中国の躍進、その影にあるのは国を上げた大規模政策

昨年の29位から25位へと順位を4つ上げた中国について、WIPOは「中国が順位を上げているということは、中国の技術革新力が継続的に強化されていることを反映している」と分析している。

中国は8月16日に、量子科学実験衛星を世界に先駆けて打ち上げに成功した。習近平国家主席の下で、宇宙開発を積極的に進める中国が、ハッキング不可とされる量子通信の確立に向けて、前進したことになる。分離や複製ができない量子を使った通信の傍受・解読は不可能なため、量子通信は「超高度の安全性」を持つと考えられている。中国はこの技術により、北京と新疆ウイグル自治区ウルムチ間の通信の安全性を確保することができるとしている。

中国躍進の影にあるのは、「科教興国」という考え方だ。一般の教育経費を除く特別投資で、2010〜2015年に1兆2177億円を投資するなど、国をあげて注力している。同国では、大学生の6割が理系専攻であり、この分野での人材母数が大きい。だが、今までは優秀な人材が海外留学後、そのまま留学先にいついてしまい、流出し続けるという課題があった。現在は「海亀政策」という帰国後の本人の待遇のみならず、配偶者や子供への待遇も保証する制度を打ち出し、多くの人材を中国に帰国させることに成功している。帰国した彼らは、研究先進国で研究スタイルを身につけた研究者として、中国の理系分野での飛躍に貢献しているのである。

インドも負けじとジャンプアップ

アジア各国のランキングを見ると、やはり目立つのは中国の躍進ぶりだ。日本をはじめ、アメリカやイギリス、ドイツなどで評価の高かった「技術革新品質評価」についても、中国は中所得エコノミーの中ではトップとなる17位にランクされている。中国国務院は2016年から2020年にかけての「第13次五カ年計画」の中で、今後5年の科学技術革新発展の青写真を描いており、その中では技術革新力ランキングで15位以内に入るという目標が掲げられている。

以下がアジアのトップ5だ。()内は昨年順位である。

5位 中国    (全体の25位) 50.57ポイント (前年29位)
4位 日本     (16位)   54.52ポイント (19位)
3位 香港     (14位)   55.69ポイント (11位)
2位 韓国     (11位)   57.15ポイント (14位)
1位 シンガポール (6位)    59.16ポイント (7位)

ASEAN諸国のランクを見ると、シンガポール(全体の7位)を筆頭に、マレーシア(35位)、タイ(52位)などとなっている。また新興国では、インドが昨年の81位から66位へと大きく順位を上げているのが目立っている。

数学が強いというイメージを、インドに持っている人も少なく無いと思うが、同国は他の理系分野にも強みを持っている。米国シリコンバレーで、活躍するインド人技術者も多い。最近では、インド国内で有数のIT企業が自治体と協力して、大学院の創設に力を入れている。中国に比べ、やや遅れを取っているものの今後の伸びしろは大きい。

先進国に比べ、まだ発展途上な部分や人口の母数が大きいという優位性などは、おそらく今後じわじわと出てくるだろう。来年の順位は今年以上に、新興国がジャンプアップしてくる可能性があり、目が離せない。(ZUU online編集部)

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