SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)

シンカー:日銀政策委員の間では、内外需ともに「このところ、実体経済面で明るい材料が増えている」とのアップビートな意見が広がっているようだ。しかし、「現行の枠組みの下で、粘り強くその効果を見守ることが肝要である」と、現行の金融緩和の継続の強い意思が示されている。2017年は、景気やマーケットの動きのある程度のオーバーシュートを覚悟しても、デフレ完全脱却へ向けて現行の強い緩和方針を維持する決意を日銀は持っているようだ。

日銀は1月30・31日の金融政策決定会合の主な意見を公表した。

12月の決定会合で、日銀は景況判断を「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」から「基調としては緩やかな回復を続けている」へ上方修正していた。

そして、この決定会合で公表した展望レポートでは、2017・2018年度の実質GDPの見通しは前年比+1.5%・+1.1%と、+1.3%・+0.9%から上方修正された。

グローバルに生産・在庫循環が好転しており、日本の景気の持ち直しに対して、政策委員がどれだけ自信を深めているのかが注目されてきた。

政策委員の間では、内外需ともに「このところ、実体経済面で明るい材料が増えている」とのアップビートな意見が広がっているようだ。

「回復に加速の兆し」が見えるとともに、「景気上振れ」の可能性の指摘もあり、「先行きは、潜在成長率を上回る成長を続ける」との意見が多いようだ。

ただ、円相場や外需に大きな影響を与える「米国新政権の政策運営」に対する不透明感の指摘も多い。

循環的な景気回復モメンタムの高まりと、FEDの利上げを背景とした米国の長期金利上昇などにより、日本の長期金利のマクロ・フェアバリューはしっかりとしたプラスに上昇していくとみられる。

日本の長期金利は、日銀の0%の誘導目標を上回る0.1%程度まで上昇してきた。

日銀が景気の持ち直しに向けて自信を深めているのであれば、日銀はある程度の長期金利の上昇を容認するのではないかという思惑がマーケットに広がった。

一部では、日銀のオペの姿勢が積極的ではなかったこともあり、日銀が長期金利の誘導目標を早急に引き上げるリスクが警戒されてきた。

しかし、「米国長期金利の上昇などを受けて、日本銀行が長期金利の操作目標を引き上げるのではないかとの憶測も聞かれるが、2%の物価安定目標にはまだ距離があるため、現在の方針を堅持することが何より重要である」との直接的な意見がみられた。

実際に、2月3日に日銀は国債買いオペを0.11%の指値で実施し、長期金利の上昇を容認しないことを示した。

デフレ完全脱却へ向けて現行の強い緩和方針を維持

景気は持ち直していることは確認できるが、まだ前年比マイナス圏にあるコアCPIは、日銀の強気な予想に反し、年末までに+1%程度まで戻るのが精一杯であるだろう。

政策委員の間では、2%の物価目標の達成時期が「2018年度頃」であるという予想に変化はない。

しかし、「インフレ期待の形成は適合的であり、物価上昇率が高まっていくには暫く時間がかかる」との指摘もあり、物価上昇の加速に対する確信はまだ弱いようだ。

日銀の目標である2%までははるかに遠く、2017年内に日銀が長期金利の誘導目標を引き上げることはないと考える。

ここで日銀が誘導目標を引き上げれば、「2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」という昨年9月に決定した「オーバーシュート型コミットメント」による物価上昇期待への働きかけがほとんど無効になってしまうだろう。

「現行の枠組みの下で、粘り強くその効果を見守ることが肝要である」と、現行の金融緩和の継続の強い意思が政策委員から示されている。

長期金利の誘導目標引き上げの前倒しの必要条件は、コアCPIの前年比が1%を十分に超えること、そして日銀短観などでの企業のドル・円の想定レートが120円に近づくことであると考える。

それらが満たされるのは早くて来年1-3月期であり、2017年には黒田日銀総裁は任期末である来年4月までに長期金利の誘導目標を引き上げることができるような環境を整えることに注力することになろう。

デフレ完全脱却の動きを確かにするため、日銀は国債買いオペを増額してでも、長期金利を誘導目標である0%に誘導し続けるだろう。

金融市場局が行っている日々のオペの変動が、政策委員会としてのテーパリングの意図を含むことは全くないと考える。

「イールドカーブ・コントロールのもとでは、国債買入れオペの金額やタイミング、回数などは実務的に決定され、日々のオペ運営によって先行きの政策スタンスを示すことはないことを、改めてはっきりと説明していくことが重要である」との政策委員の提言がみられた。

2017年は、景気やマーケットの動きのある程度のオーバーシュートを覚悟しても、デフレ完全脱却へ向けて現行の強い緩和方針を維持する決意を日銀は持っているようだ。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

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