「何やってんだ!」誰かが声を張り上げて部下を叱責していた。「そんなことやってちゃ『銀行の中』で生き残っていけないぞ」

銀行の中で生き残っていく……私の心にそのフレーズが妙に刺さった。環境に適合し進化を遂げる個体と、適合できず絶滅する個体。現在、地球上に存在している生物の種類は、150万種類を超えるといわれている。生物が進化するなかで、多くの新しい生物が誕生したのは間違いないが、同時にそれを上回る種類の生物が滅亡したのも事実である。

私には、ダーウィンの進化論が、銀行にもそのままあてはまるように思えてならない。

「なぜ、あんなヤツが出世するんだ?」

進化論を語る際に、必ずといって良いほど登場する動物がキリンだ。地球上で最も背が高い生き物であるキリンは非常に長い首を持つ。なぜキリンの首が長いのか。それは高い木の実を食べたり、遠くの敵を早く発見するのに役立つからである。

生きるために不可欠な食料を確保し、外敵から身を守ることに適した特徴を持ったものだけが生き残り、そうでないものは長い年月の間に自然淘汰される。それぞれの動物の特徴は生きるために不可欠なものなのだ。

「生物は環境に適用できるように変異していく」ダーウィンは進化論のなかでそう主張する。自然界ではこうした変異が繰り返されるうちに、結果として、先祖とは全く違った新しい姿が形成されていく。

つまりは、こういうことなのだ。銀行という環境で生存していくには、その環境に適した処世術を身につける必要がある。その術を身につけていない個体は環境に適応できず、自然淘汰され絶滅する。

「なぜ、あんなヤツが出世するんだ?」それは、彼が現在置かれた環境の中で生存していく処世術を身につけているからである。具体的には部下の手柄を横取りし、自分の責任を部下に押しつけるという厚顔無恥さであったり、ひたすら上司にゴマをする能力であったりする。

こうした能力を有する個体は繁栄し、それを持たない個体は適応できず絶滅の危機を迎える。生き残る個体は「厚顔無恥」や「ゴマすり」の能力をますます磨き、銀行という環境のなかで変異していくのだ。

ガラパゴス諸島と銀行島

進化論と言えば、ガラパゴス諸島だ。大小多くの島と岩礁からなるこの地域はどの大陸にも接した歴史がなく、天敵になるような大型のほ乳類も存在しない。他に見ることができない固有の動植物の宝庫であり、独自の進化を遂げた小動物の楽園だ。

恐らく、銀行もガラパゴス諸島と同じなのだろう。「厚顔無恥」や「ゴマすり」の能力を磨き、変異を遂げた個体がここでは生き延びている。もちろん、これは他の業種にも当てはまるに違いない。「銀行島」で起こっていることは「証券島」や「保険島」でも起こっているのかも知れない。高い志を胸にこの島に飛び込んでみたものの、次第に環境の変化に適応するために、多くの個体が変異しているのだろう。

ダーウィンの進化論には意外な側面がある。時代が進化論を必要としていたという背景だ。19世紀は資本主義と植民地支配の時代だった。資本主義による自由経済を掲げる資本家にとって「自然淘汰」「適者生存」「生存競争」という言葉は、それまで変化を好まない保守層、あるいは弱者に対する武器となった。

進化論は皮肉なことに、容赦のない搾取や、列強による植民地支配を正当化する理論的根拠とされた。あらゆる自由競争(自然淘汰)と手段を選ばない生存競争を正当化し、富と名誉を手に入れた成功者(適者生存)を肯定することとなったのだ。

すでに「地鳴り」は始まっている

しかし、たとえ「狭い島の中」で生き残った適者であっても、瞬時に絶滅を迎えることがある。恐竜がそうだ。火山の爆発、太陽活動の変化、流行病などさまざまな原因が想像されているが「外部環境の変化」により、瞬く間に滅びてしまう可能性がある。適者といえども、永遠にその繁栄が続くわけではない。

低金利下で、融資残高も伸びない現在の環境で銀行が生き残るには、金融商品の販売に力を入れなければならないのは明らかだ。にもかかわらず、「銀行島」では未だに社内官僚という名の適者が幅をきかせ、この分野で本気で戦う覚悟が感じられない。「火山の爆発」を告げる地鳴りは、すでに始まっているのに、彼らの関心は未だ自らの保身ばかりに狭まっている。

島全体が沈みかねない状況での保身など一体何の意味があるというのか。いま必要なのは、響き渡る地鳴りに耳を傾け、ひとり一人の銀行員が島全体としてどう進化すべきか考え、本気で議論することなのだ。(或る銀行員)

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