SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)

シンカー:財政収支の赤字として、国民経済計算確報、資金循環統計、そして内閣府の試算をならべてチャートにしてみると、2016年度の内閣府の試算の赤字のジャンプが異様であることがわかる。この財政収支の赤字の異様なジャンプがある2016年度を基点として、2020年度まで試算を伸ばしているため、内閣府の財政収支の赤字の試算は過大になっていると考えられる。このジャンプを修正し、それを起点に試算を延ばせば、チャートからも、2020年度の基礎的財政収支の赤字は完全に解消してしまうことも十分に考えられるような財政収支の改善ペースであることがわかる。このジャンプの一つの説明の仕方として、2015年度の第二次・三次の補正予算の成立による国債発行の増加がある。しかし、それが理由なのであれば、補正予算の影響は一時的なものであるため、元のトレンドに戻るはずの2017年度の財政収支の赤字の推計が2016年度からまったく変化していないことが説明できないことになる。これ以上に過度に財政赤字を懸念して緊縮政策に傾けば、デフレ完全脱却は成功せず、経済パフォーマンスの悪化が財政状況を悪化させるというこれまでの悪循環を脱することができなくなってしまうだろう。財政問題を含め、国民は危機に気づいていないから悲観論を誇張してでも関心を持たせ、対策を早めなければいけないというこれまで政策の考え方は危険であり修正する必要がある。その誇張された悲観論自体が景気センチメントを冷やし悲観論が自己実現してしまうリスクを高めてきたこれまでの失敗の歴史があるからだ。

財政赤字の推計

報道される国家予算の一般会計の収支には特別会計や地方政府が入っていないため、国民経済計算確報でまとめられて一般政府全体の財政収支の赤字がわかることになる。

国民経済計算確報の資本取引から算出された純貸出(純借入)では、2015年度の一般政府の財政収支の赤字はGDP対比3.3%であった。

2012年度の8.2%、2013年度の7.2%、2014年度が4.9%であったことを考えれば、財政収支はしっかり改善してきている。

しかし、国民経済計算確報は公表まで1年程度の時間がかかるため、四半期ごとに公表される日銀資金循環統計で直近の動きを確認することになる。

資本取引の裏には金融取引があるため理論的には同一であるはずだが、実際には算出方法の違いにより、純貸出(純借入)は資本取引と金融取引で若干の誤差が存在する。

資金循環統計の純貸出(純借入)も、金融取引のものであり、公表が早いため推計値が多く入るため、国民経済計算確報の資本取引から算出された一般政府の財政収支とは若干の誤差が存在する。

しかし、両者の2009年度からの相関係数は0.98となっており、トレンドはほぼ同一であり、資金循環統計で実際の財政収支の動きをより迅速に追うことは可能である。

資金循環統計の一般政府の純貸出(純借入)に相当する資金過不足では、2015年度の財政収支の赤字は2.9%となっている。

2016年度に入った2016年7-9月期までの1年間では財政収支の赤字は2.3%となっており、赤字の縮小ペースが継続していることが確認できる。

1月25日に内閣府は中長期の経済財政に関する試算を改定し、一般政府の財政収支の赤字の予測を行っている。

2020年度の財政収支の赤字は2.2%となり、そこから利払い費などを控除した基礎的財政収支の赤字(2020年度で1.4%)の解消が困難であるということの根拠になっている。

もちろん、内閣府も新たに公表された2015年度の国民経済計算確報を考慮して試算を行っているはずだ。

問題なのは2016年度から

しかし問題なのは、2016年度の財政収支の赤字が5.1%となっており、2015年度の3.3%から大幅に悪化していることだ。

新たに公表された2015年度の国民経済計算確報によって明らかになった大幅な財政収支の改善、そして直近の資金循環統計の動きをほぼ無視するかのような試算になってしまっている。

資金循環統計の動きを考慮すれば、2016年度の財政収支の赤字はどんなに悪くとも2015年度と同程度であるというのがより現実的だろう。

円安に転換したことにより、2016年度後半の税収はしっかり増加し、2016年度の財政収支が改善することも十分可能だろう。

財政収支の赤字として、国民経済計算確報、資金循環統計、そして内閣府の試算をならべてチャートにしてみると、2016年度の内閣府の試算の赤字のジャンプが異様であることがわかる。

この財政収支の赤字の異様なジャンプがある2016年度を基点として、2020年度まで試算を伸ばしているため、内閣府の財政収支の赤字の試算は過大になっていると考えられる。

このジャンプ(1.8ppt)を修正し、それを起点に試算を延ばせば、チャートからも、2020年度の基礎的財政収支の赤字は完全に解消してしまうことも十分に考えられるような財政収支の改善ペースであることがわかる。

このジャンプの一つの説明の仕方として、2015年度の第二次・三次の補正予算の成立による国債発行の増加がある。

しかし、前倒し発行も含めた国債発行計画はGDP対比1.4%程度しか増加しておらず、政府支出が増加すれば税収で戻ってくる部分も多いため、国債発行計画の増額分をそのまま財政赤字の推計に載せるのは過剰である。

前倒し発行のように国債を発行してもその資金を使わず、現金が増加しただけであれば、両建てで資産と負債が増加するだけなので、国民経済計算確報での財政収支(純借入)はほとんど動かないはずだ。

補正予算による国債発行をそのまま財政赤字に載せるというのは、国債の発行を増やし、それをすべて使い(すべてを海外で使うのが例)、税収の増加がまったくないという極端な前提が必要になる。

更に、補正予算の影響は一時的なものであるため、元のトレンドに戻るはずの2017年度の財政収支の赤字の推計がGDP対比5.1%と2016年度からまったく変化していないことも、このジャンプが補正予算だけでは説明できないことを示している。

これ以上に過度に財政赤字を懸念して緊縮政策に傾けば、デフレ完全脱却は成功せず、経済パフォーマンスの悪化が財政状況を悪化させるというこれまでの悪循環を脱することができなくなってしまうだろう。

財政問題を含め、国民は危機に気づいていないから悲観論を誇張してでも関心を持たせ、対策を早めなければいけないというこれまで政策の考え方は危険であり修正する必要がある。

その誇張された悲観論自体が景気センチメントを冷やし、悲観論が自己実現してしまうリスクを高めてきたこれまでの失敗の歴史があるからだ。

日本の財政収支

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

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