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(写真= esfera /Shutterstock.com)

中国では3月2日から約2週間の日程で両会(全国人民代表大会と人民政治協商会議の統一呼称)を開催中だ。内政の季節である。ニュースも内政中心にかたむき、外交は一時休戦状態にある。米トランプ政権関連や日本関連ニュースは減っている。

ただし朝鮮半島関連は例外だ。それも日本で大騒ぎしている北朝鮮ではなく韓国の方である。THAAD配備をめぐるあつれきを連日大きく報じ続けていた。そこへ大統領弾劾決定のニュースである。どのように報道したのだろうか。

官製メディアはどう報じたか

人民日報国際版の環球網は以下のように伝えている。

朴槿恵大統領は韓国史上初の弾劾の確定した大統領となった。これは韓国内政であり論評はしないが、中国方は韓国政局の保持安定を望んでいる。

外交部報道官は、10日の定例記者会見で韓国記者の質問に答えた。朴大統領は在任中、中韓関係の推進に大きな貢献をした。中国方はこれを認めよう。しかし同時に弾道弾迎撃ミサイルTHAADの配備決定も行った。我々これは、両国関係の発展に影響すると明確に反対してきた。この問題における中国の立場を堅守する。

朴大統領弾劾後、中韓関係はどこへ向かうのか? 関心の高い問題である。同報道官は、中韓は互いに引っ越すことのできない隣人である。中国は韓国にとって最大の貿易パートナー、最大の投資対象国、最大の留学生供給国、最大の海外旅行目的地国である。同時に韓国は中国にとっても最重要な貿易投資パートナーとなっている。そして最も重要なことは人文の交流を絶やさないこと述べている。

その中韓関係の発展が困難に直面している。我々はそれに心痛を感じている。韓国方は中韓両国人民の利益を尊重し、民衆の声に耳を傾け、両国の健康的発展軌道の障害(THAAD)を取り除くことを望むと結ばれている。

やはり最も重視しているのはTHAADである。しかし韓米が中国へ向けてミサイルなど発射するはずはない。その危惧があるとしたらむしろ北朝鮮だ。やはり軍事的脅威というより面子の問題なのだろう。

ネットメディアの反応

ネットメディアもたくさんの関連記事を取り上げ発信している。内容は1)朴槿恵その人に焦点をあてたもの。2)中国の反韓国活動を紹介したもの。3)THAAD配備による国益侵害を憤るもの、の3つに大別される。

1)公主(皇族の娘)から大統領へ。朴槿恵人生16の瞬間。国家と結婚した女の政治生涯。といったドキュメンタリータッチの記事で、かなり豊富な内容だ。

2)江蘇省のロッテマートも全店営業休止へ。閑古鳥が鳴くソウル明洞商店街や免税店の様子。など詳細に伝えている。ネットユーザーのコメントは支持一色に染まっている。

3)朴槿恵が下野してもミサイル配備は不変。次期大統領候補は“親中反米”を表明。など中国政府へのヨイショ記事が多い。独自視点の解説などは見られない。すべて韓国が悪いのである。

中国外交手詰まりの象徴に

北朝鮮は中国の存在を歯牙にもかけない傍若無人の振舞いである。従順だった韓国もTHAAD配備で盾突いてきた。朝鮮半島への外交的kントロールはもはや全く効かず、中国外交手詰まりの象徴事例になってしまった。唯一好転が望めるのは、60日以内に行われる韓国大統領選で左派が勝利することである。おそらくその日までプレッシャーをかけ続けるつもりだろう。

環球網のいうように朴大統領の弾劾が内政であり関知しないのなら、THAAD配備も内政のはずである。自国の安全保障上の判断は外交ではない。他国の干渉は受け入れられない。韓国にとっては将来を大きく左右する正念場である。中国にとってもここまで踏み込んで、成果なしではいられない。追い込んでいるようでいて追い込まれてもいるのだ。一体どのように収拾するつもりなのだろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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