中秋節の3連休に合わせ、中国初の宇宙ステーション「天宮二号」が打ち上げられた。G20サミットをホストとして無事乗り切り、その10日後、中秋の名月に合わせ宇宙船を打ち上げた。

連休のためニュースが少ないせいか、扱いはいつもの宇宙関連報道より大きい。G20に宇宙ステーションと国威は大いに発揚された。経済にも治安にも大きな問題はない。

これも中国共産党のすぐれた統治あればこそというストーリーを語りたいようだ。

天宮二号の目的

打ち上げ成功翌日の地方紙は4ページを天宮二号特集に当てている。G20閉幕翌日の特集は3ページで、それを上回る。

天宮二号は、2011年打ち上げられた天宮一号と同じタイプである。実験船と動力船に分かれ、全長10.4メートル、太陽電池翼展開時の全幅18.4メートル、重さ8.6トン。軌道周回時の設計寿命は2年で、宇宙飛行士の活動空間は、16~18立方メートル。2名の宇宙飛行士の活動には十分な広さを確保している。

天宮二号の目的は、有人宇宙船「神舟11号」とドッキング、宇宙飛行士が“中期駐留”し、さまざまな地球科学データ収集と、量子力学など14の科学実験を行うことである。

総設計師は朱氏(53)、宇宙開発23年のベテラン

中国航天科技集団公司(1999年設立、従業員2011年末で15万9400人)第五研究院に所属する、天宮2号、総設計師の朱氏は53歳、これまで23年間宇宙開発事業に携わってきた。

今回の発射成功の意義について朱氏は、中国の宇宙飛行の“3歩走戦略”のうち宇宙ステーション段階という第二歩に入り、新時代の大門を開いたと述べた。

天宮一号に比べ、(1)地球科学観測研究設備、宇宙医学設備の搭載。(2)推進剤を始めとする推進系統の改良、改造。(3)居住環境の改良、睡眠環境の改善、娯楽設備の導入。(4)電気、液体(油圧と見られる)機械系統の新設備など大幅に機能強化されている。実験段階から実行へと移ったという。

隠しているだけかも知れないが、中国は大事故もなく比較的順調に、有人宇宙飛行を実現した。それには優秀なプロデューサーの存在は欠かせないが、朱氏もその1人なのかも知れない。

ロケット開発物語

特集最後の4ページ目は、天宮二号を打ち上げたロケット、長征二号Fに関わる開発物語だ。長二Fは97%の信頼性と99.7%の安全性を持っているという。全長52.03メートル、重量493.1トン。有人用Y系と貨物用T系に分かれ、目的別の改良を重ねてきた。これが安全性を高めた原因である。

最後に発射指揮員・王氏の話に触れている。彼は1994年青島海洋大学を卒業、夢を追ってリュックを背負い、西北の発射基地の赴いた。これまで14年にわたり推進システムのソフトウエア開発に携わり、その間ソフトウエアに起因する事故はないという。

どうやら中国航天は本当の精鋭を集め、それぞれ能力を発揮させていて、その点では、汚れた金にまみれた解放軍とは少し違うようだ。

しかし欧米の二番煎じの宇宙ステーションにどれほどの意義があるのか。そうしたことに言及するものは誰もいない。何しろこれは“中国の夢”なのだから批判は許されないのだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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