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(写真=PIXTA)

政府は10月18日、貸し切りバス事業者への罰則強化を盛り込んだ道路運送法改正案を閣議決定した。これは今年1月に長野県軽井沢町で起きたスキーバス事故がきっかけだ。懲役刑を導入するほか、法人に対しては罰金の上限を1億円へと大幅に引き上げる内容になっている。

道路運送法改正のポイントは

現行法では、事故が起きた時に乗客の安全確保といった命令をしなかった場合、個人・法人それぞれに「100万円以下の罰金」を科すとしていた。しかし改正案では個人に「1年以下の懲役」「または150万円以下の罰金」を命じるとしている。

さらに法人に向けては、「1億円以下の罰金」を科すとし、違反への抑止力を高める為に大幅に高く設定している。それでは簡単に改正のポイントを見て見よう。4つのポイントが上げられるが、まず1つは貸し切りバスの事業許可に5年の更新制を導入したことだ。

2つ目は、安全対策を怠った悪質業者の罰則金を100万円以上から1億円以下に引き下げたこと。3つ目は違反に関わった経営者への罰則を、懲役1年以下か150万円以下の罰金に厳格化したことである。よって今後は違反に関わった経営者らへの懲役刑も導入することになる。

そして4つ目は、事業許可を取り消されたバス事業者が再参入できない期間を、2年から5年に延長した。

これにより現行では事業許可は一度取得すれば無期限で有効だったものが、5年ごとの更新時には厳しいチェックを入れ悪質業者を排除するものだ。

悪質な事業者には運行管理者資格者証の返納を命ずる規定も

振り返ると、大学生ら15人が死亡という長野県軽井沢町でのバス転落事故は、非常にショッキングな事故だった。その後、政府は「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」を設置し、悪質業者には業許可の取消処分を行う事ができる規定を新設したのである。

貸切バス事業者に勤務する運転者がバスを運行中に重大事故を引き起こし、甚大な人身被害があった場合、あるいは事業者に悪質な法令違反があった場合には、事業許可の取消処分を行う事ができる規定を新設したのである。

さらに、貸切バス事業者が許可取消処分を受けた場合、運行管理に関して悪質な法令違反が認められた時は、運行管理者に対しても運行管理者資格者証の返納を命ずる規定も新たに設けた。行政処分の基準を大幅に見直したことになる。

無理な人件費の削減が問題

なぜこうした危険な状態になってしまったのか。規制緩和されたことから、供給過剰になったことが一因として考えられる。1事業者当たりの輸送人員でみると、1999年度では10万8000人であったのが、2000年度には7万2000人(同66.7%)に減少している。

営業収入では、1事業者当たりの営業収入額の経年推移を見ると、1999年度の2億4400万円に対し2008年度は億2260万円(50.2%)と半減している(日本バス協会調べ)。

事業者が経営環境を改善しようと、人件費を削減したことが一番大きく影響している。バス事業の収支構成を見ると、主なものは人件費、車両の償却・修繕費、運行費と管理費。

賃金が下がると運転手希望は少なくなり、良質な労働力の確保は厳しくなる。おまけに安全やサービスに問題を生じることにもつながる。賃金の下がった運転手は生活維持の為に、超過労働をしなければいけなくなる。

特に保有台数が5台程度のバス業者にいたっては、整備不良による故障も起きやすく、管理費を節約せざるを得ない状況になるのだ。法的な管理能力も資質も足りない会社が増えてもおかしくない。

規制緩和は本来、消費者のためであり事業者のためにもなるはずだ。競争が激化したからといって、運転手と乗客の命が奪われる危険性をおかすような、無理な人件費の削減が許されるはずがない。(ZUU online 編集部)

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