政府と経済界が連携し、消費拡大策を検討している。日本経団連らが立案した「プライムフライデー」構想だ。これは、月末の金曜日の仕事を午後3時などで切り上げてもらい、余暇を消費に当ててもらおうという試みである。経団連は11月24日に行われた記者会見の中で、来年(2017年)2月24日から「プライムフライデー」を開始する方向で調整していることを明らかにした。
本家は米国の「ブラックフライデー」
そもそも、このプライムフライデーの原型となったのは、米国の「ブラックフライデー」である。
これは、同国の感謝祭が毎年11月の第4木曜日に開催され、その翌日から小売店が一斉にクリスマス商戦に向けた値下げを始めることに因んでついた名前である。「ブラック」の意味は、セール品に群がる人の頭を表したものだとも、小売店がこのイベントで黒字になるからだともいわれる。
実はこのイベントはお隣・韓国で、昨年(2015年)すでに先行導入されている。「コリアグランドセール」がそれで、大手百貨店などが中心となり、10月1日から2週間実施された。
今年のブラックフライデーはそれぞれ、どのような状況なのだろうか。米国では最近、セールの開始をフライデーではなく、感謝祭当日(今年は24日)に前倒しをする動きが出てきている。また、これまでネット通販では「サイバーマンデー」といって、感謝祭が終わった翌週の月曜日からセールを始めるのが一般的だったが、今年はウォルマートのネット部門がブラックフライデーから値下げをスタートするなど、各社とも値引き合戦の様相を呈しつつある。
対する韓国のコリアグランドセールについて、今年は9月29日から10月31日までの約1ヶ月間に渡って行われた結果、参加企業の売り上げが対前年で約10%の伸びを示した。中でももっとも伸びたのは免税店で、対前年23.2%の増加となった。その売り上げ寄与度のうち、中国人が64.5%と高い比率を示した。
もともと、コリアグランドセールをこの期間に定めたのは、中国の国慶節(建国記念日)が10月1日にあることを計算してのことである。この時期に中国では1週間程度休みになるところが多いため、中国人観光客を意識した日にち設定が功を奏した形となった。
韓国のブラックフライデー導入は成功事例だといえそうだが、それでも結局のところ、米韓ともに「ブラックフライデー=安売り」であることには変わらないという課題が残る。
プライムフライデーを待ち受ける難問
日本でこのイベントを導入することになった背景から見ていくことにしよう。ことの発端は、安倍首相が昨年9月の記者会見で、「GDP600兆円実現」を目標に挙げたことから始まる。
この目標に対して経団連は、「現在約300兆円にとどまっている個人消費を360兆円程度まで引き上げることが必須」という見方を示している。今回のプライムフライデーは、この「個人消費を押し上げるための対策のひとつ」として提案されたものである。
日本がこの企画の実現にこぎつけるためには、解決しなければならない問題がいくつかある。
その中でも、もっとも大きな問題とは、従業員を早上がりさせることに伴う勤務時間の減少である。仮に月給制の人は下げなかったとしても、時給計算で働いている人に関しては、その分給料を下げざるを得ない。給料が横ばいか下手をしたら下がるような状況の中で、果たして「プレミアムな消費など起きるのか?」という疑問が残る。
このイベントには、他にも「プライムフライデーの提供者側であるサービス業に従事している人はどうなるのか?」「月末の一番忙しい時期に、早上がりは実現可能なのか?」「そもそもどれだけの企業が実施に移せるのか?」などといった声も挙がっている。日本での導入開始まで残り3ヶ月を切る中で、これらに対する対応策は依然示されていないのが現状だ。
プライムフライデーが成功する確率についてだが、残念ながら可能性は低いのではないだろうか。そもそも、毎月か隔月で回ってくるプライムフライデーにはあまりイベント性がない。イベントには、お祭りムードが不可欠である。人は、理由もなく時間だけ与えられても、それだけで「贅沢をしよう」という気にはならない。先ほどもいった通り、収入も増えず、お祭りムードもない中では、消費はおきにくいのが現実である。
「プライムフライデー」を自分のために活かす
それでは、プライムフライデーが実際に行われた場合、これをどう活用すればいいだろうかを考えてみよう。筆者からの提案は、「普段できないことをする」ということである。
平日の午後といえば、通常は社内で仕事をしていて、外を出歩くこともあまりない人が多いだろう。だからこれを「貴重な勉強するための機会」と捉えて、普段できない体験や勉強に当てるなど、「自分の時給を上げるための活動」に費やすことである。いずれにしても、ぜひあなたなりの有意義な過ごし方を見つけていただきたいと思う。
俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。
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