5月30~6月3日の東京株式市場は波乱含みとなった。週前半は円安進行が好感され、日経平均株価は約1カ月ぶりに1万7000円台を回復した。しかし、安倍首相が消費税増税の先送りを発表すると逆に売りが膨らみ、1万6500円台へ下落した。増税先送りとともに景気対策が出ると期待していた向きの失望売りが重なったとみられる。

5月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比3万8000人増にとどまった。増加数が予想を下回ったことで米利上げ観測が後退し、海外市場では1ドル=106円台まで円高が進行した。このため、今後しばらくの間、日本株は利益確定売りが出やすい地合いになると見込まれる。日経平均は上値の重い展開となりそうだ。

手掛かり材料の出た中小型株が上昇

それでは、今回は東証1部の5月の月間値上がり率ランキングをみてみよう。

(1) 新日本科学 <2395> 96.09%
(2) ブイ・テクノロジー <7717> 88.67%
(3) 日本アジア投資 <8518> 69.96%
(4) トクヤマ <4043> 67.43%
(5) ブレインパッド <3655> 65.75%
(6) ネクシィーズグループ <4346> 64.59%
(7) インターワークス <6032> 60.83%
(8) 日本ライフライン <7575> 59.79%
(9) トリドール <3397> 46.68%
(10) 大末建設 <1814> 44.43%
※5月31日終値ベース

5月は円高一服や消費増税の先送り期待などで先高感が強まり、投資家の物色ムードが広がった。月間値上がり率ランキング上位には、値動きの良さから人気化した中小型株が目立つ。

新日本科学、投資先が製薬大手ファイザーと核酸治療薬を共同開発

5月の値上がり率上位10社から、今回は新日本科学、トクヤマ、トリドールの3社を取り上げたい。

新日本科学は前臨床試験受託大手。バイオ関連株の一角で、おりに触れて買い材料が公表され、そのつど目先筋の売買が膨らむ傾向のある銘柄だ。

5月の上昇局面では、投資先である米ウェーブライフサイエンス社が米製薬大手ファイザーと核酸治療薬の共同開発を行うことで合意し、約1000億円のロイヤルティーを得られる契約を結んだと発表したことが好感された。

そのほかにも米国での偏頭痛薬開発会社の設立や、上海での中国人富裕層を対象とした医療ビジネス合弁会社の設立など、株価上昇につながる発表が相次いでいる。とはいうものの、2016年3月期連結決算は営業赤字(最終損益は黒字転換)、2017年3月期予想も営業赤字・最終赤字を見込んでおり、期待先行で業績が追いついていない面があることは否定できない。

トクヤマ、企業再生ファンドが出資

トクヤマは塩化ビニール樹脂の大手メーカー。旧社名は徳山曹達。多結晶シリコンでは世界大手の一角。

5月12日、企業再生投資ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)から200億円の出資を受けると発表した。多結晶シリコンの市況低迷で業績が悪化しており、ファンドの出資により経営が改善するとの期待が集まった。

トリドール、業績向上を好感

トリドールはセルフ式うどんチェーン「丸亀製麺」を運営する外食大手。12日公表の2016年3月期決算が証券アナリストなどの予想を上回る好業績となった。国内既存店が好調で、営業利益が従来予想を大きく上回る87億3000万円(前期比2.1倍)に拡大。また、中期経営計画も、2017年3月期以降も着実に業績を伸ばす形に上方修正した。

外食業界では商品単価が上昇した日本マクドナルドが低迷する一方で、単価の安いセルフ式うどんなどに需要がシフトしている。トリドールの好業績は、こうした社会の変化を反映しているといえるだろう。(ZUU online 編集部)

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