テロ支援国家,北朝鮮
(写真= Lukasz Stefanski /Shutterstock.com)

北朝鮮のミサイル発射や金正男氏殺害事件を受け、北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう求める声が高まっている。

米国では2008年に「テロ支援国家」として北朝鮮を解除したが再び指定国家にするべきかの検討に入ったようだ。その事は2月27日、日米韓3カ国はワシントンで会合を開いた席で日韓両国に説明したと韓国政府高官が明らかにした。検討の過程でも米国は日韓と緊密に連携していくとも語ったようだ。

一方、金杉憲治アジア大洋州局長も3カ国の独自措置を協力することにより相乗効果を高め国際的圧力が必要との認識を示した。

大韓航空機爆破事件で1988年からテロ支援国家リスト入り

1988年11月29日、大韓航空機がインド洋上空で爆破されている。乗客乗員115人全員が死亡したこの事件は北朝鮮の工作員によるものだが、当初は空中分解が原因ではと言う事であったが、しかし実際には航空機テロであったことが後に判明し、北朝鮮はテロ支援国家リストに入る事となったのだ。

取り押さえられたは金賢姫工作員。もう一人の男の工作員はカプセル入り薬物を飲んで自殺。その後、金賢姫は韓国に引き渡され特赦で自由の身となって韓国で暮らしている模様だ。その後、当時のブッシュ政権は北朝鮮を2008年10月に核開発計画の検証方法をめぐって合意した事からロ支援国家を解除している。

その後、2010年には韓国の哨戒艦沈没事件や2014年のソニーの子会社がサイバー攻撃を受けているが、北朝鮮をテロ支援国家に再指定を見送った経緯があるだけにトランプ政権の対応が注目されるところだ。

米国ではテロ支援国家を指定する制度がある

テロ支援国家は1979年に米国国務省によって指定されたものであり、テロ組織を支援していると見なす国に対して適用している概念および呼称の事だ。当初はリビア、イラク、南イエメン、シリアが指定国だったが、北朝鮮、イラン、キューバ、スーダンが追加されている。

指定された国に対しては武器輸出の禁止の他に、たとえ汎用品であっても軍事力またはテロリスト支援能力を強化する物として輸出管理や経済援助の提供などが禁止される。あるいは金融面での諸規制の制裁措置が課される事になる。現在はリビア、南イエメン、イラク、北朝鮮、キューバがテロ支援国家の指定が解除されている。

イラン、シリア、スーダンの3カ国をテロ支援国家と指定している

シリアは1979年12月29日に指定。イランは1984年1月19日に指定。スーダンは1993年8月12日に指定されている。過去に指定された国を見ると、南イエメンは1979年に指定されたが北イエメンとの統合で解除されているし、イラクは1979年に指定されたが1982年に指定が解除されている。

しかし国交正常化となるも1990年のクウェート侵攻を受け再指定となった経緯があり、その後イラク戦争の影響から2004年に指定解除れている。リビアは1979年に指定されその後2006年に指定が解除されている。キューバは2015年にテロ支援国家指定を正式に解除されたばかりだ。問題の北朝鮮は1988年に指定されたが2007年2月13日の六者会合の合意で2008年10月11日に指定を解除されている。

再指定を求める議会やメディアからの声が出ている

トランプ政権の対応が注目されているが米議会下院では2月にロ支援国家に再指定するよう求める法案を提出しているし、議会上院からも議員6人が、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した事から再指定を検討するよう書簡をトランプ政権に送っている。さらに米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説では、マレーシアで殺害されたキム・ジョンナム氏の事件でテロ支援国家に再指定をすべきと記すなど求める声が強まっている。

追い詰められた金正恩だが、中国でも今年いっぱいは石炭の輸入停止を発表している。中国向けの石炭輸出は年間1000億円を超えるとの事なので相当な痛手となる。マレーシアとも今回の事件で断交を検討しているようだし、昨年に匹敵する史上最大規模の米韓合同軍事演習も3月に始まる予定とか。

このように経済制裁や外交圧力、軍事的圧迫という三重苦に直面する事にななる北朝鮮だが、米国ではテロを支援している国家を「テロ支援国家」として指定・明確化した場合は経済制裁を実施する手法を取っているのだ。

これはあくまでも「テロ支援国家」とは国務長官(外務大臣に該当)が認定して議会に報告するのだが、あくまでアメリカの最終判断ですることだ。これにより武器をはじめとする輸出入規制が行われ、国際金融機関の融資にしても米政府が反対する事でその活用も行えなくなると言うわけだ。

北朝鮮の核・弾道ミサイルは日米韓の安全保障で見解一致

日米韓政府は共同声明で、北朝鮮の核・弾道ミサイルは安全保障を脅かすとの認識で一致している。北朝鮮は複数の国連安全保障理事会決議を無視しているだけに、今後は強い国際的圧力が必要と指摘している。軍事ジャーナリストの世良光弘氏も、テロ支援国家に再指定し海上封鎖を含むなどの全面制裁をした場合は金正恩政権は持たないだろうと見る。

そうなれば再度の核実験や弾道ミサイル発射をする可能性もあるのではと予想しているようだ。米軍の偵察衛星からの報告では数日前から核施設周辺での頻繁な車両の出入りが確認されている。トランプ大統領がこの兆候を見て米朝の軍事衝突が現実のものとなる決断次第では日本としても穏やかではいられなくなる。(ZUU online 編集部)

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