過去の長期金利上昇にみる「恐ろしい事実」
2016年7月、これまで一貫して下落し続けてきた長期金利が急上昇した。過去の金利急騰を振り返ると、恐ろしい事実が見えてくる。金利急騰局面の「数年後」には株式相場が急落しているのだ。
1987年の金利急騰から数年後にはバブルが崩壊した。98年の金利急騰後にはITバブルが崩壊、そして03年の金利急騰後にはサブプライムローン問題が顕在化し、リーマンショックへとつながった。
古くからマーケットに関わってきた人間は「金利の変化」が経済やマーケットの潮目を変えてしまうことを感覚的に知っている。「カナリアの鳴き声」に耳を傾けることができる。
銀行の販売姿勢に覚える「強烈な違和感」
にもかかわらず、マーケットが発する「重要なシグナル」「カナリアの鳴き声」に無関心な銀行員のなんと多いことか。
「東京五輪までは J-REIT の成長が見込めます」
そんなセールストークを耳にしたことはないだろうか。かつて多くの銀行員がこのフレーズでREITを販売した。彼ら、彼女らは投信会社や銀行の上司から、このフレーズが「お客様を動かす」と教え込まれたのだ。多くのお客様は未だにその言葉が頭にこびりついたままでいる。そんなお題目を鵜呑みにする銀行員が実際にたくさんいる現状を嘆かずにはいられない。
金利はマーケット関係者から「炭鉱のカナリア」といわれてきた。相場の変調は株でもなく、為替でもなく、真っ先に金利に表れるからだ。炭鉱のカナリアは人間よりも早く有毒ガスの発生を感知することから、そう呼ばれるようになった。それは、マーケットに関わる先人が残してくれた貴重なアドバイスだ。
しかし、金融商品販売の最前線に大量投入される若手が受ける教育は「いかにマーケットと向き合うか」ではなく、「いかに商品を販売するか」である。そこにはマーケットが「思い通りに動かない」ものであるという前提条件が欠落している。
いかに売るかというセールス話法をブラッシュアップすることに力を費やす銀行の姿勢に私は強烈な違和感を覚える。かくて先人のノウハウは廃れていく。せめて、私は自分の部下達にはこれらを継承したいと思うのだが。(或る銀行員)
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