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(写真=PIXTA)

米国大統領選挙は、事前の予想を覆し共和党のドナルド・トランプ氏が勝利した。世界中が驚きと困惑をもってこの結果を受け止める中、ここでは世界のIT産業に与える影響について考えてみる。

既にIT産業からは懸念の声があった

実は大統領候補者指名をトランプ氏が受ける前の7月の段階で、米国のIT産業の著名人150人が「トランプ氏はイノベーションに対して悪影響を与える」と公開書簡を出していた。トランプの過激な主張と攻撃的な態度を考えれば、IT産業に対する悪影響は避けられない、との内容である。

ただしこの書簡を公開したメンバーには、いわゆる大手IT企業の人物はほとんど含まれておらず、公開書簡に携わったメンバーも「自分が所属する組織としての立場を代表するものではない」としていた。つまりIT業界は明確かつ統一された態度を示していなかったと言える。

TPPへの強硬姿勢と就労ビザ問題が懸念材料

周知のとおりトランプ氏は、特に移民問題に関しては過激な主張を行い、不法移民者1000万人以上を米国から追放するとし、その不法移民者の多くの出身国である隣国メキシコとの国境との間に、密入国を防ぐための「壁」を作るなどの過激な主張がなされた。しかしこれはかなりの部分で非現実的な話であり、公約が果たせなかったとしても批判する声は少ないと思われる。

むしろTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に対する反対の立場や、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しまで口にするなど、経済に関する孤立主義を主張していた部分が注目される。TPPにはIT産業が絡む部分は少ないと考えられているが、Googleなどが加盟するインターネットアソシエーションでは「TPPは米国の輸出にとって重要であり、TPPの批准はIT産業育成につながる」と声明を出していた。

またTPPとIT産業との絡みで重要な点は、著作権管理の手法の部分にある。TPPの合意書の中で「著作権法違反に対しては原則非親告罪とし、例外的に親告罪として認める」とされている部分である。インターネットをはじめとするIT産業では知的財産を重要な商材として扱う以上、著作権の扱いは極めて重要である。TPPによる著作権問題は、どちらかといえば映画や漫画といったエンターテイメント分野で語られる機会が多いが、IT産業でも死活問題と考えて差し支えない。

そのTPPに関して一貫して反対の立場を取り、それを選挙戦で主張してきた以上、トランプ氏が大統領になった際にTPPはどうするのかという問題は、残り少ない任期の中でオバマ政権がTPPに批准するかどうかは不透明なだけに、IT産業にとっても重要な問題となる。

実はトランプ氏は選挙戦の中で、自国のIT産業に関する特段の発言をしていない。数少ない例外として、米国国内のIT企業がコスト削減を目的とした従業員の「置き換え」に使われる就労ビザの乱発に対して反対を表明したことがあり、同じ主張をしていたサンダース氏(民主党)と同様一定の支持を得た。

もっとも、IT産業の中心地であるシリコンバレーが存在するカリフォルニアは伝統的に民主党が強く、トランプにとっては「敵地」に関する発言ということには注意する必要がある。

選挙戦の最中にトランプ氏が発言した「IT産業の雇用問題」の具体例はこのくらいであるが、移民問題に対して大きく動くと仮定すれば、この部分にもメスが入れられる事は十分に考えられる。

非現実的な公約の反面、現実論者としての期待も

トランプ氏は政治家としての経験が無いため、その実務能力はまったく未知数という部分がある。世界有数の大富豪として財を築いた不動産の知識はあるが、IT産業を含む他産業の経済知識もまた未知数である。

トランプ陣営は来年1月の大統領就任に向け組閣を行うが、かつてジョン・F・ケネディ大統領がフォードの社長就任間もないロバート・マクナマラ氏を(国防部門の合理化という目的で)国防長官に指名したように、経済閣僚やブレーンにIT産業の経営者、もしくは有識者を入れるという可能性もあるのではないだろうか。これまでも常識破りの行動をとってきたトランプ氏なら、そのような事も考えられなくはない。

選挙戦中に、一部の企業を除くIT産業に対し具体的な姿勢を見せていなかったため、IT産業としては自らにどのような影響があるのかを見守るしかないという「待ち」の状態にあることは間違いない。

しかし不安要素はあるものの、過去何度も破産の経験を経て、現実的にビジネスを立て直すという手法で何度も立ち上がってきたトランプ氏が、国益を大きく損ねるほどの規制を経済分野に科すという事は考えにくい。

むしろ自分の専門分野ではないからこそ、IT分野に関しては現実的、かつ継続可能な対応を取ってくるのではないだろうか。

IT産業に対する影響は、先述の技術者就労ビザの問題を除けばそれほど大きくない……とここでは想定できるが、まずは組閣に注目したい。(信濃兼好、メガリスITアライアンス ITコンサルタント)

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