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小説版『校閲ガール』(宮木あや子著、画像=Webサイトより)

「校閲」という仕事に注目が集まっているという。きっかけとなっているのが、石原さとみさん主演のTVドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系、水曜10時放送)だ。

出版の世界では必要不可欠な業務だが、でもその内容は意外と知られていない。校閲という仕事はどんな作業をするのか、どんな人たちが携わっているのか、その内容と実態を紹介する。

そもそも校閲の仕事とは?

『校閲ガール』はもともとは宮木あや子氏による小説シリーズ(KADOKAWA)。2016年10月から始まったテレビドラマが人気を集め、高い視聴率を上げている。

内容は、オシャレ大好きな主人公・河野悦子がファッション誌を刊行している出版社に入社し、しかし希望とは違う「校閲部」に配属されて、でも持ち前の元気で周囲も驚く活躍を見せるというもの。石原さとみ演じるヒロインの可愛らしさ、ハツラツさ、仕事に熱中する真摯な姿勢などが好感を呼び、視聴者の心を捉えている。並行して、これまで地味といわれてきた“校閲”という仕事の奥深さと面白さが、視聴者にも広く認知されようになった。

校閲の仕事とは、簡単に言ってしまえば原稿の間違いや矛盾点を修正し、疑問点があれば編集者や筆者に指摘すること。

似たような職種に「校正」がある。ただしこちらは日本語の間違いや誤字脱字、表記や送りの統一、言葉の使い方や文章の構成を正す仕事。また、原稿と校正刷り(印刷物の仮刷り)を読み比べて間違いがないかどうかを確認・修正する(この作業を「突き合わせ」などと呼ぶ)ことも含まれる。つまり校正とは、どちらかといえば、あくまで文字寄りより、文章寄りの仕事といえる。

一方の「校閲」は、言葉の間違いを正すことはもちろんだが、どちらかといえば文章の内容の間違いを正す仕事。

たとえば本文に「その日の夕暮れには、東の空にくっきりと満月が浮かんでいた」という文章があったとする。

実際のその日その場所の天候や、本当に満月だったかどうかを資料を探して読み込んで確認する。そしてその内容が正しかったら、著者確認用の校正紙に「OK、○月○日、○場所名◯からは東の空に満月あり」といったメモや付せんをつけて編集者や筆者に戻す。もちろん、もし間違いがあれば、指摘して修正してもらう。

このため普通の校正のことを「文字校正」、より内容に突っ込んだ校閲のことを「内容校正」と呼ぶこともある。

つまり校閲というお仕事は、まさに名刑事や名探偵のように、正しい事実に対する飽くなき追求心が求められる、とても大切かつ大変な作業なのだ。

ドラマ「校閲ガール」では、ヒロインの活躍ぶりだけでなく、そんな実際の校閲の苦労や大変さもちゃんと描かれている。ドラマだから多少の誇張はあるが、実際に校閲の仕事をしている人からも、「普段あまり日の目を見ない地味な仕事が注目されて嬉しい」という喜びの声も上がっている。

校閲あるある

よくある校閲の例を紹介しよう。

たとえば「〇時〇分の電車に乗る」といった文章。本当にその時刻に電車があるのか、当然確認する必要がある。だから時刻表ミステリーのように、犯人がいろいろな飛行機や電車やバスを乗り継いでアリバイ工作をする小説の場合は、一つひとつの乗物の時刻を確認しなければならない。その苦労は、並大抵ではない。

また、時代考証も重要なチェックポイントだ。親しいライターさんの例だと「1967年、私はアフリカの△△△という国の大地に降り立った」という文章に、校閲者から「要修正。1967年時点で△△△という国は存在せず。当時の国名は●●●」というチェックが入って本人は大いにおののいたという。

ある時代小説家が書いた「見上げるとふいに白亜の城郭が現れた」という文章に「当時、その場所には森があったので城は見えないはず」とチェックされたとか。まさに校閲者、おそるべしである。

ただし筆者も負けてはいない。ある時代の生物に関する記述をしたところ「当時、その地域にその生物は生息せず」と校閲者に指摘された筆者は自ら飛行機で現地に赴き、大学の図書館で生息の証拠を見つけ、コピーを添付資料として校閲者に差し戻したという。事実を巡って、筆者と校閲者との間で熱いバトルが繰り広げられることは少なくない。

校閲者の習性とか適正とか

校閲者は、出版社の中の校閲部などに配属されている。とくに伝統のある大手出版社には強者の校閲者が多く、それが雑誌や書籍の信頼性を担保している。

校閲者は内容が正しいかを判断するだけに、正確な事実に対するこだわり、執念はとてつもない。だから日常生活で普通に雑誌を読んでいても、それが事実かどうか、つい疑ってしまい、自分で調べたくなる。これは哀しい職業病である。

最近ではフリーランスの校正・校閲者も増えている。在宅でもできるので、女性や高齢者からも人気のある職種である。ただし、日本語や書かれた内容へのこだわりを強く持っていることが必須。言葉や情報を扱うというとても大事で重要な仕事なので、不断からの広範な知識の吸収と、正確さへの執念が必要な、地味ではあるがなかなかすごい仕事なのである。

ネット時代だからこそ再認識したい校閲スキル

インターネットが社会の隅々にまで行き渡っている現代、個人だけでなく企業のマーケティング担当や広報関係者など、文章のプロではない人でもサイトやメール、SNSなどを使って情報発信をする機会が増えている。

しかし、制作プロセスにおいて校正・校閲の段階を踏んでいるところは実は少ない。これは大きな問題をはらんでいる。とくに企業の場合は、おかしな日本語のままで情報がネットに公開されると、その会社の信用度にも関わってしまうからだ。

出版が文化として成立したほぼ同時期から、校正・校閲という仕事の重要性は認められてきたし、これまで培ってきた多くの知恵やノウハウが日本には膨大にある。だからこのネット全盛の時代こそ、校閲のスキル向上と蓄積されたノウハウを活用することの重要性をいま一度認識することが大切なのではないかと思う。(ZUU online 編集部)

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