ロシア政府は12月7日、国営石油会社、ロスネフチの持ち株19.5%を、スイスの鉱山開発及び商品取引会社、グレンコアとカタール投資庁に売却すると発表した。

ロシア政府最大の株売却となる今回の取引は、自国の財政赤字穴埋めに向けた動きの一環である。この取引が両国間の関係改善に一役買うとの期待が高まる一方、ロシア政府とグレンコアが発表した取得金額に食い違いが生じるなど、不透明な空気もただよっている。

食い違う取得割合 カタール投資庁は沈黙

売却計画が進められていることは、今年9月、ブルームバーグ紙の取材に応じたウラジーミル・プーチン大統領の発言から明らかになっていた。プーチン大統領は「適当な戦略的投資家」を物色中であること、年内には売却実現の可能性があることなどを認めていた。
ロシアは原油安の打撃で財政赤字が膨張。「不必要に保有している大量の株」を処分し、「ロシア経済と国家に最大の利益を生みだす」手段として、ロスネフチ株の売却に踏みきった。

グレンコアとカタールにとっては、ウクライナ危機をめぐる欧米からの対口制裁のリスクよりも、世界最大の規模を誇るロスネフチ株の保有の方が魅力が高いということだろう。折しもトランプ氏勝利後、ロシアに対する経済制裁解除の可能性が高まっている。

その一方で、今回の取引に関する不透明さも指摘されている。ロシア側がグレンコアの取得額を最低50億ユーロ(約6071億2080万円)と発表したのに対し、グレンコアは3億ユーロ(約364億2724万円)と発表。自社にとって最大の投資者であるカタールの取得額を102億ユーロ(約1兆2385億円)としている。現時点ではカタールが沈黙を守っているため、確認はとられていない。

ロイター通信のデータによると、ロスネフチの時価総額は591億7000万ドル(約6兆7690億円)。取得の割合がどうであれ、市場価格より2%低い価格で取引が行われたということだ。

クレディスイスを始めとする国際大手企業の大株主であるカタールにとっては、ロシア進出の絶好のチャンスとなる。またグレンコアはロスネフチ株取得とともに、日量22万バレルの取引に参入する権利を得、日量18万バレルという既存の契約に上積みすることが可能となる。(ZUU online 編集部)

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