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(写真=PIXTA)

経済・金融情勢は複雑化しており、発展の見込まれる優良企業の出現はなかなか望めない。銀行の不良債権増加の圧力も増している。

こうした情勢下、企業負債、銀行債権の株式転換に関する指針を述べた、積極穏妥降低資本比率に関する意見が中国の国務院から公布された。

そして新聞にはこれを無能な経営者の“無料の午餐”とならないようにするには?と題する記事が掲載されている。一般紙には専門性の高い内容である。

許される3つの企業タイプ 許されざる4タイプ

債務の株式転換には7つの経路があり、3つの奨励、4つの禁止としてまとめられている。基本的に許されるのは、前途有望で発展の見込まれる優良企業が一時的な困難に陥っている場合に限られる。許されるのは以下の3タイプだ。

1 景気循環の波にもまれ困難に陥っているが、十分逆転の見込める企業。
2 負債水準は高く、財務負担は重いが、戦略性新興産業領域にある成長型企業。
3 負債水準は高く、生産能力も過剰だが、重要な国家安全戦略性企業。

そして許されないのは次の4タイプである。

1 発展への展望が拓けない、望みのない半死の企業。
2 悪意のある飛ばしなどを行い、信用を失墜した企業。
3 過剰生産、過剰在庫企業。
4 債権、債務関係が複雑かつ不明晰な企業。

前世紀の90年代末、アジア金融危機の際、中国は政策的に企業負債の株式転換を行った。このときには少なからぬ不届き者が“無料の午餐”を満喫している。今回は同じ轍を踏んではならない。

不良債権増大と自己資本

中国の商業銀行の持つ不良債権は増大を続けている。6月末には1兆4373億元に達した。銀行監督管理委員会の李副主席によると、6月末の商業銀行不良債権比率は1.75%、資本充足率13%、カバレッジレシオは176%で、貸しはがしが起こるような状況ではない。

中国の銀行の安全性、穏健性に問題はない。銀行不良債権の中には、株式転換できる企業の負債はない。とはいえ企業は財務強化に努めねばならない。

そして企業の自己資本強化策の資金源にも触れ、次の3つの資金の活用を挙げている。

1 保険資金、年金、養老金基金などの機関投資家へ
2 株式の長期保有に転化、定着させるよう資金誘導
3 外資の株式投資、創業投資資金を誘引

法治化は最も困難

国務院の狙いは、法治化と市場化ルールによる不良債権問題の鎮静化、企業の経営近代化への努力をアピールし、中国経済への懸念を払しょくしようというものだ。

しかし、地方における企業救済の現場では、相変わらず人脈に基付く談合によって、恣意的に意思決定されている。記事の建前とはだいぶかけ離れている。

例えば外資系工場が撤退する、という状況下において地元の書記は、彼の前任地の中国人実業家に買収を打診する。引き受けてくれれば、将来その実業家が当地で新事業を展開するとき、破格の好条件を提供する、といった具合である。ルールに縛られる者はいない。

中央の通達は掛け声にすぎないことは、みなよく理解している。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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