考えている人にはまずは「マクロ経済学」の本をお勧めする。決して簡単な内容では無い。かなりハードルが高いことは百も承知だが、それに向き合うべきだ。本当の意味での金融リテラシーを高めるには、苦労はあるが根本的な経済の仕組みを学ぶ意外に方法はない。
マクロ経済学は、財の価格や生産量の全体的な動きを分析する。国全体の財の価格の平均が「物価」、そして生産量の合計が「GDP」。これらは経済全体の分析には欠かせない指標だ。さらに、マクロ経済学は為替レート、金利なども取り扱う。
これらの経済変数の決定メカニズムや相互の関わりを分析することがマクロ経済学の研究内容と言える。マクロ経済学を学ぶと、世間でよく言われる経済についての認識が不十分な場合があることがわかる。テレビや新聞の経済記事が「ごく一面だけ」を伝えたものであり、「物事の本質」を伝え切れていないことに気付く。その本質にこそ「投資のチャンス」が隠れているのだ。
ゴルフの「ルールを学ばずに」コースに出てはいけない
ゴルフに例にとってみれば理解しやすいだろう。マクロ経済学で学ぶのはゴルフのルールや道具の使い方だ。基本的なルールも知らずにいきなりゴルフコースでプレーする人はいないだろう。ドライバー、アイアンはそれぞれどんな場面でどのように使えば良いのか、練習場で試してからコースに出るのがごく当然だ。
これに対しノウハウ本に書かれているのは、「どうすれば球筋を操れるか」といった内容だ。まともにボールを打つことすら出来ない初心者がドローやフェードといった球筋を打ち分けることにこだわるのは実に滑稽だ。
合理的なはずのあなたが投資においては「誤った判断」をしてしまう理由がここにある。親切に都合の良い言葉が並ぶノウハウ本はあなたに利益をもたらさない。本気で投資を学びたいと考えるなら「マクロ経済学の本」を手にとることをお勧めする。きっと新しい発見があるはずだ。(或る銀行員)
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