米国ハワイ州が、トランプ大統領が署名したシリアやイランなどイスラム圏6カ国からの米国への入国を制限する大統領令を「憲法違反」として、執行の一時差し止めを求めてホノルルの連邦地方裁判所に提訴した。両国のほかはイエメン、リビア、ソマリア、スーダンだ。

トランプ政権は今年1月にも、イスラム圏7カ国(6カ国とイラク)からの入国を制限する大統領令に署名したが、裁判所によって効力を差し止められている。

リベラルな州として知られるハワイ州

米国は、民主党が優勢でリベラル色の強い「青い州」(blue state)、共和党が優勢で保守色の強い「赤い州」(red state)、どちらの政党も優勢ではない「接戦州」(swing state)の3つに大別される。このうちハワイ州は1988年の大統領選挙以降、毎回民主党候補が勝利している「青い州」だ。

ハワイ州のイスラム系人口はおよそ5000人。人口が約143万人(2015年時点)であることを考えれば多いとはいえないが、かつて日系の移民を多く受け入れてきた歴史があり、2015年の時点でも人口のおよそ37%をアジア系が占める。また、同州の人口の約2割が外国生まれであるなど、移民と深く関わってきた州の一つとして知られる。

ハワイ州は、提訴した理由について、「大統領令は、イスラム教徒を二級市民扱いにした差別的なもの」であると指摘、宗教や国籍による差別を禁じた憲法に違反と主張。州内の留学生、労働者、旅行者などが影響を受け、経済や教育施設、観光産業に損害を与えるとしている。

日系人の強制収容を想起させる?

朝日新聞によると、ハワイ州の訴訟資料ではまた、トランプ氏が2015年12月、イスラム教徒の米国への入国を完全に禁止すべきだとの声明を出したことについて触れたほか、「多くのハワイの人々に、真珠湾攻撃の後の日系人の強制収容を思い起こさせる」と指摘。トランプ氏の新たな大統領令が、移民と深く関わってきた「ハワイ州のアイデンティティーや精神の対極にある」としている。

移民、特に日系人とのつながりが深い同州の歴史的な背景が、今回の提訴を後押しした面もありそうだ。

その多様性ゆえに発展してきた米国が立つ岐路

トランプ氏はこのような大統領令について、自国をテロから守り、安全にするために必要な措置であるとの認識を変えていない。

世界中から移民を受け入れることで発展を遂げてきた米国のアイデンティティーを象徴する有名な言葉に“E Pluribus Unum”(エ・プルリブス・ウヌム)というラテン語がある。英語にすると“Out of Many, One”となり、「多様性の中の統一」「多数から一つへ」などと訳される。

米国の統一は多様性を前提としており、多様性を否定するような統一とは立場を異にするということだ。これは米国のすべての硬貨にも刻印されているほど、同国では大切にされている言葉である。

トランプ政権や大統領令が憲法違反かどうかという法的な問題にとどまらず、米国が今後、移民とどのように向き合っていくのか、めざす国のカタチやアイデンティティーが問われている。日本では移民を迎える議論は高まっていないが、米国にとって「移民」である日本人にとっても目が離せない問題だろう。(ZUU online 編集部)

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