シンカー:
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月からは物価の下落幅は縮小を始めており、
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月までには上昇に転じる可能性がある。ただ、持ち直しは鮮明となるが、年末までに+
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%程度まで上昇するのが精一杯だろう。日銀の目標である
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%までははるかに遠く、
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年内に日銀が長期金利の誘導目標を引き上げることはないと考える。長期金利の誘導目標引き上げの前倒しの必要条件は、コア消費者物価指数の前年比が
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%を超えること、そして日銀短観での企業のドル・円の想定レートが
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円を超えることであると考える。それらが満たされるのは早くて来年
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月期であり、
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年には黒田日銀総裁は任期末である来年
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月までに長期金利の誘導目標を引き上げることができるような環境を整えることに注力することになろう。
12月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比-0.2%と、11月の同-0.4%から下落幅を縮小したが、10ヶ月連続のマイナスとなった。
年末商戦では、消費喚起のため、企業は低価格戦略を推し進めたとみられる。
12月のコアコア消費者物価指数(除く食料・エネルギー)は前年同月比0.0%(11月同+0.1%)となり、3ヶ月ぶりに上昇がとまった。
天候不順による生鮮食品価格の大幅な上昇が一服し、12月の消費者物価指数(総合)は前年同月比+0.3%と、11月の月の同+0.5%から低下した。
一方、労働需給は逼迫しており、総賃金はしっかり増加を続けている。
年末・年始の商戦の消費者の反応は良好であったとみられる。
今後は、賃金と比較し物価が弱い状況が実質賃金の上昇につながり、需要を回復させることが期待できる。
パートの時給の上昇は強くなっており、原油価格も持ち直している。
12月はエネルギー価格の上昇などがコア消費者物価をコアコア対比で押し上げた理由だろう(指数の四捨五入の影響が0.1ppt程度の上振れ要因になっているようだ)。
12月からは物価の下落幅は縮小を始めており、3月までには上昇に転じる可能性がある。
1月の東京都区部のコア消費者物価指数は前年同月比-0.3%と、12月の同-0.6%から下落幅が縮小し、下げ止まり感が出てきた。
ただ、持ち直しは鮮明となるが、年末までに+0.7%程度まで上昇するのが精一杯だろう。
循環的な景気回復モメンタムの高まりと、FEDの利上げを背景とした米国の長期金利上昇などにより、日本の長期金利のマクロ・フェアバリューはしっかりとしたプラスに上昇していくとみられる。
デフレ完全脱却の動きを確かにするため、日銀は国債買いオペを増額してでも、長期金利を誘導目標である0%に誘導し続けるだろう。
日米金利差の拡大と若干の追加的な量的緩和効果などにより、更なる円安の動きをもたらし、日本のデフレ完全脱却への動きのサポート要因になると考えられる。
日銀の目標である2%までははるかに遠く、2017年内に日銀が長期金利の誘導目標を引き上げることはないと考える。
長期金利の誘導目標引き上げの前倒しの必要条件は、コア消費者物価指数の前年比が1%を超えること、そして日銀短観での企業のドル・円の想定レート(現在は2016年度下期で103円)が120円を超えることであると考える。
それらが満たされるのは早くて来年1-3月期であり、2017年には黒田日銀総裁は任期末である来年4月までに長期金利の誘導目標を引き上げることができるような環境を整えることに注力することになろう。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト
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