シンガポールのヘン・ケイト財務大臣が2月19日、2017年度の国家予算を発表した。今後5年から10年間にわたる目標年間平均成長率を2%から3%に維持しつつ、新年度の予算剰余は経済産出量の0.4%(前年比-0.9ポイント)、支出は221億7000万ドル増(約2兆5194億円)の750億7000ドル(約8兆5309億円)と予想。

「学習と適応」をコンセプトにした柔軟かつ斬新なアプローチで、シンガポールの急速な経済発展に対応して行く構えだ。

ケイト財務大臣、急激に起こる「変化」を警戒

新年度予算発表にともない、複数の改革案も明らかにされた。最も注目を集めたのは17年ぶりとなる水道代の値上げだろう。ストレーツ・タイムズ紙の報道によると、海水淡水化および再生水化コストを補う意図で3割の値上げが実施される。

しかし「公共料金の値上げが国民の生活を圧迫しかねない」という点への配慮もなされている。HDB(公営住宅)住まいの低所得世帯に配給される公共料金還元支援制度「GSTバウチャー」の金額が40ドルから120ドル(約4548円から1万3645円)に引きあげられるほか、中古マンションの購入を対象としたCPF(中央積立基金)住宅支援金も上限枠が大幅に広げられる。

初めて住宅を購入する夫婦限定に支給されるCPF住宅支援金は、より多くの世帯が持ち家を購入しやすい環境創りに大きく貢献している。所得に応じて支給金額に開きがでるが、改革後な夫婦間で最高11万ドル(約1251万円)を受けとることも可能になる。

ケイト財務大臣は「2016年度予算案発表から世界情勢が著しく変化を遂げた」とし、Brexitやトランプ大統領の勝利を前に「変化というものがどれほど急激に起こるものかを実感した」と述べた。

そうした予想不可能な変化に対応していくうえで、柔軟で的確な政策は必要不可欠となる。ケイト財務大臣の指摘どおり、2016年度は2%の成長を遂げたシンガポール経済だが、「総体的に見て偏りが生じている感は否めない。また失業率も2.1%にとどまっているものの、リストラ率が伸びてるのが気にかかる。

対応策として労働者には職安プログラム、企業には補助支援の提供などを打ちだしている。慎重な構えを崩すことなくさらなる生産性向上や社会包括化に取り組むことが、シンガポール経済の強みとなるだろう。(ZUU online 編集部)

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