- 高額療養費について
それでは自己負担の部分は必ず支払わなければならないのか。ここで知っておくべきなのが「高額療養費」という制度だ。筆者も入院のとき、高額療養費制度を知ることができたがために、支出を抑えることができた。最近は医療保険の保険料削減の流れから、制度の知名度も上がってきたが、実際に病院で制度を知らされて利用する人も多い。もちろん病院が高額療養費について患者に伝える義務はないため、自身で把握することが大切だ。
高額療養費制度とは所得金額に応じて、医療費が一定額以上かかった場合に、一部が還付される制度です。この医療費の計算は1か月ごとに行う。収入に応じての上限額は以下の4パターン。幅広い所得層が保障されている。
所得区分/1か月の自己負担額
ア 標準報酬月額83万以上/約25万2600円
イ 標準報酬月額53万~79万/約16万7400円
ウ 標準報酬月額28万~50万/約8万100円
エ 標準報酬月額26万以下/約5万7600円
この標準報酬月額とは、毎月の基本給や交通費など、会社から支給されているお金を1か月に平均した時の金額だ。1年のうち4月、5月、6月の所得から算出する。このうえでウに該当する人は、1か月間の合計の医療費が20万円かかったとしても、8万100円までの自己負担でいいということになる。ちなみにこの自己負担額は、入院と通院は別枠で判断されることに注意が必要だ。
病気をした年の年末になって、年末調整や確定申告時にメリットの生じる制度もある。それが医療費控除だ。1月1日から12月31日までのあいだに自分または生計を一にする家族、ほか親族のために医療費を払った場合は、次の計算式で計算した金額が所得控除となる。最大は200万円だ。
実際に支払った医療費の合計額-(1)-(2)
(1)保険金などで補てんされる金額(健康保険からの高額療養費や家族療養費も含む)
(2)10万円(その年の総所得金額が200万円未満の人は、その5%)
参考(国税庁): http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1120.htm
これらは控除希望者が申請しないと適用されることはありません。忘れずに制度を利用するようにしたい。
「慌てない」ことが大事
以上、突然の入院になったら確認する「医療費補助制度」についてまとめた。医療費のお金まわりはとても大事なことだが、自分自身で情報を集めないと思わぬ情報格差が生じる部分でもある。そして大切なのは、何よりも「慌てないこと」。保険金の請求のようにすべきことを順序立てて、取り組むようにしたい。それが何よりも、病気をしたという緊急事態から、迅速に日常に戻ることにも繋がるのではないだろうか。
工藤 崇(くどう たかし)
FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じ、Fintech領域のリテラシーを向上させたい個人や、FP領域を活用してFintechビジネスを検討する法人のアドバイザーやプロダクト支援に携わる。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居。執筆実績多数。
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