2016年のマーケットは、英国の国民投票でEU離脱派が勝利したり、トランプ氏が米大統領選挙で勝利を収めるなど、まさに波乱続きの展開となった。そんな2016年も残すところあとわずかだ。
残す12月から年末にかけてのマーケットだが、重要イベントがいくつか控えているうえに、米大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降マーケットの変動も激しくなっているためまだまだ気を抜けない展開となりそうだ。今回は12月の日米マーケットのみどころについておさらいしていこう。
FOMCの前哨戦:米雇用統計
12月2日には米国の雇用統計の発表が予定されている。為替相場は12月の利上げを織り込みにいっておりドル独歩高の状態となっているが、12月中旬開催予定のFOMCの結果を占ううえで2日の雇用統計は注目度が非常に高い。マーケットでは12月の利上げがコンセンサスとなっているため、雇用統計の結果が悪く利上げの根拠を揺るがすような事態になれば為替相場は激しい値動きとなる可能性があるため注意が必要だろう。
現時点では11月に発表された10月の雇用統計よりも非農業部門雇用者数は回復すると予想されており、まずまずな、内容になるとみられている。注目すべきポイントは非農業部門雇用者数だけではなく、平均時給の伸び率も注目すべきポイントの1つだ。賃金が増加すればインフレにつながり、利上げをサポートする材料となると考えられている。そのため米金融当局は賃金の伸び率にも注目しており、利上げの行方を占ううえで賃金は重要な要素となっている。
雇用統計の内容が良ければ12月利上げは確実とみて一気にドル高が進む可能性も考えられる。FOMCの前哨戦として、雇用統計は要注目だろう。
年内利上げはあるか「FOMC」に注目
12月で最も注目されるイベントは間違いなく13日から14日にかけて開催されるFOMCだろう。前回利上げに踏み切ってからちょうど1年の節目となり、米金融当局が利上げに踏み切るのか注目される。
FOMC関係者は利上げに積極的な発言を繰り返しており、市場はすでに年内利上げを織り込む展開となっている。逆に言えば、利上げが見送られることになれば想定外の事態となり、ドルの急落や金利の急低下を招く可能性がある。現在の為替市場や金利はドル独や長期金利の急上昇など一方的な展開となっており、ややオーバーシュート気味という印象がある。これが一気に巻き戻される展開となれば、市場が荒れる可能性が高い。
また、大方の見方通り利上げが実施されたとしても材料出尽くしで相場の流れが変わることはよくあるため、FOMC前後にはポジションサイズを落とすか様子を見たほうが安全だろう。
トランプ次期大統領の発言には要警戒
米大統領選以降、世界の金融市場にはトランプ旋風が吹き荒れた。ドルや金利の急上昇や株高など、市場のボラティリティが一気に高まった。来年1月に正式に大統領に就任する予定だが、既にトランプ氏の政策に注目が集まっている。
トランプ氏の基本政策は減税とインフラ投資である。どちらも株式市場にとってはプラス要因となるが、財政悪化は避けられない。そのため、米国10年国債の金利は急上昇する展開となっており、その影響を受けて新興国市場が下落している。また、インフラ投資による資源需要の拡大を見越して銅価格が急騰するなど商品市場にもその影響は及んでおり、まさにトランプ氏の一挙手一投足が市場に大きなインパクトを与える展開となっている。
しかし、トランプ氏は当選後に選挙期間中の過激な発言や公約を一部訂正しており、既に政策内容に見直しが入っている。政策が大きく変わる可能性は非常に低いが、政策が修正されればその政策に期待して上昇してきたマーケットにとっては大きな不安材料となる。また、中国など新興国市場はトランプ氏の貿易政策に対する懸念の影響を受けており、今後もトランプ氏の発言により新興国市場が大きく変動する可能性もある。そのため、大統領就任前とはいえトランプ氏の発言には要警戒だろう。
日銀の金融政策決定会合
FOMC後の12月19日から20日には日銀の金融政策決定会合が予定されている。日銀は金利を操作するイールドカーブコントロールを導入したばかりであるため、新たな動きがでる可能性は低くFOMCほど注目度は高くない。しかし、世界的に長期金利が上昇する中で、日銀が日本の長期金利を0%付近で維持するという目標を維持するのか、それとも修正するかには注目だろう。
トランプ氏が大統領選で勝利して以降、世界的に長期金利が上昇しているが、日本の長期金利の上昇は小幅にとどまっている。これは日銀がイールドカープコントロールを導入しているためだ。しかし、長期金利の上昇が続けば日銀は際限なく国債を購入する必要が出てきてしまう。仮に日銀が目標を修正すれば日本の金融緩和政策が節目を迎える可能性もあり、長期金利の急上昇や急激な円高になる展開も予想される。現時点では現状を維持すると思われるが、気にかけておいて損はないだろう。(アナリスト 樟葉空)
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