憂うつな季節がやって来たと、感じるのはどの季節だろうか。「5月病」の春と応える人もいれば、寒さがこたえる冬と、答える人もいるだろう。こうした季節にはうつ病を発症する人が少なくないが、実は夏も季節要因のうつ病になる人がいるのだ。夏バテと勘違いしやすく、身体的影響も大きいのが特徴である。

うつ病に季節性は関係ない?

「うつ」病には、季節性はあまり関係ないとも言われる。しかし、秋から冬にかけて、気分の落ち込みが激しくなる人は多く、とくに「冬のうつ」は、海外でも有名だ。

冬が近づくと、メランコリーな気持ちになるーー。フランス映画のセリフに出てきそうだが、実際フランス人には「冬のうつ」が多いと言われる。フランスの秋は短く、あっという間に冬になる。ヨーロッパの冬は日照時間が短い上、天気の悪い日が多いのだ。濡れたマロニエの落ち葉が歩道に寒々と散らばる様子は、考えただけでも憂うつになりそうだ。

日の短いヨーロッパで、うつ病の対策として注目されたのが、光つまり太陽を浴びるという「ライトセラピー」だ。陽の光にあたることで、不具合をきたした体内時計をリセットできるという。1日30分ほど光を浴びるだけだが、冬でも室外のカフェテラスなどでおしゃべりを楽しむフランス人の間で、日光浴を兼ねたセラピーは人気になった。

太陽が原因となる、夏のうつ

一方、夏にだけ発症する「夏のうつ」は、太陽にあたることが原因となる。暑さで食欲不振や不眠、体重の減少などが起こり、気分の落ち込みが目立つようになる。このため、夏バテと思い込み、うつ病だと思い至らない場合が少なくない。軽度であれば、日常生活に大きな影響を及ぼすわけではないが、放置して重度になると、日常生活そのものが困難になってしまう。

うつ病は外部からのストレスなどで、脳のエネルギーが低下した状態となり、憂うつな気分や食欲など様々な意欲の減退といった心理的、身体的な不具合の状態が続くことをいう。仕事上のストレスや人間関係なども原因に挙げられる。仕事や趣味、友人関係などに、興味や喜びを感じられない、疲労感が大きくなり、活動性に低下が見られる、などの症状が長く続くようなら疑ってみていいだろう。

インターネットでも、セルフチェックが簡単にできる。塩野義製薬 <4507> と日本イーライリリーによって運営されているサイト「うつ病 こころとからだ」では、症状の程度が分かる。疑わしい症状があるときは、セルフチェックをして医師に相談するか判断しよう。

暑さ対策も「夏のうつ」には必要不可欠

「夏のうつ」は、食生活や睡眠などのほか、暑さへの対策も必要になる。

(1) 暑さ
強い日差しや暑さが直接的な要因となる「夏のうつ」には、暑さ対策が有効だ。長時間外で過ごして日焼けしたり、冷房にあたり過ぎたりするのも、疲労が溜まって、うつ病の原因になるのだ。

(2) 食生活
暴飲暴食など栄養バランスが乱れた食習慣を続けると、うつ状態を引き起こすきっかけになる。また、タンパク質が不足すると、気分の落ち込みを改善する働きがあるセロトニンというホルモンが減ってしまう。セロトニンを増やすためにも積極的にタンパク質を摂るようにしたい。

(3) 睡眠
睡眠の質を改善するのも予防法として有効だ。夏は夜のイベントも多く、つい夜更かししてしまうが、睡眠のリズムはいつでも一定にしたい。なるべく決まった時間に就寝、起床する習慣をつけ、自律神経を整えるようにしよう。

うつ病治療の権威である東京女子医科大学・坂本薫教授は、効果的な生活習慣として「朝日を浴びる」「魚を食べる」「散歩をする」の3つを勧めている。パニック障害など不安障害のスペシャリストである精神科医の貝谷久宣氏は、「簡単な片付け、掃除で気分をすっきりさせ」心を軽くする方法を提唱している。

イベントの多い季節だが、遊びすぎて知らず知らずに疲れを溜めて、「夏のうつ」にならないためにも、カラダのSOSには早めに気づくことが大切だ。(ZUU online編集部)

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