3月22日、森永乳業 <2264> が一時991円まで上昇し、バブル期以来27年ぶりの高値をつけた。2月16日の安値711円から1カ月あまりで40%近く上昇した計算だ。背景には森永製菓 <2201> との経営統合の噂に加え、牛乳の流通そのものが大きく変わるかも知れないといった期待も指摘される。

今回は、森永乳業の株価上昇の要因について詳しく見ていこう。

企業として「少子高齢化・人口減少」にどう向き合うか

2月24日、日本経済新聞の朝刊で森永乳業と森永製菓が2018年4月をめどに経営統合すると報じられた。両社はモリナガグループを形成する、いわば兄弟会社。森永製菓は森永乳業の株を10.54%保有する筆頭株主でもある。

経営統合に関する報道について両社は「経営統合に限らず様々な可能性について検討していることは事実でありますが、決定した事実はありません」とコメントしている。しかし、株式市場は報道を前向きに受け止め、同日の森永乳業は13%高、森永製菓は3%高と買われた。

少子高齢化・人口減少が進む日本において、食品市場は成熟傾向にある。こうした社会構造の変化とどう向き合うべきか、食品会社は大きな課題に直面している。経営統合により「規模のメリット」を追求しながら高付加価値化を推進、同時にコスト削減に取り組むのも一つの考え方だろう。

事実、乳業で業界1位の明治ホールディングス <2269> は、2009年に明治製菓と明治乳業が合併して持ち株会社となった経緯がある。明治ホールディングスの初値は1800円であったが、2016年7月には1万930円の高値をつけているのだ。合併により、医薬品事業、健康事業などの高付加価値化が上手く進んだことが株価上昇の背景にある。

モリナガグループにも同様の連想が働いているのだろう。そもそもモリナガグループの経営統合が言われるのは、今回が初めてではない。日経新聞は2008年12月にも両社の経営統合を報じたことがあるのだ。当時も森永乳業の株価は翌月の高値まで15%ほど上昇しているが、企業が少子高齢化・人口減少にどう取り組むかによって、将来の企業価値(株価)が大きく左右される時代となりつつある。

「生乳改革」の動きも株価を後押し?

加えて、注目されるのは酪農家の生乳の流通形態について50年ぶりの改革案を検討する動きである。

現状では、酪農家が牧場で採乳した牛乳はすべて農協系の団体に出荷しており、実質的に価格も管理されている。農協系の団体経由で出荷しないと国からの補助金がもらえないからだ。

農協系の団体は、酪農家から集めた生乳を飲用・乳製品用に分類し、乳業メーカーと価格交渉を行っている。つまり、ほとんどの牛乳は農協経由で供給されているのが現状である。

50年ぶりの改正が実現すれば、酪農家は農協系の団体を通さなくても補助金がもらえるようになる。酪農家が直接乳業メーカーと取引できるようになると、コスト削減効果で価格が大きく値下がりする可能性もでてくる。乳製品の流通形態が変わることで、新たなビジネスチャンスも期待できるだろう。

アロエ葉肉入りヨーグルトで米国市場の開拓へ

さらにもう一つ、森永乳業が海外展開に注力する姿勢を見せている点も見逃せない。

3月2日、同社は米国でヨーグルト事業に参入することを発表した。ヨーグルトの分野では初の海外販売となる。

森永乳業によると2015年度の米ヨーグルト市場は約9500億円規模で、年平均で5%増のペースで安定的に成長しているという。ただ、米国のヨーグルト市場は日欧ほど消費量は多くなく、まだまだ開拓の余地は大きいと考えられている。

同社は米国未発売のアロエ葉肉入りヨーグルトを販売する予定だ。より健康志向の高いアロエ葉肉入りヨーグルトで市場を開拓し、2019年には38億円の売上を目指す。

今期は過去最高益となる公算大きい

最後に森永乳業の業績を見てみよう。2月7日発表の2017年3月期第3四半期(4〜12月)の決算では、売上は2%減の4614億円ながら、本業の利益を示す営業利益は58%増の225億円と営業利益ベースで過去最高益を更新した。円高による原材料安の寄与が大きく、すでに通期予想の営業利益205億円を上回っている。このため、通期でも上方修正される公算が大きいといえそうだ。

経営統合、生乳の規制緩和、海外展開……今後も森永乳業の動向を注意深く見守りたい。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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