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(写真=PIXTA)

人は誰も老いを避けられない。今やどの家も高齢者を養っている。中国は今、その高齢者が年間50万人も失踪するという、深刻な問題に直面している。

政府と社会は共同責任で、高齢者の手を取り、安全に家まで送り届ようではないかとする記事が出た。

中国人は高齢者と子供を大切に扱っている。中国人は生産年齢世代同士では、厳しい対決を繰り返すものの、高齢者と子供はその限りではない。特に高齢者は尊敬され、社会全体で守っている印象が強い。

しかし高齢世代の急増とともに、手が回らなくなってきたようである。

発表された白書

民生部所属の中民社会救助研究院は10月9日、全国で“走失”つまり家に帰って来ていない老人は、年間50万人、1日平均1370人にも及ぶという内容の「中国老年人走失状況白皮書」を発表した。

10月8日は旧暦9月9日の重陽節であり、中国伝統の敬老節でもある。ここで老齢化問題を再度社会で共有することは重要だと報告の意義を述べている。

さらに研究内容を見ていこう。高齢者は社会の進歩のため辛苦の一生を捧げ、“発展的成果”を収めてきた。しかし現実生活の中では、相当部分の人が独居している。中でも知力の衰えた老人は、家族、社会との絆が保てない。1日1370人ということは、ほぼ毎分1人の高齢者が、帰宅できなくなっている。

2015年の年末に至って、中国の60歳以上の高齢者人口は2億2000万人に達した。発達した国家として、失踪高齢者の問題はもはや見過ごすことはできない。知力の衰えは実は小さな問題に過ぎない。社会の変化に伴う大規模な人口流動により、世話をするべき子女が身辺にいない。

これがさらに高齢者の徘徊、失踪を後押ししている。人口が大量流出している中西部の農村では、失踪の大量発生地区すらある。そしてそれらの地区はおしなべて貧困である。

具体的データ・保護率は?

失踪高齢者の平均年齢は75.89歳、男性42%、女性58%と女性の方が多い。75歳以上になると、さらに女性比率が高くなる。また72%の人に記憶障害が見られる。そのうち老年性認知症患者は25%程度である。

実際に見つかって保護された高齢者はどのくらいいるのだろうか。

2016年2月26日、有力なネットニュースサイト「今日頭条」の尋ね人欄には3142件が掲載されていた。家族からは2995人の捜索願が出ていた。高齢者は1156人だった。そのうち9月6日まで無事保護されたのは602人である。

逆に死亡が確認されたのは113人、死亡率は9.78%に上った。“特大都市”がもっとも保護成績がよく84.13%。地方都市や農村では50.31%だった。

都市へ集中する高齢者

2015年の老年人口は、都市に52%、農村48%という分布になっている。2000年には都市34.2%、農村65.8%であり、ここ15年で都市の高齢者人口は急増している。農村戸籍の解消にも後押しされ、ますます高齢者は福祉の充実した都市圏を目指すし、最終的に都市問題に集約されるだろう。

筆者は高層マンションにかこまれた高齢者施設を見学したことがある。医師、看護師常駐で、入居者1人当たり面積はかなりゆったりとられていた。医療中心のコンセプトは明快である。しかし間違いなく一定以上の金持ちしか利用できない。

今後、都市部では、公営私営を問わず、あらゆるタイプの養老・介護施設が建設されていくだろう。高齢化で先行した日本には、蓄積したノウハウが生きる、ビジネス機会となるはずだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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