IMF,世銀,世界経済見通し,トランプノミクス
(写真= chombosan /Shutterstock.com)

国際通貨基金(IMF)はトランプ大統領就任前に、2016年10月に発表した世界経済見通しの改定を行い、世界の経済成長率見通しを今年3.4%と据え置く一方、米国については2.2%から2.3%へと、軽微な上方修正を行った。来年2018年には、成長が2.5%まで伸びるとしている。

一方、世界銀行が1月10日に公表した最新の世界経済見通しはより慎重であり、世界の経済成長率の伸びを今年2.7%と見込み、昨年6月の2.8%から下げている。そうしたなか注目されるのが、世銀の米経済成長率予想が2016年通年の1.6%から、今年は2.2%に加速していることだ。

トランプノミクスの財政出動強化と減税を評価

世界銀行は、「米経済の成長加速が、その要因が拡張的財政政策であれ何であれ、世界経済全体を力強く後押しする可能性がある」と指摘しており、米経済がトランプ政権下でより大きな力強さを見せるという認識においては、IMFと一致している。

IMFも世界銀行も、1944年7月に米ニューハンプシャー州ブレトンウッズで開催された国際会議で設立された国連システムの中の姉妹機関であり、トランプ新大統領が破壊しようとしている戦後グローバル経済秩序の発展と維持に大きな役割を担ってきた組織である。そのIMFと世銀が従来支持してきた、新自由主義的な経済理論から大きく逸脱した「トランプノミクス」で米経済成長が上振れすると予測しているところに、時代の変動が表れている。

IMFは国際通貨協力を促進するとともに、加盟国が力強い経済を構築し維持できるよう、政策助言や技術支援を行う一方、危機で資金繰りに困った諸国に融資を行う。近年では、1997年から1998年のアジア通貨危機で韓国が融資対象になったことが記憶に新しい。

そのIMFのチーフエコノミストで米経済学者のモーリス・オブストフェルド氏は、世界各国の財政出動の理論的な支えとなっている「ニューケインジアン派」の信奉者であり、米経済成長予想を上方修正するにあたり、「トランプ政権のより拡大的な財政の可能性が、税制改革と相まって、米経済予測のアップグレードを正当化すると考えている」と、理由を説明している。

ちなみにオブストフェルド氏は、民主党のオバマ前政権で経済顧問を務めていたことがあり、マクロ経済学者や中央銀行エコノミストの間で主流となってきた財政出動論のリーダー格でもある。しかし、政治的立場を超え、トランプ氏の経済政策の将来性を評価している。

同時にIMFの予測は、「トランプ政権に代表される保護主義的な政策が広まれば、世界的に貿易を抑制し、成長率を下振れさせかねない」と警鐘を鳴らしている。

転じてIMFが予測する日本経済の成長率は、2017年が前回予想から0.2ポイント上方改定された0.8%となっている。米国と同じく財政支出の拡大効果が見込める中国は、予測を0.3ポイント上方修正し、6.5%とした。「米経済と並び、引き続き世界経済の牽引役になる」とIMFは見る。一方、欧州連合(EU)離脱で、経済低迷が避けられないとされた英国の成長率は0.4%ポイント上方改定された1.5%である。

全体的に先進国の成長率の上方修正が目立つなか、IMFはお隣の韓国に対し、政情不安定や経済先行き不安から、あえて予測をしなかった。韓国メディアはこれを、「IMFが事実上、前回の3.0%成長予測を下方修正し、2%台に引き下げたもの」として報道している。

新興開発途上国全体の今年の成長見通しも、4.6%から4.5%に引き下げられた。目立つのは、インドが7.6%から0.4ポイント下げた7.2%になったのをはじめ、昨年リオ五輪を成功させたブラジルが0.5%から0.3ポイント下落した0.2%と、ほぼ無成長になったことだ。今年は米連邦準備理事会(FRB)の利上げが複数回見込まれ、新興国から資本が米国に向け流出することも大きな原因だ。

先進国はやや成長加速、新興国は減速で、世界全体では据え置きという図式が見えてくる。

より慎重な世銀

各国の経済発展に役立つプロジェクト(例えば過去の日本の東海道新幹線建設など)に融資を行うのが主な役割の世界銀行は、2017年の世界経済の成長見込みを2.7%とし、IMFの3.4%に比べて、より慎重な見方だ。

まず世銀の報告書は、「主要国における財政出動、特に米国のそれは、予想を上回る国内成長とグローバルな成長をもたらす可能性がある」として、トランプ政権の経済政策を間接的に高く評価している。また、日本は消費増税の延期で、0.4ポイント加算の0.9%成長(IMFと同じ数字)に上方修正した。中国もIMFと同じく6.5%の成長を見込む。またブラジルは、資源価格の持ち直しなどでプラス成長に回復すると分析している。

世銀のジム・ヨン・キム総裁は、「世界経済の低迷が長く続いたが、ようやく成長加速の兆しが見えてきた」と述べ、「今こそインフラと人材への投資を増やすときだ」と、各国政府に財政出動を呼び掛けた。

しかし、世銀の報告書では、「主要国における政策の方向性の不確実性が、景気の見通しに影を落とす」「高まる保護主義が、世界経済の加速をダメにしかねない」とする見方が、IMFより強調されているのが特徴だ。世銀は、世界経済の不確実性をより重大だとみなし、IMFは楽観視するところが、全体的な数字の差になって現れたといえよう。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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