家計の大掃除,ボーナス
(写真=PIXTA)

年末は家計を大掃除するチャンスだ。普段こまごまと家計簿をつけるのがおっくうでも、年に1回1日だけ家計を整理する時間を取りたい。そこで紹介したいのが、企業の決算で使われる「貸借対照表」や「損益計算書」の概念をつかった家計の整理だ。

貸借対照表はバランスシート(B/S)と呼ばれ、手持ちの資産や負債の状況を表す。損益計算書は年間収支表に該当し、収入の支出のバランスを表す。ムダな支出を抑え、有効な投資方法を探るのに役立つ。

企業同様、家計も現状を正しく把握することが大切だ。特に共働きの場合は財布が一元化されていないため家計全体が見えていないことが多い。「収入は悪くないのになぜか貯蓄がすすまない」「何にどのくらいお金を使っているのか分からない」状態なら、ぜひ試してもらいたい。

家計のバランスシート(B/S)の作り方

家計のバランスシートを作成するには、「資産」と「負債」を把握する必要がある。アルファベットの「T」を書いて、左側が資産、右側に負債を入れていく。

家計における資産とは、普通預金や定期貯金などの「預貯金」、株や債券などの「有価証券」、ファンドや投信などの「投資信託」、学資保険や養老保険などの「貯蓄性保険」、外貨投資や商品先物などのその他の金融商品を指す。「土地や建物」など実物資産を保有している場合はそれらも資産に含める。

資産を把握するにあたり重要なのは「時価」であること。買った時の値段ではなく、いま現金化した場合の値段を採用する。金融商品であれば銀行や証券会社の口座を見れば分かる。保険は解約した際に戻ってくる返戻金のこと。土地や建物は不動産情報サイトや国土交通省の土地総合情報システムで概算を知ることが可能だ。

次は負債だ。住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、フリーローン、カードローン、分割払い等がこれにあたる。これらは借りているところに照会すればすぐにわかる。明細もしょっちゅう届くはずだ。

資産と負債が出そろったら、バランスシートを埋めてみよう。表の左に資産、右に負債を配置し、それぞれの合計額を出す。資産から負債を引いたものが、家計における「純資産額」になる。プラスなら財産だが、マイナスなら債務超過だ。

B/Sで投資方針とローンの見直し

バランスシートを作成することにより、財政がプラスかマイナスかはもちろん、投資方法のバランスも把握することができる。投資先がひとつの種類に偏りすぎていると、値下がり時のリスクが高くなってしまう。株式・債券・不動産はリスク分散のためにバランスよく配分したい。

また、ローンなどの有利子負債はなるべく早く精算することが鉄則だ。資産のすべてを売却しても借金を返せない状態なら債務超過である。債務超過に陥っているなら何よりも先に負債の圧縮を優先したい。特に金利の高いものほど先に終わらせておくべきだ。投資や貯蓄に回す資金があるなら、住宅ローンの繰り上げ返済に充てたほうが良い。

家計の年間収支書(P/L)の作り方

次は家計の年間収支書である損益計算書だ。損益計算書は「収入」と「支出」から成る。

収入は源泉徴収票や給与明細書を参照する。ここでは「もらった金額」ではなく、「使える金額」を把握することが重要である。源泉徴収票でいうと「支払金額」は「もらった金額」で、「可処分所得」は支払金額から社会保険料と所得税を差し引いた「使える金額」だ。所得税のうち住民税は源泉徴収票には記載されていないので、毎月の給与明細書を参考にするようにしよう。

収入には給与の他に雑所得や金融資産の配当・売却損益もある。もし売却損があるならマイナスの収入として記入する。副業などで収入がある場合はそれも加算する。

支出は家計簿をつけていれば年間支出を出すのもたやすい。食費・水道光熱・娯楽教養・保健医療・交通通信などの「基本生活費」のほか、住居費や教育費といった大きな支出の年間合計額を計算する。積み立てや個人の拠出年金などに使ったお金も支出に含める。

家計簿を付けていない場合でも固定費なら把握することは難しくない。住居費を知らない人はいないだろうし、口座引落やクレジットカード払いのものは明細が残っている。インターネットバンキングやWeb明細にしているならダウンロードしてエクセルで計算すると便利だ。

見落とされがちなのが、年に1回や数回といった頻度で現金支払いをする支出だ。自動車税や固定資産税がこれにあたる。NHK受信料や保険料の支払いを年払いや半年払いにしている場合も注意する。

残るは食費や娯楽などの変動費だが、家計簿がないと完全にカバーすることは難しい。少々横着だが、収入(可処分所得)- 貯蓄額 = 支出 と仮定し、支出から先ほどの固定費を差し引いた残りを変動費とする方法もある。たとえば手取り年収が800万円で住居費やクレジットカード払い、貯蓄費などを差し引いた額が300万円なら、それを把握できなかった残りの支出額とする。ひとまずはこの方法で構わないが、次回からは簡易で構わないので家計簿をつけることを推奨する。

収入と支出が算出できたら、年間収支書を完成させる。給与や雑所得から社会保険料・税金を除いた収入合計から、生活費や貯蓄費を合計した支出合計を差し引いた額が「当期純損益」だ。プラスなら利益をどう活用するか、マイナスなら節約や収入増の対策を考える。

P/Lで収支のバランスやボーナスの使い道を検証

年間収支書を作成すると、単に家計がプラスかマイナスかだけでは見えないことが見えてくる。たとえばある家計では年間収支はプラスだが、実は給与収入に対する支出はマイナスで、投資成績が良かったおかげ強引に黒字なったというケースがある。企業でいうと本業の営業収益は赤字でおまけの営業外収益でもうけているようなものだ。しかし来年も同じようにうまくいくとは限らない。早々に支出の抑制か収入アップを促したい。

ボーナスの使い道にも注意が必要だ。月々の収支がマイナスなのに、それをボーナスで補っている家庭は多い。賞与の支給額については景気や業績によってここ数年上がったり下がったりが続いている 。確実性のないものを当てにするのは避けたい。ボーナスは家具や家電、海外旅行など「特別な支出」用にして、平時の家計の損失補てんに使うのはやめるのが得策だ。

以上、B/S・P/Lを使った「家計の大掃除」について解説した。住居の清掃同様、家計の掃除はやってみると非常にすっきりする。仕事と違って多少アバウトでも構わないので気分も楽だ。年末までに終え来年の方針が決めておくと、新年は良いスタートが切れるかもしれない。(篠田わかな、フリーライター)

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