交通費,プロ野球
(写真=PIXTA)

福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手が12月8日、契約更改を行った際、契約交渉の席で和田投手は、オフシーズンの自主トレを支えてくれる裏方スタッフの交通費について球団に改善を求めたと報じられた。一般に仕事にかかった交通費は会社に請求できるものだろう。プロ野球は特殊なケースなのだろうか?

裏方スタッフの交通費は是か非か

プロ野球選手の自主トレは、打撃投手やブルペンピッチャー、トレーナーなどの裏方スタッフなしでは成り立たない。であれば裏方スタッフの交通費も必要経費として出そうなものだが、実はそうではない。

なぜなら野球協約173条には「球団又は選手は、毎年12月1日から翌年1月31日までの期間においては、いかなる野球試合又は合同練習あるいは野球指導も行うことはできない」とあるからだ。オフ期間中の活動に球団から交通費を支給することは協約に違反するのでは、という意見も多い。

ただし173条では、「選手が球団の命令に基づかず自由意志によって基礎練習を行うことを妨げない」ともしており、選手個別の自主トレについては禁じていない。

とはいえ、参加するスタッフは自由意思かというと、そうとも言い切れないだろう。参加せざるを得ない環境にあるならば、それは「仕事」であり、「仕事」であれば交通費の支給は当然なのではないかという見方もできる。

この問題についてはさまざまな意見が出ているが、和田投手が野球協約のグレーゾーンに一石を投じてくれたことは間違いないだろう。どのような世界で働く人にとっても、交通費というのは身近な問題だ。

通勤手当の非課税限度額は15万円

一般的な会社員の交通費について見ていこう。仕事に関わる交通費といえば、毎日の通勤費、営業先や出張先への交通費などが挙げられるが、交通費の上限について考えたことがあるだろうか。

あなたのひと月の通勤費はどれくらいだろう。2016年度の税制改正により、サラリーマンの通勤手当の非課税限度額が引き上げられた。交通機関を利用して通勤している人の最高限度額は1カ月あたり10万円だったが、改正により15万円となっている。

非課税限度額が10万円、15万円と言われても、正直なところあまり現実味が感じられない。ちなみに、東京駅までの新幹線通勤を仮定した場合、ひと月に15万円使うとなると東海道新幹線では静岡駅、東北新幹線では新白河駅、上越新幹線では越後湯沢駅までが通勤可能圏となる。

非課税限度額を引き上げた背景には、東京への一極集中緩和という目的がある。都心に通勤する人の住まいを地方に分散することで、一極集中を解消していこうというねらいだ。ただ、いくら非課税枠が広がったと言っても、新幹線を使って遠距離通勤をする人が続出するとは考えにくい。

交通費の支給限度額は就業規則による

そもそも交通費支給の基準や限度額については、それぞれの会社の就業規則で定められている。通勤手当の上限がない会社もあれば、支給されない会社もある。

2016年9月、ヤフー <4689> は月額15万円までの新幹線通勤補助制度を導入することを発表した。地方に住むことで生活費が抑えられるほか、実家での介護と仕事との両立を可能にすることができるとしている。

大手を中心に一部の企業ではこういった取り組みが増えることは予測できるが、多くの企業ではそうもいかないだろう。税制改正で非課税限度額が15万円になったといっても、それぞれの会社の支給限度額が15万円になるわけではない。

会社に制度がなければ、新幹線通勤は難しい。身銭を切ってまで地方に住むメリットが少ないからだ。とは言うものの、税制改正によって選択肢が広がったのはいいことだ。転職先を選ぶ条件に、「通勤手当の充実」を挙げる人が増える日がくるかもしれない。

政府は地方分散を進めようとしているが、逆方向の取り組みをする企業も増えている。代表的なのがサイバーエージェント <2641> の「2駅ルール」だ。

同社ではオフィスの最寄駅から2駅圏内に住んでいる正社員には、ひと月に3万円の家賃補助制度が適用される。社員は通勤ストレスから解放されて仕事に集中できるし、会社としても通勤交通費や深夜タクシー代の節約になるという。非常に合理的でわかりやすい制度だ。

交通費から見える未来

将来的にはテレワーカーの数が増えるなど、国内企業の雇用形態の多様化が予想される。毎日出勤する必要がない社員が増えることで、交通費という概念も大きく変化していくだろう。

どこに住んでどんな仕事に就くのかは、本人の意思で決定することだ。会社という組織に属するのなら、その組織の規則に則った恩恵を受けることができる。交通費にも会社によってさまざまな規則や考え方がある。そういった視点から見つめてみることで、これからの働き方、新しい住み方を発見できるかもしれない。(ZUU online 編集部)

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