ドイツで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は18日日本時間深夜に閉幕した。今回の共同声明からは、昨年見られた「あらゆる保護主義に抵抗する」という文言は削除。「自国第一」の姿勢を掲げるトランプ政権の姿勢が影響しているとみられる。

文言削除を求める米国

フランス国境にほど近いドイツの保養地、バーデンバーデンで17日から開催された今回のG20。世界貿易の均衡に対して新たな認識を求める米国に対し、自由貿易を推進する立場であるG20がどのような姿勢を打ち出すのかが焦点になっていた。

合意済みである太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱や、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を発表して、メキシコからの輸入品に高い関税を課す方針を示すなど、「自国第一」な「保護主義」的政策を打ち出している米国は、昨年のG20サミットの声明で盛り込まれた「あらゆる形態の保護主義に対抗する」との文言の削除を強く主張。

これに対し自由貿易によって成長を押し上げられてきた中国や、オーストラリアなどはこれに激しく反発、議論は紛糾した。しかしアメリカが譲ることはなく、共同声明からは「反保護主義」という表現は削除されることとなった。

今回が初の国際会議への参加となったスティーブン・ムニューシン米財務長官は会議終了後の記者会見の中で、「過去の声明は、われわれの立場とは必ずしも関係がない。今回の声明はG20が議論したことが正確に反映されている」として「保護貿易」が削除された今回の声明を評価。加えて「今回の声明が自由で公正な貿易を進めていくのは明らかだ」と発言した。

これは17日に、トランプ米大統領がメルケル独首相との共同記者会見の中で行った「米国が何年も受けてきた不公平な扱いに終止符を打つ」といった主張を受けてのものとみられ、米国にとって「公正な貿易」を目指す同政権の意図が見える。

日本は厳しい対応迫られる可能も

ロイターの報道によると、麻生太郎財務相は、討議終了後の記者会見の中で「(各国から)自由貿易を否定する発言はなかった」と発言。「保護主義に対応する」という文言が声明に盛り込まれなかったことについて、「米国に特に配慮したということはない」と説明した。

一方でドイツのショイブレ財務相は記者会見の中で、「反対意見を持っている国に過大な要求はできない」として、アメリカが保護主義をめぐる文言に反対したために合意できなかったことを示唆。フランスのサパン財政相も「今回の話し合いが満足のいくやり方で終わらなかったことを残念に思う」とした声明を出した上で、後の記者会見で「G20の意見不一致ではない。1カ国と他のG20諸国の間で見解が分かれている」と語っている。(ブルームバーグより)

今回に声明は世界経済の成長に向け「保護主義」は認めないというG20の理念に影を落とす形となった。日本は来月にも、アメリカと新たな経済対話を始めることで調整しているが、アメリカが保護主義的な主張を強めている中で、難しい対応を迫られる可能性もありそうだ。(ZUU online 編集部)

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