3月9日、九州旅客鉄道(JR九州) <9142> が3840円と上場来高値を更新した。同社は昨年10月25日にIPOしたばかりの旅客鉄道会社である。IPOの初値3100円からの上昇率は23.9%だ。郵政3社が未だにIPO初値を下回っていることを考えると、最近の民営化関連のIPO株としては目下のところ成功と言えるだろう。

「JR4兄弟」の末っ子が大出世?

昨年10月25日にIPOを果たしたJR九州は、公募売出価格2600円に対し初値は3100円と19.2%上昇して始まった。

過去のJR各社のIPO時の初値を見ると、1993年の東日本旅客鉄道(JR東日本) <9020> は公募価格から57.9%上昇している。ただ、同社の上昇はJRとして初のIPOに加え、当時はバブルの名残という時代背景も影響したように感じられる。その後、1996年にIPOを果たした西日本旅客鉄道(JR西日本) <9021> の初値はわずか0.8%高、同じく1997年の東海旅客鉄道(JR東海) <9022> は1.3%高と、公募価格割れとはならないまでもとても人気があるIPOとは言えなかった。そう考えると「JR4兄弟」の末っ子のような存在であるJR九州の上昇はサプライズと言えるだろう。

このほか、政府保有株の民営化のIPO案件といえば、2015年11月4日の郵政3社の盛り上がりを記憶している人も多いことだろう。日本郵政 <6178> の初値は公募価格を17%、同じくゆうちょ銀行 <7182> は16%、かんぽ生命保険 <7181> は33%とそれぞれ上回り、IPOとしては大成功だったが、その後の株価はパッとしない。

3月14日現在、日本郵政の引け値は初値を10%下回っているほか、ゆうちょ銀行も15%、かんぽ生命保険も4%といずれもIPO初値を下回っている。郵政3社で株式投資を始めた人や、NISA向けに安定成長を見込んで組み入れた人も多かったように思うが、ほとんどの人が塩漬けではないだろうか。

予想PER等の割安感は薄れているが

JR九州の株価上昇のきっかけとなったのは2月8日発表の「業績の上方修正」だった。2017年3月期第3四半期の決算発表で、通期の予想売上を3788億円から3814億円に0.7%、本業の利益である営業利益を518億円から544億円に5.0%上方修正したのだ。売上は前期比で0.9%増、営業利益は2.6倍となる。2016年4月の熊本地震で落ち込んだ鉄道収入が予想より早く回復したことが主因と見られる。通期の鉄道収入は、まだ熊本地震の落ち込みをすべて補うものではないが、3%減の1460億円と従来予想から25億円上振れる見込みである。

翌2月9日の株価は80円(2.6%)高の3195円と買われた。その後、3月14日までの24営業日で下げたのはわずか3日のみ。機関投資家の大口の買いが継続的に入っていた可能性も指摘されるほか、外資系証券会社の買い推奨も後押ししたようだ。

もっとも、注意を要するのは2月以降の株価上昇により、JR4社の中で予想PER(株価収益率)や予想PBR(株価純資産倍率)、予想配当利回りといった指標で割安感が薄れている点だ。今後のポイントは、JR4社の中で一番出遅れている多角化部門の比率を高めることができるかがキーとなりそうだ。(ZUU online 編集部)

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)