2020年、いよいよ2年後に迫ってきた東京五輪・パラリンピック。世界中からさまざまな考え方を持った人々が集まる世界的一大イベント開催に向け、厚生労働省は、他人がたばこを吸った時に発生する煙を吸わされる受動喫煙に対する対策の強化に乗り出している。
「保険クリニック」が喫煙者と非喫煙者を対象に行ったアンケート調査によると、「飲食店・居酒屋などで分煙が必要か」という問に対し非喫煙者の内76.7%が必要と答え、喫煙者の中でも64.3%の人が必要と回答している。
たばこの喫煙に関しては、喫煙席や喫煙室など喫煙場所の問題や歩きたばこやポイ捨てなど喫煙マナーの問題、受動喫煙の問題など喫煙者と非喫煙者の間には従来からさまざまな問題が存在する。
喫煙者・非喫煙者に対するアンケート調査から見えてくるもの
冒頭のアンケートからは、喫煙者の回答に関しては非喫煙者からの批判的な声を考慮し、自分たちの喫煙できる場所を確保したいという考えを読み取ることができるが、非喫煙者の回答に関しては食事中の煙の臭いを避けたい考えと「健康への悪影響」を避けたいという思いがにじみ出ているように感じられる。
また喫煙者の中で禁煙を考えたことがある人に対しその理由を聞くと、「健康のため」という回答が一番多い結果となっている。さらに非喫煙者の中で過去に喫煙をしたことがあり、かつ禁煙をした人に対しその理由を聞くと、やはり「健康のため」という回答が一番多かった。
たばこと健康に深い関係があることはほぼ誰でもわかることであり、外国での空気汚染の問題など健康に対する意識が高まりつつある現状においては、禁煙や分煙などに関する議論が起こってくることは必至なのかもしれない。
そもそも喫煙が人体の健康に与える影響とは?
人体に有害だと言われているたばこの煙には、約4000種類の化学物質が含まれている。さあにその化学物質の中には、200種類以上の有害物質が含まれており、中でも発がん性物質に関しては50種類以上になる。よく知られている有害物質としては、ニコチン・タール・一酸化炭素などが挙げられる(「ファイザー すぐ禁煙.jp」より)。
たばこの有害物質が原因でがんになる可能性があることはよく知られているが、その他にも脳卒中や心筋梗塞・動脈硬化・高血圧・糖尿病・メタボリックシンドローム・胃潰瘍・COPD・肺炎・喘息・うつ病・バセドウ病・骨粗鬆症・EDなど、年齢が進むに連れて気になってくる全身に関する病気のリスクまでも高めてしまうのだ。
またこれらの病気のリスクだけでなく、妊娠・出産に関しての悪影響や、乳幼児突然死症候群の発症に関してもリスクの高さが関連しているという。
喫煙者は余命が短いという話は、一般的にもよく耳にする。具体的には、20歳未満でたばこを吸い始めた男性(1920~45年生)に関しては72%が70歳まで生存していたという結果だが、非喫煙者の男性の72%は78歳まで生存していたのだそうだ。
つまり、喫煙者と非喫煙者の間で余命が8年違うことになる。なお、同じように女性の場合でも喫煙者と非喫煙者の間では余命が10年違っている。
受動喫煙は大人だけでなく子供にも影響を及ぼす
たばこの煙は、たばこを吸う本人が直接吸い込む主流煙と、火のついたたばこの先から出る副流煙の二種類に分かれる。この副流煙をたばこを吸わない人が吸い込んでしまうことを受動喫煙と言う。
副流煙は主流煙に比べニコチンが2.8倍、タールが3.4倍、一酸化炭素においては4.7倍もの量が含まれている。受動喫煙の状態が続いてしまうと、がんや脳卒中・心筋梗塞・呼吸器疾患などさまざまな重い病気のリスクが高くなることになり、さらには妊婦や赤ちゃんにも重大な影響を及ぼすことがわかっている。
子どもの受動喫煙による被る健康被害は深刻であり、乳幼児突然死症候群(SIDS)・呼吸器症状(せき、たん、息切れなど)・気管支炎・肺炎・中耳炎などさまざまな病気のリスクが高まることになる。
中でもSIDSは、それまで順調に育っていた赤ちゃんが突然死亡してしまう恐ろしい病気だ。たばこはSIDSのリスクを高める因子であり、仮に父親と母親両方が喫煙者である場合は、そのリスクが10倍にまで高まると言われている。
このような結果を受け、受動喫煙については近年、社会全体の問題として取り組むべきことであると認識が広まってきている。
対処は必須の心構え
禁煙や分煙などの考え方があまり広まっていなかった時代に比べ、現在は受動喫煙のリスクの高さなど社会の進歩により、たばこが健康に与える危険性の高さがより浮き彫りになっていると言えるだろう。
この禁煙や分煙に関する議論については、社会のモラルやマナーなど周りの人に対する意識を持つことを軸に考えていくべきことなのではないだろうか。(藤瀬雄介、スポーツ・ヘルスケアライター)
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