2017年の物色テーマは? 需給環境は極めて良好

需給面では、日本株最大の売買主体である海外投資家が再び日本株の買い手として存在感を示してくる可能性が高いとみている。背景には、(1)トランプ氏の大統領選勝利を受けて始まったグレート・ローテーションの継続、(2)企業業績の改善、(3)原油市況の回復、(4)歴史的に低水準な外国人の先物ポジションの積み増し余地、などが挙げられる。2017年は海外投資家の買いが日本株の上昇を後押しすることとなろう。

一方、下値では日銀による年間6兆円規模のETF買いやコーポレートガバナンス強化の流れを背景とした事業法人による自社株買いの加速なども見込まれることから、2017年の日本株の需給環境は極めて良好とみることができよう。

2017年の物色テーマとしては、米トランプ次期大統領の経済政策を軸とした銘柄選定が有効となってこよう。このテーマに該当する銘柄の特徴としては、成長産業で稼ぐ企業というよりは、製造業・金融・資源・小売といった従来型の産業で、近年株価が相対的に出遅れていた銘柄が多いという点が挙げられる。このため株価水準が成長株と比べて低いものが多く、経済政策の効果が実際に業績に寄与してくることとなれば、株価が出遅れ修正の動きを強めるキッカケとなりそうだ。

日米金利差の拡大で「ドル高円安基調」が継続

具体的なテーマとしては、トランプ氏が政策として掲げる「インフラ投資」「環境規制緩和」「金融規制緩和」「高額個人消費」「米国内への生産回帰」「国防予算拡大・同盟国の防衛費負担増」など。米国企業だけでなく、日本企業でも恩恵を受ける銘柄が多いため、幅広い銘柄に投資機会が生まれることとなろう。

また、トランプ氏の政策である(1)経済対策、(2)財政赤字拡大、(3)移民・関税規制等をみる限り、米国はこれまでの「低金利継続姿勢」から「一定の金利上昇容認姿勢」に転換する可能性が高いとみる。このため、米国の金利上昇を通じて、「日米金利差拡大→ドル高円安基調の継続」となる公算が大きいだろう。その意味ではドル高(円安)による経常利益への好影響が大きい自動車や電子部品株などを評価する動きが強まりそうだ。

5つの「リスクシナリオ」にも注意が必要

トランプ氏が大規模な財政刺激策を行うとみられるなか、OPECによる原油減産合意、世界的な景況感の改善などを背景に、グローバル規模でのインフレ期待が高まりつつあることも見逃せないポイントだ。日本でも(1)円安、(2)資源高、(3)日銀の緩和姿勢継続、などにより足元で先々の物価上昇が見込まれる環境となってきた。世界的なリフレ期待を背景にその恩恵を受ける金融株や資源株、資源開発関連株などを見直す動きが強まりそうだ。

リスクシナリオとしては、(1)トランプ大統領の保護貿易政策の具体化(NAFTA撤退や関税引き上げ等)、(2)米金利上昇に伴う新興国からの資金流出懸念の拡大、(4)フランス大統領選やドイツ総選挙などの欧州政治イベントの波乱、(5)原油価格の急騰もしくは急落……等が挙げられよう。こうしたリスク要因が顕在化した場合、日経平均株価は1万8000~2万円のレンジ相場になるとみている。

石黒英之 大和証券 投資戦略部 シニアストラテジスト
専門商社勤務を経て2004年に岡三証券に入社。入社後は渋谷支店で個人営業に従事。2006年岡三経済研究所経済調査部(現:岡三証券 グローバル金融調査部)を経て、2008年岡三証券投資戦略部日本株情報グループに配属。2016年4月より現職。

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