新興銘柄,投資,新興市場
(写真=PIXTA)

ドナルド・トランプ大統領が誕生して以降、精力的に大統領令への署名を行っている。その行動への期待から、米国の代表的な株価指数の一つ「NYダウ平均株価(以下、NYダウ)」は史上最高値を更新し、2万ドルの大台に乗せた。

さらに、インテルやマイクロソフト等多くのIT企業に加え中小企業やベンチャー企業も多く上場し、世界最大のベンチャー企業向け株式市場「NASDAQ」の指数である「NASDAQ(ナスダック)総合指数」も高値を更新中だ。

日本の代表的な株価指数と言えば日経平均株価が有名だが、NASDAQ総合指数に当たる、ベンチャー企業向けの株式市場や株価指数は日本にも存在するのだろうか。

日本の株式市場における新興市場とは

成長性の見込める新興企業向けの株式市場として「JASDAQ(以下ジャスダック)」と「東証マザーズ」があり、指数としては「JASDAQ INDEX」と「東証マザーズ指数」がある。どちらも東証一部、二部の上場に比べると上場基準が緩く設定されているため、成長性が見込まれる新興企業が多く上場している。業績の拡大とともに、上場市場を東証一部や二部に変更する銘柄もある。

東証マザーズに上場している代表的な企業には、「モンスターストライク」のスマートフォンゲームアプリを配信しているミクシィ <2121> や、バイオベンチャーの一つであるそーせいグループ <4565> がある。ジャスダックに上場している代表的な企業には、100円ショップ「Seria」を運営するセリア <2782> や、ハンバーガーショップ「マクドナルド」を運営する日本マクドナルドホールディングス <2702> がある。生活に馴染みのある有名企業が意外にも新興市場に上場していることは多い。

株式分割で株価が急騰することも

成長性が見込まれる企業の場合、株価が大きく上昇する可能性もある。例えばミクシィ <2121> の場合、掲示板等の交流サイト(SNS)「mixi」を運営していた2013年当時、株価は300円前後だった。その後スマートフォンゲームアプリ「モンスターストライク」が配信され、大人気タイトルとなった。おかげで、業績が爆発的に改善し、株価は上昇に転じた。株価が上昇している過程で2014年には株式分割を行い、高値6970円まで急騰した。株価は1年足らずで20倍ほどにまで成長した。

株式分割とは、1株を企業が決めた株数に分割することを言う。例えば、株価1000円の企業が1株を2株に分割した場合、1株が2株に株数が増えると同時に、1株当たりの株価は2分の1の500円になる。株式の価値としては変わらないが、一般的に、株式分割を行うことで株価はその後上昇しやすくなると言われている。

その理由としては、株価が安くなることで、これまで高くて買えなかった投資家が買いやすくなる点や、株数が増えたことで流動性が高くなり、取引がしやすくなる点等が挙げられる。さらに、企業が株主を重視している視点を持っていることが投資家から評価され、さらに投資家の人気が集まる場合もある。

新興市場銘柄に投資する際の注意点とは

新興市場銘柄の場合、業績が大きく変化するタイミング、いわゆるビッグチェンジで株価が上昇する可能性が高い。ミクシィ <2121> のように、ビッグチェンジによって業績が激変することは新興市場銘柄の場合には少なくない。

成長性のある有望銘柄を見つけ、タイミングよく投資することができれば大きな利益を得ることができるため、新興市場に上場している企業の株式に投資したいと考える個人投資家も多いだろう。しかし、新興市場銘柄への投資は利益が大きい反面、リスクも高い。新興市場銘柄の株式に投資する時には一層の注意が必要になる。

上場企業が発行している株式数に株価を掛けたものが時価総額である。新興市場銘柄の場合、東証一部銘柄に比べると時価総額が低く、流動性が低くなりやすい。流動性の低い銘柄の場合、株式を取引する投資家が少ないため、流動性の高い銘柄に比べると、株価は上昇しやすく、下落しやすい。株価が一日で動く値幅は大きくなりやすく、乱高下をしがちである。

万一、決算発表で業績の下方修正が行われた場合、株式が高ければ高いほど割高だと判断され、株式を売却したいと考える投資家が増える。流動性が高い銘柄であれば、安いタイミングを狙って株式を買いたいと考える投資家も多く存在するため、売りたい時も、比較的株式をすぐに売ることができる。しかし、流動性が低い銘柄の場合には、売りたいと考える投資家に対して買いたいと考える投資家が圧倒的に少なくなりがちだ。そのため、株式をすぐにでも売りたいと考えても、売りたい投資家が圧倒的に多く、売るに売れないという事態が起こり得る。

ファーストリテイリング <9983> は2017年1月5日、12月の国内ユニクロ既存店売上高が前年比5%減少したことを発表した。業績への影響が懸念されて翌日は売り注文が殺到し、株価は5%ほど下落した。東証一部に上場している時価総額の大きい企業でも、株価は大幅に下落する。

流動性の低い企業は株式分割を行うことで、流動性を高めることができる。その姿勢が好感されて、株式を買いたいと考える人が増えて株価は上昇するわけだが、新興市場銘柄が株式分割の発表を行うと、買い注文が殺到し、株価が急騰するケースが散見される。ミクシィのように業績が伴っての株式分割であれば問題ない。しかし過去には、資金調達するために株式分割を頻繁に行う企業が現れ、業績如何に関わらず株式を分割するだけで株価が上昇する株式分割バブルが起こった。時価総額が大きくても株価は大幅に下落するのだから、株式分割バブルが弾けた時の、時価総額の低い銘柄の株価下落の凄まじさは想像に難くないだろう。

新興市場銘柄すべてが優良企業で、企業業績が順調に拡大するとは限らない。さらに、業績が良好な企業であっても、景気変動等によって、いつでも業績が悪化する可能性はある。新興市場銘柄に投資する場合には、業績の動向に常に注意して、株価上昇が業績に裏打ちされたものなのかを見極める努力をすることが大切になるだろう。

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、メルマガ発行、講演活動、株塾を行う。

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