期限切れ鶏肉問題や異物混入問題など、不祥事が相次いだマクドナルドが徐々に復活の兆しを見せ始めている。
日本マクドナルドホールディングスが発表した2016年1-6月期の連結決算は、1-6月の既存店売上高が23%増と大きく回復するなど、業績が回復に向かい始めたことを印象づけた。今期の最終黒字の予想額は10億円と、最高益だった11年12月期(133億円)を大きく下回る水準ではあるものの、8月まで9カ月連続で既存店の増収が続いている。
この背景には地道な施策があるようだ。
400円からのバリューランチ
9月12日から全国のマクドナルドで、平日のランチタイム(10時30〜14時)がお得になる「バリューランチ」を始めた。
定番商品であるダブルチーズバーガー・てりやきマックバーガー・フィレオフィッシュに好きなサイドメニューとドリンクMサイズがセットになったバリューセットが、通常価格620円から550円に。ビッグマック・チキンフィレオに好きなドリンクSサイズのセットが、450-480円がワンコインより安い400円になる。
バリューセットを平日ランチタイム限ってさらお得な価格に設定することで、ランチ需要を取り返すのが目的だが、人気メニューをテコにしてマクドナルド=「安い」のイメージをプラスに転じさせる戦略だ。
人気メニューの復活
創業45周年を記念して過去に販売した人気商品を10月から順次復活させる。第1弾として10月5日から「テキサスバーガー」(490円)、第2弾として10月12日から「ベーコンポテトパイ」(150円)を期間限定で販売する。
特にテキサスバーガーは2010年の発売当初、4日間で想定の2.2倍の413万個を販売し、各店で販売数量を制限するほど爆発的な人気商品だった。
実績のある人気メニューの復活はある程度の売り上げが見込める半面、「メニューの使いまわし」といった新しさを感じさせかねないリスクがある。敢えてこの戦略をとったのは、「かつてのマクドナルド」の勢いを再び感じてもらうのも目的と思われる。
公式アプリでクーポン配布、メニューも分かりやすく
マクドナルド公式アプリでは、新メニューや各種キャンペーンの告知に加えて、いつでも使える割引クーポンを配布している。すでに2,500万以上ダウンロードされているという。日常的に店舗への集客を図れるとともに、アプリで会員登録を行わせることで顧客情報を収集できる。
店舗内のメニューについても、カウンターでの「カウンターメニュー」を復活させたのはよく知られているだろう。
さらには、カウンター上部にあるメニューボード、ドライブスルー設置店舗の「メニューボード」のデザインも刷新。よりメニューを選びやすいように改良している。地味な改良ではあるものの、顧客フレンドリーな施策であり、店頭でのオペレーションの改善も見込める。
店舗がポケモンGOのジム、ポケストに セルフレジも導入
目新しいのはポケモン・ゴーとのコラボレーションだ。国内のマクドナルド店舗(約2900店)が同ゲーム内の特別な場所である「ジム」や「ポケストップ」として設定されている。
「ポケモンGO」は今後様々な業種とのコラボが予定されているとのことだが、なによりも単独ローンチパートナーとして契約したほど、マクドナルドの入れ込みようはすごい。
またタッチパネルを利用してセルフで注文と会計を済ませることができる「セルフレジ」も導入した。
タッチパネルを利用してセルフで注文と会計を済ませ、カウンターで商品を受け取る仕組みだ。このセルフレジは既にオランダやフランス、アメリカなどでは徐々に導入がはじまっており、その効果を日本でも実証実験する予定のようだ。
日本ではまだ大森駅北口店のほかにも関西や中京、東北での実証テストではあるものの、その効果を見極めつつ他店舗への本格的な導入を検討していくようだ。
ネットでは「マクドナルドがついに人件費を減らし始めた………」というコメントが多数あるようだが、人件費削減もさることながら、オーダーの受付や会計などカウンターでの負荷を減らす意図がありそうだ。
「マクドナルドらしさ」の復活
期限切れ鶏肉問題や異物混入問題などが発覚した後、それらのネガティブイメージを払拭することが経営立て直しの最優先事項であった(今でも食材の原産国は詳細に明らかにしている)。
だがその時期を過ぎたいま、マクドナルドは「攻め」の積極策にようやく転じ始めた。その中核になっているのは、「マクドナルドらしさ」だ。
マクドナルドは自身を「ハンバーガー・レストラン」と呼んでいるようだが、本来マクドナルドとはファストフードであり、「早い、うまい、安い」がそのコア価値だ。
「早い、うまい、安い」はジャンクフードのネガティブなイメージを想起させるが、ポジティブに捉えれば日常の生活に身近で便利なものといえる。
その意味ではこれらの戦略と施策は「早い、うまい、安い」を実現するものであり、そのポジティブな価値を改めて消費者に訴えかけるものだ。マクドナルドが意図している・していないに関わらず、いわばブランドの、そしてビジネスの「原点回帰」を目指しているのだ。
財務上の本格的な業績回復にはまだ道半ばではあり、前途は多難であることに変わりはないが、このような戦略を軸がぶれないように地道に続けることが、結局は本当の「復活」につながるだろう。(ZUU online 編集部)
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