Amazon,読み放題,雑誌,出版業界
(画像=Webサイトより)

2016年8月にスタートしたAmazonの電子書籍読み放題サービス「kindle unlimited」。スタートして間もなく人気タイトルが削除されたり、10月には大手出版社・講談社が提供全作品1000点以上を削除されたことから抗議のコメントを発表したりと、早々と迷走の気配を見せている。

出版業界大注目の読み放題サービスに一体何が起こっているのだろうか。

アマゾンと出版社の対立という事態に発展

国内で出版している書籍・雑誌など12万冊に洋書約120万冊の電子書籍が月額980円(税込み)で読み放題という「kindle unlimited」は、8月3日にサービスを開始。講談社や小学館、文芸春秋、新潮社など大手出版社の作品も提供されるとあって、大きな注目を浴びながらのスタートとなった。

しかし、早くも8月31日付の朝日新聞デジタルの「アマゾン読み放題、減る人気本 想定以上の利用、出版社への支払い重く」と題された記事の中で、人気のある漫画や写真集などがラインアップから外れ始めたことが報じられる。

なぜ、そのような事態が発生したのか。それを理解するためには、「kindle unlimited」のサービスの仕組みをまず理解しておく必要がある。

朝日新聞の記事によると、アマゾンは国内数百の出版社と契約を結び、ダウンロード数に応じて出版社に利用料の一部を配分するという形を取っているという。さらに一部の出版社に対しては、年内に限って規定の料金に上乗せして支払う契約を結んでいたが、想定以上のダウンロード利用が続き、出版社に支払う費用の負担が大きくなり過ぎたという。このことから、漫画やグラビア系写真集など人気の高い本をラインアップから外し始めたというのだ。

人気作品のラインアップ外しはアマゾンと出版社の対立という構図を生み出すことになった。日経新聞10月11日付の記事「電子書籍『読み放題』一部削除はアマゾンの転機か」によると、人気タイトルが読めなくなったことに対して、「元に戻して読めるようにしてほしい」と抗議していた講談社に対して、9月末、講談社が提供している1000以上のタイトルが通告もなしにラインアップから外れるという状況が発生。

講談社は10月3日、「このような状況に大変困惑し、憤っております」という声明を発表するという事態に発展している。講談社以外にも、小学館や少女漫画の白泉社、官能小説のフランス書院などの作品も一部、または全てが読めなくなっているという。

問題の発端は、Amazonが想定していた数量をはるかに上回るダウンロード数になってしまったことだが、その背景には、日本の電子書籍の出版状況が海外と大きく違っていることがあるという指摘もみられる。

それは、雑誌と漫画の占める割合が高いことだ。Amazonでは年内の特例措置として、一般的な出版社に対して、読まれた量などに応じて追加料金を支払う契約を結んでいたという。ダウンロード後の書籍や雑誌の1割以上が読まれた場合、1冊まるごと読まれたのと同じ収益を出版社に支払うという条件だと言われている。

前出の日経新聞10月11日付の記事によると、日本の電子書籍市場はコミックスや写真集のようなビジュアル系コンテンツが7〜8割を占めると言われている。通常の書籍に比べると、容易に1割以上のページを閲覧してしまえる。

そうしたことからアマゾンの想定をはるかに上回って負担が大きくなってしまったということだ。

電子書籍も読み放題が当たり前の時代に

スタートから誤算続きの「kindle unlimited」だが、電子コミックや雑誌の読み放題サービスが続々登場する中で、単行本を含めた大規模な読み放題サービスは初めての試みとなるだけに、その行方は大いに注目される。

出版科学研究所の出版月報2016年1月号によると、2015年の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比5.3%減の1兆5220億円で、過去最大のマイナス幅。11年連続で減少している。一方、電子出版市場は31.3パーセント増の1502億円。

まだ全体の売上高の1割ほどであるが、出版界全体の中で占めるウエートは高まってきている。読み放題サービスによってコンテンツの収益低下に拍車がかかるのではないかと懸念する声もある一方、電子書籍の存在感が増すことのメリットを期待する声もあり、まだその影響を計り知ることはできない状況だ。

だがいずれにせよ、音楽サービス同様に電子書籍も読み放題が主流になっていく時代の到来を見据えた出版社の取り組みが求められていることは確かだ。(ZUU online 編集部)

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