韓国,博士,就職難
(写真= Ekaphon maneechot /Shutterstock.com)

韓国毎日経済新聞によると、韓国内の4年制大学で教鞭を執る非常勤講師の平均年収は811万ウォン台(約80万4000円台)にとどまっているという。毎日経済新聞が教育統計サービスの博士号取得者の現状を分析した結果、2016年の博士号取得者は1万3882人、博士号の取得を志望する人は4万2292人と過去最大を記録したが、他の職業がないため学業を継続している人が約半数となっている。

博士号を取得する人の多くは30代後半で、結婚し子供がいる人が少なくないが、年齢的に企業への就職は望めず、時間制の非常勤講師を続けている。

加熱する教育

中央日報によると、韓国の高校卒業者の大学進学率は70%とOECD加盟国の中でも最高水準で、2011年の25~34歳の64%が大学卒業者という統計もあるという。天然資源が乏しい韓国は人が重要な資源と考え、高い教育熱による人材育成で高度成長を成し遂げ、ITや自動車、韓流文化を輸出してきたという分析がある。

問題もある。公教育に比べて私教育の割合が高く、貧富による格差が大きい。2011年の15~24歳の若者の死亡原因第1位は教育ストレスによる自殺といわれている。私教育負担を理由に出産を断念する夫婦が増え、高齢化が深刻になるという指摘すらある。

日本のセンター試験に相当する大学修学能力試験は、国家的行事となっている。2016年の試験が実施された11月17日、ソウルの地下鉄とバスは受験生への登校時間に合わせて増便し、自治体や公社では混雑を軽減するため、職員の出勤時間を通常より1時間遅い午前10時とした。国土交通部はリスニング試験が実施される午後13時5分から35分間、試験会場付近の航空機の運航を制限し、非常・緊急時を除いて離着陸を全面禁止にした。運航時間の調整で国内線11便が欠航になったという。

「キロギアッパ(雁父さん)」も社会問題になっている。妻と子を海外留学に送り出し、1人韓国に残って仕送りを続ける父親たちである。妻子の生活費や学費を捻出するため、10年以上も身を粉にして働き、つつましい生活を送るなかで自殺を考える人も少なくないという。家族相談の専門家によると、「キロギアッパ」は一般的な父親と比べて、うつ病が2~3倍ほど高く、栄養状態も良くない。

ブランドに殺到する大卒者

大学を卒業しても適当な仕事がないため、学校にとどまって博士号を取る学生が増え、博士号を取ったあとも良い仕事や大学教授の席を見つけられない「博士の洪水」が深刻だ。韓国職業能力開発院のアンケートによると、2016年に博士号を取得した人の就職率は61%で、およそ4割の博士号取得者が就職できずにいるという。

高い教育熱が若年就職難の要因という人もいる。ブランド志向が強い韓国では、大学はもとより、就職先もブランドで選ぶ傾向がある。有名な大学を卒業した学生は、学歴に見合う就職先を望む。財財閥系企業など名の通った企業に殺到し、名前が知られていない中小企業は人材確保に苦心する。日本の上場企業の現地法人でも、韓国での知名度が低いと人材確保に苦労し、採用しても両親や親戚から名前を聞いたことがないと言われて退職する事例は少なくない。(韓国在住CFP 佐々木和義)

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