東アフリカ共同体(EAC)とブリュッセル間の自由貿易協定(FTA)提案を却下したタンザニアに続き、ほかのアフリカ・カリブ地域が提案段階にあるEU経済連携協定を白紙に戻す気配が濃厚だ。

EU離脱交渉の開始が来年初旬と見こまれている英国が、これらの国にとって貿易上有益な立場にあることに加え、ブリュッセル側に利便の強いFTAに対して他国で蓄積していた不満が、「Brexitをきっかけに膿だしの時期に突入したのではないか」と一部の専門家は見ている。

予想外に強かった輸入大国としての英国

すでにタンザニアの外務省は「EPAは東アフリカの産業に何の利益ももたらさないどころか、有害な結果となりかねない」と、新興市場に参入するやいなや実権をにぎって市場を操作しようとする発展国のやり方を非難。ブリュッセルからの提案を正式に却下している。

Brexitの影響を推測するレポートを発表した英シンクタンク、海外開発機関(ODV)の主幹研究員、クリストファー・スティーブン氏とジェーン・ケナン氏は、「Brexitが多くの政府にとって、不満だらけのEU協定を却下する絶好の言いわけになった」とし、同様の動きがアフリカ・カリブ地域で広がっていくと見ている。

FTAを始めEUと協定を結んでいる国の多くが、英国からブリュッセルに主導権がわたることで、自国にどのような影響がおよぶのかという点に全神経を集中させている。

英離脱決定後の他国の反応を目の当たりにし、Brexitが完了する頃には複数のEU協定が消滅している可能性を唱える専門家も出てきた。

アフリカやカリブ地域を例にとっても、英国が「主要EU輸入国」という看板を失った後でも「巨大な販売市場を誇る輸入国」である事実は変わらない。需要の大きさではEU市場とは比較にならない」と、単独市場へのアクセスを盾に強硬な姿勢を維持するブリュッセルの鼻をへし折る見解を示している。

今年にはいってEUは、カナダには包括的経済・貿易協定(CETA)で、米国には個人情報移転に関する「プライバシー・シールド」協定で合意に達しているが、あくまでEU側が譲渡したかたちだ。

しかしこうした不穏な流れをくんで、今後EUの構造に何らかの改革が加えられる気配は、現時点におけるブリュッセルの反応からは感じられない。

崩壊はまぬがれたとしても、EUの基盤が強い圧力をもってゆるがされている事実から、目をそらすことは不可能だろう。(ZUU online 編集部)

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