異常発熱事故が続き、10月10日に事実上の生産中止となったサムスンのスマホ「Galaxy Note7」。原因はいまだ不明で調査中だが、事故の内容を見てみるといくつかの原因が考えられる。
発売直後から異常発熱事故を起こしていた
Galaxy Note7は今年の8月から発売が開始された最新型のスマートフォン。5.7インチの大型ディスプレーを持つモデルとして“Note”の名前を冠している。OSはAndroid6.0.1、CPUにSnapdragon820を搭載。Samsungのフラッグシップモデルとして登場し、発売直後の評判は悪くなく、「Galaxy史上最も良い」との声も少なくなかった。
ところが発売間もない頃から「本体が異常に加熱する」との報告が相次ぎ、名指しで航空機内の持ち込みを制限されたり、ついにはこれが原因で乗用車が燃える動画まで投稿されたりした。
サムスンはまずバッテリの充電量を60%に制限するパッチを配布し、さらにリコールすることにより端末を交換するという措置を取ったが、交換済みのものも異常発熱事故が発生し、結果的にはすべての端末を回収して返金に応じるという事態になった。
スマホが発熱するメカニズム
スマホも電子機器のため、負荷がかかる処理(動画撮影など)を行えば発熱する。そして化学反応を起こして発電するバッテリ部分も発熱する。スマホには発熱する部分がたくさんあるのだ。誰でも手に持った時に熱いと感じたことがあるだろう。
もちろん設計により発熱を冷却する工夫をなされているが、これまでは主にCPUが発熱の原因であるとされる。高性能なスマホでは発熱の問題を完全に解決することは難しいと考えられている。
またバッテリーは充電時にもっとも発熱するため、発熱を抑える手段として電子回路によって温度管理がなされており、安全装置として一定温度以上発熱した場合は充電を中止したり、満充電になった場合には自動的に充電を停止する機能が搭載されている。
リチウムイオンバッテリーの仕組みと危険性
現在スマホやノートPCなどに使われている電池は、そのほとんどがリチウムイオンバッテリだ。バッテリーの基本構造は「電子の移動により発生したエネルギーを利用する」というもの。この電子の移動にリチウムイオンが使われるのが、リチウムイオンバッテリーだ。
アルカリ、マンガン、ニッケルカドニウム(ニッカド)などバッテリーにはいろいろな素材が使われるが、リチウムイオンの特徴はその「エネルギー密度の高さ」であり、これまでのバッテリーよりも駆動力も持続力も高いとされている。
また従来型の電池ではよく言われていた「放電しきってから充電しないとだんだん使用量が減る」といういわゆる「メモリー効果」も、リチウムイオンバッテリーでは影響はないとされていた(ただし近年ではリチウムイオンにも若干のメモリー効果はあるとの研究発表もなされている)。
むしろリチウムイオンバッテリーの劣化につながるのは、100%充電を繰り返すことによるバッテリに対するダメージであると考えられており、そのため意図的に100%充電させないような機能を持つ電子機器も存在する。
エネルギー密度が高いため危険性も高く、そのため電解質が液体ではなくポリマーが使用されているのも現在のリチウムイオンバッテリーの特色である(リチウムポリマーとも言われる)。
これまでもリチウムイオンバッテリーの事故は度々起こっており、主に過充電を防ぐための回路故障による異常加熱と、充電時に端子部分に異物が挟まりショートする例、物理的に破損することによる異常加熱などが原因である。バッテリーは一方から一方への電子移動を管理することにより出力を制御するが、それが何らかの原因で制御できなくなった場合にも発熱事故を起こす。
Galaxy Note7では何が起こったのか
今回のGalaxy Note7では何が起こったのか。詳細な原因は調査中ではあるが、発売後1カ月という短期間で100件を優に超す事故が発生している状況は異常であることは確かである。
先述の通りスマホの異常発熱事故は、これまでは主に充電時に発生しているが、今回のように使っていない状態から異常発熱して火災にまで至るという事故はあまり例がない。ユーザーが注意していても事故に至る危険性が非常に高い。
航空会社が名指しで持ち込みを禁止したのは、機内での火事が即大事故につながる可能性があるためであり、万が一を考えると理解できる。
今回の事故の原因で推定されている原因として、バッテリーそのものの異常(製造過程で異物が混入するなど)、バッテリーの安全回路の不具合、本体側の安全回路の不具合、などが考えられている。しかし充電量を制限するパッチを適用したり、バッテリーそのものを交換するリコールなどの対策を行った製品まで事故を起こしている現状を考えると、原因は一つではない可能性もある。
今回の生産中止によるサムスンに対する経営インパクトは計り知れない。ブランドイメージ的にこの先「Galaxy Note」というブランド名を使うべきなのかという議論も出ている。(ZUU online編集部)
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