年末年始にかけてFPである筆者に保険の相談を頂く機会が増える。年末調整を通じ、一年で払った保険料総額を改めて確認することになり、本当に自分に合った保険なのか考える機会があるからだろう。

生命保険には定期保険と終身保険がある。自分にとって必要な保障はどちらなのか、これはライフステージによって変わる。定期が良いか終身が良いか、一緒に考えていこう。

定期保険と終身保険の違い

生命保険とは、死亡時に保険金が受取れる保険だが、保障する期間によって「定期保険」と「終身保険」の2種類がある。

定期保険は期間限定の保障で、10年間とか60歳までとか、期間を定めておく。そして、もしもその間に亡くなったら、遺族が保険金を受け取れる仕組みだ。期間が過ぎれば保障は無くなり、保険金は受け取れない。そのため、「掛け捨て保険」とも言われる。保険料がもったいないようだが、子どもなどを養っている家族がいる場合は加入しておく必要がある。保険料は終身保険に比べて割安なので、万が一の場合でも、遺族が生活に困らないようにしておくためには、入っておきたい保険だ。

終身保険は、一生涯の保障が続く。死亡しない人はいないので、解約せず続けていれば、遺族は必ず保険金が受け取れる。通常、払い込んだ保険料よりも受取る保険金のほうが高額になるので、「貯蓄性のある保険」とも言われる。掛け捨てではないが、保険料は定期保険よりも高い。葬式代などを目安に保険金額を設定するのが合理的だ。生命保険は、定期保険と終身保険を組み合わせると無駄が無く加入できる。では、ライフステージごとに、必要な生命保険を見ていこう。

シングル
加入例:25歳男性/終身保険300万円

養う家族がいない独り身であれば、掛け捨ての定期保険は不要だ。お守り代わりに契約するくらいなら、その分を貯金や投資にまわしたほうが、ずっと生きたお金の使い方になる。生命保険に入るのであれば、葬式代程度の終身保険だけにするのがおすすめだ。

夫婦共働き・子なし
加入例:30歳男性/定期保険1000万円/終身保険300万円

夫も妻も同じくらいの収入があれば、養っているわけではないので、定期保険は不要と言える。しかし、家族の姿は時間とともに変わるものだ。子どもが生まれたら、その後の働き方をどうするのかは考えておきたい。妻が仕事をセーブするなど、家計の収支が大きく変わりそうなら、それを見越して定期保険に入っておくと良いだろう。保険は、加入する年齢・性別・健康状態・職業などで保険料が変わるが、大きな病気をした場合などは入れないこともある。ライフプランに応じて早めに保険に入るのも一案だ。

文部科学省の調べによれば、子どもの学費はすべて公立でも700万円かかる。緊急予備資金とあわせて1000万円程度の定期保険なら保険料も安く抑えられ、マイホーム資金などの貯金もしやすいのではないだろうか。

夫婦共働き・子ども1人
加入例:35歳男性/定期保険3000万円/終身保険300万円

夫婦協力して仕事も育児もする。そんなスタイルの家庭が増えている。しかし、もし一人になってしまったら、それまでの生活は一変するだろう。

家計も大きな変化を余儀なくされるが、子どもが18歳の年度末までは遺族基礎年金が受取れる。金額は基礎年金が78万100円+子の加算22万4500円で、年間100万4600円。月額にして8万3716円だ(平成28年4月分から)。育児をしながら、月10万円でも働けば、生活費はなんとかなるのではないだろうか。

すると、保険で準備するのは、子どもの学費の700万円と住宅費になる。親子で住める中古物件が購入できる程度あれば安心だろう。マイホームを購入したら、団体信用生命に加入するので、住宅分の保険は不要になる。その時は生命保険の見直しも忘れずに行って欲しい。

シングル・子あり
加入例:35歳男性/定期保険1500万円/終身保険300万円

離婚や死別で、シングルになった親が子どもを育てていると、毎日が忙しくて保険のことはつい後回しにしてしまうかもしれない。しかし、親に万が一のことがあれば、子どもはどうなるのだろうか。

万が一の場合、子どもも遺族年金を受取れる。金額は78万100円なのでひと月あたり6万5008円。祖父母が養育するとしても年金があると心強い。ただし、年金は18歳の年度末までだ。本人が希望すれば大学進学までできるよう、22歳までの学費と生活費分を保険で準備しておきたい。

そして、子どもにも必ず伝えておくことが大切だ。万が一の場合でも、保険金があるから進学をあきらめなくていいのだと話しておき、保険証券の場所もわかるようにしておこう。

妻が専業主婦・子なし
加入例:40歳男性/定期保険4500万円/終身保険1000万円

子どもがいない場合でも、妻が専業主婦なら生活費の用意をしておきたい。遺族基礎年金は子どもがいないと受取れないので、老齢年金の給付までの生活費の保障は必要だ。さらに、老後資金の貯金ができないことを考えると、その分も準備しておきたい。終身保険の保険金を多くしておくと、必ず受け取れるので安心だろう。

死亡保障である生命保険は、「何に使うお金を遺すのか」と考えれば、期間と金額がおのずと決まってくる。子どもの学費なら大学卒業までの期間と学費分、家族の生活費なら妻が老齢年金を受取るまでの期間で、金額は遺族年金では足りない分とするのが基本だ。自分にとって必要な保障を明確にしないと、保険の営業マンの言いなりになりかねない。

上記の例を見てお判りいただくように、「定期か終身か」という観点ではなく、ライフプランによって、定期だけにもなるし、終身だけにもなるし、それをミックスして加入する必要もあるということだ。ぜひ、自分が主導権を持って保険の見直しをしていただきたい。

タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)36歳の時に2人の子をつれて離婚し、大手生命保険会社に営業として就職。そ の後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを発症。現在はがんとお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録FP

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