コンビニや飲食店、ECサイトなどで「面白そうな商品」「心に響くサービス」に出会うと、ついその会社の業績や株価を調べてしまう。筆者の職業病なのかも知れないが、その中でも稀に「この会社は世の中を大きく変えるかも?」と感じることがある。「位置ゲーム」で業界をリードするモバイルファクトリー <3912> もそんな会社の一つだ。

ゲームが世の中を変える? 読者の中には不思議に思われる人もいるかも知れない。今回は、2015年3月に東証マザーズに上場したモバイルファクトリーを見ていこう。

新作『レキシトコネクト』への期待で株価も上昇

2月23日、モバイルファクトリーの株価が急騰し、ストップ高となる3290円まで買われた。午後1時半に、新作位置情報連動型ゲーム『レキシトコネクト』の正式リリースに先がけて事前登録を開始すると発表したためだ。

『レキシトコネクト』はスマホGPSを使い、位置情報を利用して楽しむゲームだ。歴史上の英雄たちをモチーフとした「イジン」を自分好みに育てながら、実際に様々な場所を訪問することで戦国時代さながらの陣取り合戦を進めていく。日本全国にある約1000の城跡や世界遺産がカバーされているようで、ゲームだけでなく史跡巡りの楽しさも味わうことができるのだ。同社の株価は、先の情報開示とともにロングヒットを期待した投資家の買いを集めて急騰した。

位置ゲームが「地域活性化」に貢献する?

モバイルファクトリーが位置ゲームで先行しているのは『レキシトコネクト』だけではない。配信済みのアプリでは『駅奪取』『駅奪取 PLUS』『ステーションメモリーズ!(駅メモ!)』がある。いずれも、アニメの女の子や猫と一緒に、電車に乗って旅をするスタンプラリーのようなゲームだ。

『駅奪取』はコロプラ <3668> に提供しており、昨年実施した11回にわたるO2O(オンライン・ツー・オフライン)のイベントでは、合計17万人の参加者が集まった。これは前年比5.7倍である。『駅奪取』のローンチは2011年であるが人気は衰えることを知らない。

3月6日には「SHOW BY ROCK!! × 駅メモ! STATION ROCK FES!!!」をスタートした。サンリオのバンドをテーマとしたプロジェクト「SHOW BY ROCK!!」と『駅メモ!』のコラボイベントだ。3月1日にこのコラボイベントが発表された翌日にも株価は反応し、150円高(4.1%)の3765円まで買われた。

同じく3月1日には日本郵便も全国特定の郵便局で「駅メモ!オリジナルフレーム切手セット」の販売を開始。『駅メモ!』が開催する旧鉄道郵便に関連した駅を巡るゲーム内イベントと連動した企画だ。

『駅奪取』や『駅メモ!』は、地方自治体や地方電鉄とコラボして、地元の店でゲーム画面を見せることで記念品をもらえるキャンペーン等に積極的に取り組んでいる。位置ゲームが、既存キャラクターやメーカーの商品のプロモーションはもとより、郵便局や地方自治体の地域活性化・町おこしのプラットフォームとして急速に普及する可能性が高まっているのだ。今後はゲームメーカーのマネタイズ手法が大きく変わるかもしれない。モバイルファクトリーはそのキーを握る会社なのだろう。

同社の位置ゲームには、さらに「ライフログ」と呼ばれる、自分の足跡を記録できる機能がある。鉄道ファンが自分のたどった駅の軌跡などを保存できるのだ。スマホが自分の行動を記録するツールとしての役割が高まっていることからいっても、「ライフログ」としての位置ゲームへの期待は大きい。

「面白そうな商品」「心に響くサービス」

モバイルファクトリーの業績を見てみよう。今年1月20日に発表した2016年12月期の決算は、売上18%増の20億7000万円、営業利益は95%増の6億1000円となった。事前の会社予想の営業利益(5億2000万円)を上方修正する好決算だった。

経営資源を集中している位置ゲームに関しては、前期の売上は11億3000万円の前年同期比84%増だった。『駅メモ!』と大ヒット映画『君の名は。』のコラボなども奏功し課金収入も増加している。好業績を背景に年間配当は27円と従来の予想から5円増配を決定した。同社は2016年10月1日に1株を2株に分割しているため、前期比では実質17円の増配となる。

2017年12月期の業績の新予想でも、位置ゲームの好調から売上は20%増の24億9000万円、営業利益は25%増の7億6000万円と大幅に増加する見込みだ。営業利益率は30%台乗せが予想されており、引き続き高収益を維持する見通しである。

最初に述べた通り、筆者は日常生活で「面白そうな商品」「心に響くサービス」に出会うと、ついその会社の業績や株価を調べずにはいられない。私たちの生活の役に立つ企業、社会の活性化に役立つ企業に魅力を感じるのだ。読者のみなさんも、そんな目線から投資と向き合ってみてはいかがだろうか。(ZUU online 編集部)

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