FOMC(米連邦公開市場委員会)が14~15日の日程で開催される。イエレン議長を含むFRB(米連邦準備理事会)関係者からやや唐突に「早期利上げが適切」といった趣旨の発言が相次いだこともあって、市場はFOMCの利上げを織り込みつつ、現在に至っている。今回は間もなく始まるFOMCのポイントを整理してみよう。

ドットチャートは「年内3回の利上げ」を織り込み済み

まず、注目したいのがドットチャートである。昨年12月のドットチャートでは、2017年末までに3回の利上げが見込まれていた。3月10日現在のフェドウォッチでも3回以上の利上げが実施される確率は63%となっている。年内3回の利上げがほぼ織り込まれている様子だ。

今回のFOMCの利上げ確率は89%である。利上げが実施された上で「ドットチャート(年内の利上げ回数)に変更なし」が市場のコンセンサスとみてよさそうだ。

ただし、ドットチャートが年末までにあと3回、つまり今回の利上げを含めて合計4回に変更されると「サプライズ」となる。この場合、金利の上昇とドル高・円安、米株安が素直な反応として想定される。もちろん、利上げが見送られた際も大きなサプライズとなり、金利の低下とドル安・円高、米株高が見込まれる。

経済指標からの違和感は否めず

ところで、現在と1年前とではマーケットの状況に大きな違いが2つある点にも留意すべきだ。一つは「トランプノミクスへの期待感」から株価が上昇していること、もう一つは同大統領による「ドル高けん制発言」でドルの上昇が止まっていることである。

ただし、株価こそ上昇しているものの、米景気そのものはぱっとしない。雇用統計でも雇用者数は大幅に増加しているが、より注目度が高い賃金の伸びは鈍く、1月の個人消費も実質ではマイナスとなるなど冴えない。また、シカゴ連銀全米活動指数の3カ月平均も、1月まで18カ月連続でマイナスとなっており、景気が上向く気配はうかがえない。

GDPナウを見ても3月8日時点で1〜3月期の実質GDP成長率は前期比年率1.2%増と予想されており、前年同期の同0.8%増よりはマシとはいえ、FRBが想定している「潜在成長率である1.8%」を大きく下回っている。また、昨年12月時点では2016年の成長率を1.9%と見込んでいたが、実際には1.6%と予想を下回っているのが実情だ。

こうした動きを考え合わせると、昨年12月の追加利上げ時点と比べて、経済見通しは下振れており、「追加利上げを正当化する数字が並んでいる」とは言い難い。経済指標をベースにするなら、むしろ利上げは見送ったほうが違和感が少ない印象さえ受ける。

イエレン議長をはじめとするFRB関係者はこれまで、利上げの可能性については「今後の経済指標次第」との文言を繰り返し述べており、利上げには経済的なデータの裏付けが必要との考えを示唆してきた。今回利上げが実施された場合、経済データとの整合性に関する疑問をより浮き彫りにし、将来の火種となりかねない点には注意すべきであろう。

FRBは「トランプノミクスの影響」を見切った?

そもそも、前回のFOMC直後の時点では「次回利上げは6月」が市場のコンセンサスであった。FRBが「トランプ政権の政策の影響を見極めるには時期尚早」との見方を維持していたことから、ある程度具体的な政策が明らかになるまで金融政策の変更はないと考えられていたからだ。

こうした経緯もあって、ウォール街の市場関係者からは「予算教書の発表すらない段階で追加利上げを示唆することに違和感を覚える」との意見も少なくなかったのだが、逆の見方をすると「FRBはトランプノミクスの影響を見切った」と考えることもできる。

今回のFOMCは、米連邦政府の債務上限停止期間の終了とトランプ政権の予算教書の発表というタイミングに重なった。しかし、このタイミングでFRBがやや不自然に利上げ積極派に転じたことは決して偶然ではないのかも知れない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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