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©2016 Sony Interactive Entertainment

2016年10月13日、Playstation VRが発売された。ゲーム専門誌によると、発売4日間の国内販売が推定4万6000台にのぼり、量販店やECサイトで在庫薄の状況であると、好調なスタートを切っている。

好調な出だしを見せたPlaystation VRだが、どんな可能性を秘めているのか? ソニーの戦略との関連性の視点から、可能性を見ていきたい。

ウリは臨場感 気になる価格は?

具体的な活用可能性を見る前に、まずはPlaystation VRの概要を見ていきたい。VRとはVirtual Reality(仮想現実)の頭文字を取ったもので、Playstation VRは仮想現実の中でゲームプレーを可能にする端末である。

実際は巨大なゴーグルのような形をしており、これをかぶってPlaystation4の対応ソフトをプレイする形で使う。なおPlaystation VRを使った映画「シン・ゴジラ」体験会の参加者からは、「迫力はIMAXシアター以上」という体験談があり、臨場感にあふれる画面が広がるようだ。

気になる価格は、Playstation VRの本体は4万4980円(税別)、Playstation VRで遊ぶ際に必要となるPlayStation Cameraがセットになっているものは4万9980(税別)であり、Playstation4(2万9980円または3万4980円)(税別)の本体より高い。また、PlayStation Moveという専用のコントローラーも別売りで発売されており、これを使ってPlaystation VRでのゲームを更に楽しめるようになっている。

VRは他社も参入

VR端末は日本だけではなく、世界のメーカーも注目している市場である。例えば米国フェイスブック社が将来性に着目し、2014年に20億ドル(約2000億円)で買収した米Oculus社は、2016年3月にヘッドセット型のVR端末であるOculus Riftを発表している。またスマホメーカー台湾HTCも、2016年4月にヘッドセット型VR端末であるHTC Viveを発売した。

これらはPlaystation VRと同じヘッドセット型端末であるが、PC上で動作する点が異なっている。米ゲームメーカのstreamが発表したデータによると、2016年4月~6月のVR端末シェアはHTC Viveが66%、Oculus Riftが27.75%であり、この時期のHTC Viveの推定販売台数は約10万台であることから、現時点の世界でのVR端末販売台数は月間3~4万台であると推定される。

ハードからネットワークへの収益シフトがおきているゲーム業界

このように各社がVR端末に力を入れる要因には、ゲーム業界の収益構造がハードウエア中心からネットワーク中心にシフトしていることがある。

ソニーの財務諸表を見るとそのことがよく分かる。2016年3月期決算のセグメント別売上において、Playstationが属する「ゲーム及びネットワークサービス」部門は、ハードウエアは前年同期比▲119億円の7218億円であった。対照的に、ネットワークは前年同期比+1,778億円の5293億円とネットワークが大きな伸びを見せた。

また日本のゲーム市場全体でもハード、ソフト市場は3602億円なのに対し、オンラインゲーム市場は9989億円とハード、ソフト市場の2.7倍の規模となっている。現在のゲーム市場は完全にネットワーク上のオンライン市場が牽引しており、有力なハード、コンテンツを導入してこの市場を活性化していくかが鍵となっている。

コンテンツ、ストリーミングとの相乗効果が狙いか

ゲーム市場がネットワーク上のオンライン主導になっていることを前項で述べたが、ハードウエア端末であるPlaystation VRを導入することでオンライン市場をどのように攻略していこうとしているのだろう。筆者は、「スマホゲームとの差別化」「コンテンツとの相乗効果」「映像配信への可能性」の3点がキーワードと考えている。

まずPlaystation VRが持つ臨場感は、スマホゲームでは絶対に得られないものだ。この臨場感はスマホゲームとの差別化要素である。

ローエンドがスマホに代替された代表的な市場としては、デジタルカメラ市場があるが、カメラ映像機器工業会(CIPA)発表のデータによると、レンズ一体型デジタルカメラの市場は2008年の約160億円から、スマートフォンの普及により2015年は約30億円まで縮小している。一方、一眼レフカメラの市場は年間50億円前後をキープしている。ゲーム機市場も同じようにスマホゲームと差別化された高度なゲームは市場が残ることが予想される。
またVR端末はコンテンツ自体の価値も上げることで相乗効果が見込める。大手ゲームコンテンツメーカーカプコンで開発事業を統括する竹内常務執行役員も「VRゲーム市場という新たな大海原に漕ぎ出す」と述べており、大手ゲームコンテンツメーカーはVRゲームに注力している方針が伺える。

実際に、2016年11月にはスクエア・エニックス社から「ファイナルファンタジー」のVR版、2017年1月には「バイオハザード」のVR版が発売される予定であり、これらの有力コンテンツが好調な売上を上げれば、他のコンテンツメーカーの開発も加速することが考えられる。

さらに、Playstation VRがもつド迫力の臨場感は、新たな映像配信ビジネスへの可能性も感じられる。例えば、映画館でアーティストのライブ配信やスポーツイベントのパブリックビューイングが行われているが、Playstation VRを使うことで、家庭にいながらしてライブやスポーツイベントを楽しむ使い方が考えられる。

NTTデータは2017年からプロ野球東北楽天イーグルスにVR技術を活用した選手のトレーニングシステムの提供を開始する。野球以外にも、ゴルフやテニスのトレーニングといったスポーツ分野。また、車や飛行機の運転トレーニングのシミュレーターといった分野でVRを活用する可能性が考えられる。

市場の発展にはオープンなプラットフォームが重要か

このようにPlaystation VRには様々な発展可能性が考えられるが、どれもハードウエアだけではなく、良質なコンテンツがあることが重要である。いいかえると、Playstation VRはインフラに過ぎず、そのインフラの上でどれだけ上質かつ多様なコンテンツが流通するかが、Playstation VRの成功の鍵だろう。今後の各メーカーの動向に注目したい。(ZUU online 編集部)

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